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017 アラスティアの言葉
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ある日の放課後。
私はアラスティアとお茶をしていた。アラスティアとは最近一緒に行動することが多い。アラスティアと一緒に居ると、いじめを受けないのだ。私はアラスティアをいじめの防波堤として活用させてもらっている。完全に下心有りの付き合いだけど、アラスティアも下心が有って私と付き合ってるし、おあいこだよね。友達と呼べるような関係ではないけど、結構仲は良くなってきた気がする。
「それで、シュヴァルツ殿下とはどこまで進んだのですか?」
「わたくしとシュヴァルツ殿下は、そういった関係ではありませんわ」
話題はシュヴァルツについてだ。ヴァイス派閥の彼女は、シュヴァルツの醜聞が欲しいのだ。婚約者のいるシュヴァルツが、私みたいな女と密会していたというのは、十分醜聞に成り得る。まずは私の証言が欲しいのだろう。
「隠さなくてよろしいのに。わたくしは二人の仲を応援していますのよ」
そう笑顔で言うアラスティア。たぶん彼女の言っていることは本当だろう。彼女は、本気で私とシュヴァルツの仲を応援してくれている。
それにしても、グイグイ押してくるなー。アラスティアは、ゲームではシュヴァルツルートにおける友人キャラだった。ヒロインちゃんの背中を押して、シュヴァルツとの恋愛を応援する良いキャラだと思ったのになー…。現実では、敵派閥であるシュヴァルツの醜聞欲しさに私をけしかける悪い女だ。この部分が無ければ、あとは性格が良い子なのに……きっと良いお友達になれただろう。残念だ。
「アラスティア様の言うようにはなりませんわ。最近はお会いしてもいませんもの」
そう。私はあの日以来シュヴァルツに会っていない。シュヴァルツとヴァイスの和解イベントまで進めたので、もう会う必要は無いのだ。
「そう…それで…」
アラスティアが、頬に手を当てて、困ったような表情で私を見てくる。
「どうかなさいましたか?」
「最近のマリアベル様は、どこか元気がないと感じておりましたの。時折寂しそうに遠くを見ていらっしゃることもありますわ」
私はドキッとした。私ってそんなに顔に出やすいのかしら。たしかにシュヴァルツやゲオグラムと会えないのは寂しい。いじめに遭ってから、私とまともに話してくれるのは、シュヴァルツ、ゲオグラム、アラスティアの3人だけになってしまった。
私はシュヴァルツやゲオグラムに依存していたのかもしれない。彼らと会うのは楽しかった。いじめでささくれだった私の心を癒してくれた。気遣ってくれた。彼らは良い友人だ。友人と会えないのは寂しい。
「彼らは…良い友人でしたわ。私なんかがシュヴァルツ殿下の友人を名乗るなんて烏滸がましいでしょうけど……」
「自分の心に嘘を吐くのはおよしになって。自分の心に正直になるのです」
アラスティアの言葉が不意に胸に刺さる。
自分の心に正直に……。たしかに、私の心はシュヴァルツに惹かれている。いつも皮肉気な笑みを浮かべているし、冷淡だし、オレ様だし、とっつきにくい奴なのかと思ったら、意外と優しいし、子どもっぽいところもあって可愛らしい。できればずっと傍に居たい。
でも、それはダメなのだ。私と居るとシュヴァルツの醜聞になってしまう。シュヴァルツの評判が下がってしまう。私はシュヴァルツの重荷にはなりたくない。だからもうシュヴァルツとは会わない。
たしか、ゲームでのヒロインちゃんも私と同じようなことで悩んでたっけ。ヒロインちゃんはアラスティアに背中を押されてシュヴァルツに会いに行く。そして二人は結ばれるわけだけど……。私はヒロインちゃんみたいな健気な良い子じゃない。きっとシュヴァルツに愛してもらえない。拒絶されるのが怖い。だからシュヴァルツには会いに行かない。
更に私の背中を押そうとアレコレ言ってくるアラスティアと別れて、私は一人で寮へと帰る。あのままアラスティアと話していたら、その気になってしまいそうだったので、逃げ出してきたのだ。私とシュヴァルツが結ばれるというのは、現実的じゃない。シュヴァルツにはシスティーナという婚約者がいるし、頭の良いシュヴァルツが婚約破棄なんてバカな真似するとは思えない。
もし仮に、万が一、シュヴァルツが私のことを好きになってくれたとしても、私との婚姻は現実的じゃない。王族や貴族の婚姻って政治なのだ。シュヴァルツが私と結ばれることで得られるメリットなんて無い。だから、私とシュヴァルツの婚姻なんて不可能なのだ。
「はぁ…」
こんなことは最初から分かっていたはずだ。なんでシュヴァルツなんて好きになっちゃったんだろう…。私のバカ。
ドンッ!
