26 / 29
26 悲願成就
しおりを挟む
ジュースを飲み終わった後、オレは至福の時間を味わっていた。
「みんな、よくがんばったな。この短時間で見違えるほど上手くなったよ」
そんなことを言いながら、よしよしと子どもたちの頭を撫でることに成功したのだ。
「まあな!」
「えっへん」
「当然ですわ」
撫でられた子どもたちも満更でもなさそうな顔をしている。まさにWin-Winの関係である。
その時、視界の半分が銀髪に占領された。フアナがオレに向けて頭を突き出したのだ。
「フアナ?」
「フアナもがんばった……」
意図がわからず尋ねると、フアナがいじけたように言う。
ひょっとして、撫でていいんだろうか?
オレがフアナの頭を撫でる? そんな畏れ多いことを本当にしちゃっていいのか!?
「いいのか?」
「いい」
本人が言うならいいよね……。
「ゴクリ……ッ!」
オレは生唾を飲み込むと、バクバクの心臓を抑えて、震えそうになる腕を必死に制御してフアナの頭を撫でた。
「ふぁ……」
すごい。なんて良い触り心地なんだろう。まるでシルクのような柔らかい触り心地だ。さっきまで運動していたからか、ほんのり温かく、それが冬の日のお布団を連想させた。
もう離したくはないほどだ。
「ん……」
そっと耳に触れると、フアナの吐息が聞こえた。耳は意外にも柔らかく、ふわふわの毛で覆われている。いつまでも触っていたい……。
「ん、ふ……ぁ……」
フアナが嫌がらないので、耳をふにふに弄り倒す。フアナは耳の内側を触られるのが弱いのか、ピクピクと肩を震わせていた。
だが、どんなことにも終わりがくる。この至福の時間にも終わりがあった。
「お、おしまい……」
「ぁ……」
フアナの耳が手をすり抜けて離れていく。もっとモフモフしたかった。
◇
休憩も終わり、子どもたちがまた剣の稽古を始める。
「ばるたざーるは上手い」
「ん?」
子どもたちが剣の稽古を始めるのを見ながら休んでいると、隣に座ったフアナが不意に呟いた。
「ばるたざーるは子どもたちと遊ぶのが上手い」
「そうかな?」
「フアナにはできない」
「オレは、フアナの方こそ子どもたちの扱いが上手いと感じたよ」
「うそ」
「嘘じゃないよ。あんな風に指導して、上手く子どもたちのやる気を引き出していた。オレにはできないことだ」
「そう?」
「そうだよ」
「お嬢! バルタザールも! 一緒にやろうぜ!」
その時、子どもたちがオレたちの名を呼んだ。どうやらまだまだ遊びたいらしい。
「フアナはそのままでいいよ。無理に変わらなくていい」
「ん」
「今行くぞー!」
オレは立ち上がると、木陰から出て広場へと歩く。もちろん、手には木の枝を持ってだ。
しかし、木の枝は細いとはいえ折れない程度には太さがある。子どもたちは気にしていないが、当たるとそれなりに痛い。
「竹刀袋でも作ってやったら喜ぶかもな」
オレは自分の心の中のやることリストにメモを残しながら、子どもたちの合流するのだった。
「次は負けねえぞ!」
「望むところだ!」
◇
「ん~……」
「おーよしよし! フアナは早起きできてえらいね!」
「ん」
あの日から、オレはフアナを毎日欠かさずナデナデしていた。
一度許されたからね。ジャンキーに一度許すと際限がなくなるのだ。そのいい例だね。
まだ撫でる時ちょっと緊張するけど、頭を撫でるとフアナも気持ちよさそうだ。とくに耳が気持ちいいみたいだね。オレもモフモフできて至福の一時である。
「フアナ、ここに座って」
「ん」
家の居間で、フアナを自分のあぐらの上に座らせると、頭を撫でながらモフモフする。
ああぁ! モフニウムが補充されてくんじゃー!
フアナの尻尾が、機嫌よさそうに立ってうねうね動いていた。
尻尾も触りたい……!
だが、オレは知っている。獣人族にとって尻尾を触ることの意味を。
だから、どんなに魅力的に見えても、オレは事前に爆弾を回避できるのだ。
教えてくれた兎のおじさんにかんしゃだな。
そう言えば、兎のおじさんにお願いした米や小麦の生産はどうなっただろう?
まだそんなに日は経ってないから進展は無さそうかな?
たしか、実験的に育てて、上手くいったら会議に出して正式に作付けするとか言ってたけど、そうなるとやっぱ一年とか、二年とかかってくるよな?
小麦は将来的には輸入ということもできるだろうが、米は難しいだろう。やっぱり、米は節約して食べよう。
とはいえ、オレの作れる料理というのは、和食や洋食に偏っている。トウモロコシや芋を主食とした料理をオレは知識でしか知らない。
だからついつい米や小麦を使ってしまうのだ。
これからは、このウリンソンの食生活を研究しながら、自分のレシピの中に組み込んでいくことにしよう。
ウリンソンの料理を勉強して、いつかウリンソンの食材だけを使ったオリジナル料理とかにも挑戦してみたい。
相変わらず、やることが山積みだな。
そのことになんだかうれしくなる。
でもまぁ、今は――――。
「うりうりうりうり」
「んー」
オレはフアナを全力でモフモフするのだった。
「みんな、よくがんばったな。この短時間で見違えるほど上手くなったよ」
そんなことを言いながら、よしよしと子どもたちの頭を撫でることに成功したのだ。
「まあな!」
「えっへん」
「当然ですわ」
撫でられた子どもたちも満更でもなさそうな顔をしている。まさにWin-Winの関係である。
その時、視界の半分が銀髪に占領された。フアナがオレに向けて頭を突き出したのだ。
「フアナ?」
「フアナもがんばった……」
意図がわからず尋ねると、フアナがいじけたように言う。
ひょっとして、撫でていいんだろうか?
オレがフアナの頭を撫でる? そんな畏れ多いことを本当にしちゃっていいのか!?
「いいのか?」
「いい」
本人が言うならいいよね……。
「ゴクリ……ッ!」
オレは生唾を飲み込むと、バクバクの心臓を抑えて、震えそうになる腕を必死に制御してフアナの頭を撫でた。
「ふぁ……」
すごい。なんて良い触り心地なんだろう。まるでシルクのような柔らかい触り心地だ。さっきまで運動していたからか、ほんのり温かく、それが冬の日のお布団を連想させた。
もう離したくはないほどだ。
「ん……」
そっと耳に触れると、フアナの吐息が聞こえた。耳は意外にも柔らかく、ふわふわの毛で覆われている。いつまでも触っていたい……。
「ん、ふ……ぁ……」
フアナが嫌がらないので、耳をふにふに弄り倒す。フアナは耳の内側を触られるのが弱いのか、ピクピクと肩を震わせていた。
だが、どんなことにも終わりがくる。この至福の時間にも終わりがあった。
「お、おしまい……」
「ぁ……」
フアナの耳が手をすり抜けて離れていく。もっとモフモフしたかった。
◇
休憩も終わり、子どもたちがまた剣の稽古を始める。
「ばるたざーるは上手い」
「ん?」
子どもたちが剣の稽古を始めるのを見ながら休んでいると、隣に座ったフアナが不意に呟いた。
「ばるたざーるは子どもたちと遊ぶのが上手い」
「そうかな?」
「フアナにはできない」
「オレは、フアナの方こそ子どもたちの扱いが上手いと感じたよ」
「うそ」
「嘘じゃないよ。あんな風に指導して、上手く子どもたちのやる気を引き出していた。オレにはできないことだ」
「そう?」
「そうだよ」
「お嬢! バルタザールも! 一緒にやろうぜ!」
その時、子どもたちがオレたちの名を呼んだ。どうやらまだまだ遊びたいらしい。
「フアナはそのままでいいよ。無理に変わらなくていい」
「ん」
「今行くぞー!」
オレは立ち上がると、木陰から出て広場へと歩く。もちろん、手には木の枝を持ってだ。
しかし、木の枝は細いとはいえ折れない程度には太さがある。子どもたちは気にしていないが、当たるとそれなりに痛い。
「竹刀袋でも作ってやったら喜ぶかもな」
オレは自分の心の中のやることリストにメモを残しながら、子どもたちの合流するのだった。
「次は負けねえぞ!」
「望むところだ!」
◇
「ん~……」
「おーよしよし! フアナは早起きできてえらいね!」
「ん」
あの日から、オレはフアナを毎日欠かさずナデナデしていた。
一度許されたからね。ジャンキーに一度許すと際限がなくなるのだ。そのいい例だね。
まだ撫でる時ちょっと緊張するけど、頭を撫でるとフアナも気持ちよさそうだ。とくに耳が気持ちいいみたいだね。オレもモフモフできて至福の一時である。
「フアナ、ここに座って」
「ん」
家の居間で、フアナを自分のあぐらの上に座らせると、頭を撫でながらモフモフする。
ああぁ! モフニウムが補充されてくんじゃー!