「え…?」
突然背中に衝撃を受けて、体が前につんのめる。反射で手が前に出るけど、目の前には階段。嘘、これって!?
私の体は重力に引かれて階段へと落ち、そのまま階段を転げ落ちた。
私はアラスティアとお茶をしていた。アラスティアとは最近一緒に行動することが多い。アラスティアと一緒に居ると、いじめを受けないのだ。私はアラスティアをいじめの防波堤として活用させてもらっている。完全に下心有りの付き合いだけど、アラスティアも下心が有って私と付き合ってるし、おあいこだよね。友達と呼べるような関係ではないけど、結構仲は良くなってきた気がする。
「それで、シュヴァルツ殿下とはどこまで進んだのですか?」
「わたくしとシュヴァルツ殿下は、そういった関係ではありませんわ」
話題はシュヴァルツについてだ。ヴァイス派閥の彼女は、シュヴァルツの醜聞が欲しいのだ。婚約者のいるシュヴァルツが、私みたいな女と密会していたというのは、十分醜聞に成り得る。まずは私の証言が欲しいのだろう。
「隠さなくてよろしいのに。わたくしは二人の仲を応援していますのよ」
そう笑顔で言うアラスティア。たぶん彼女の言っていることは本当だろう。彼女は、本気で私とシュヴァルツの仲を応援してくれている。
それにしても、グイグイ押してくるなー。アラスティアは、ゲームではシュヴァルツルートにおける友人キャラだった。ヒロインちゃんの背中を押して、シュヴァルツとの恋愛を応援する良いキャラだと思ったのになー…。現実では、敵派閥であるシュヴァルツの醜聞欲しさに私をけしかける悪い女だ。この部分が無ければ、あとは性格が良い子なのに……きっと良いお友達になれただろう。残念だ。
「アラスティア様の言うようにはなりませんわ。最近はお会いしてもいませんもの」
そう。私はあの日以来シュヴァルツに会っていない。シュヴァルツとヴァイスの和解イベントまで進めたので、もう会う必要は無いのだ。
「そう…それで…」
アラスティアが、頬に手を当てて、困ったような表情で私を見てくる。
「どうかなさいましたか?」
「最近のマリアベル様は、どこか元気がないと感じておりましたの。時折寂しそうに遠くを見ていらっしゃることもありますわ」
私はドキッとした。私ってそんなに顔に出やすいのかしら。たしかにシュヴァルツやゲオグラムと会えないのは寂しい。いじめに遭ってから、私とまともに話してくれるのは、シュヴァルツ、ゲオグラム、アラスティアの3人だけになってしまった。
私はシュヴァルツやゲオグラムに依存していたのかもしれない。彼らと会うのは楽しかった。いじめでささくれだった私の心を癒してくれた。気遣ってくれた。彼らは良い友人だ。友人と会えないのは寂しい。
「彼らは…良い友人でしたわ。私なんかがシュヴァルツ殿下の友人を名乗るなんて烏滸がましいでしょうけど……」
「自分の心に嘘を吐くのはおよしになって。自分の心に正直になるのです」
アラスティアの言葉が不意に胸に刺さる。
自分の心に正直に……。たしかに、私の心はシュヴァルツに惹かれている。いつも皮肉気な笑みを浮かべているし、冷淡だし、オレ様だし、とっつきにくい奴なのかと思ったら、意外と優しいし、子どもっぽいところもあって可愛らしい。できればずっと傍に居たい。
でも、それはダメなのだ。私と居るとシュヴァルツの醜聞になってしまう。シュヴァルツの評判が下がってしまう。私はシュヴァルツの重荷にはなりたくない。だからもうシュヴァルツとは会わない。
たしか、ゲームでのヒロインちゃんも私と同じようなことで悩んでたっけ。ヒロインちゃんはアラスティアに背中を押されてシュヴァルツに会いに行く。そして二人は結ばれるわけだけど……。私はヒロインちゃんみたいな健気な良い子じゃない。きっとシュヴァルツに愛してもらえない。拒絶されるのが怖い。だからシュヴァルツには会いに行かない。
更に私の背中を押そうとアレコレ言ってくるアラスティアと別れて、私は一人で寮へと帰る。あのままアラスティアと話していたら、その気になってしまいそうだったので、逃げ出してきたのだ。私とシュヴァルツが結ばれるというのは、現実的じゃない。シュヴァルツにはシスティーナという婚約者がいるし、頭の良いシュヴァルツが婚約破棄なんてバカな真似するとは思えない。
もし仮に、万が一、シュヴァルツが私のことを好きになってくれたとしても、私との婚姻は現実的じゃない。王族や貴族の婚姻って政治なのだ。シュヴァルツが私と結ばれることで得られるメリットなんて無い。だから、私とシュヴァルツの婚姻なんて不可能なのだ。
「はぁ…」