フアナの尻尾が、機嫌よさそうに立ってうねうね動いていた。
尻尾も触りたい……!
だが、オレは知っている。獣人族にとって尻尾を触ることの意味を。
だから、どんなに魅力的に見えても、オレは事前に爆弾を回避できるのだ。
教えてくれた兎のおじさんにかんしゃだな。
そう言えば、兎のおじさんにお願いした米や小麦の生産はどうなっただろう?
まだそんなに日は経ってないから進展は無さそうかな?
たしか、実験的に育てて、上手くいったら会議に出して正式に作付けするとか言ってたけど、そうなるとやっぱ一年とか、二年とかかってくるよな?
小麦は将来的には輸入ということもできるだろうが、米は難しいだろう。やっぱり、米は節約して食べよう。
とはいえ、オレの作れる料理というのは、和食や洋食に偏っている。トウモロコシや芋を主食とした料理をオレは知識でしか知らない。
だからついつい米や小麦を使ってしまうのだ。
これからは、このウリンソンの食生活を研究しながら、自分のレシピの中に組み込んでいくことにしよう。
ウリンソンの料理を勉強して、いつかウリンソンの食材だけを使ったオリジナル料理とかにも挑戦してみたい。
相変わらず、やることが山積みだな。
そのことになんだかうれしくなる。
でもまぁ、今は――――。
「うりうりうりうり」
「んー」
オレはフアナを全力でモフモフするのだった。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
追放もの悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。ざまぁフラグは勘違いした主人公補正で無自覚回避します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ざまぁフラグなんて知りません!勘違いした勇者の無双冒険譚
ごく一般的なサラリーマンである主人公は、ある日、異世界に転生してしまう。
しかし、転生したのは「パーティー追放もの」の小説の世界。
なんと、追放して【ざまぁされる予定】の、【悪役勇者】に転生してしまったのだった!
このままだと、ざまぁされてしまうが――とはならず。
なんと主人公は、最近のWeb小説をあまり読んでおらず……。
自分のことを、「勇者なんだから、当然主人公だろ?」と、勝手に主人公だと勘違いしてしまったのだった!
本来の主人公である【荷物持ち】を追放してしまう勇者。
しかし、自分のことを主人公だと信じて疑わない彼は、無自覚に、主人公ムーブで【ざまぁフラグを回避】していくのであった。
本来の主人公が出会うはずだったヒロインと、先に出会ってしまい……。
本来は主人公が覚醒するはずだった【真の勇者の力】にも目覚めてしまい……。
思い込みの力で、主人公補正を自分のものにしていく勇者!
ざまぁフラグなんて知りません!
これは、自分のことを主人公だと信じて疑わない、勘違いした勇者の無双冒険譚。
・本来の主人公は荷物持ち
・主人公は追放する側の勇者に転生
・ざまぁフラグを無自覚回避して無双するお話です
・パーティー追放ものの逆側の話
※カクヨム、ハーメルンにて掲載
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる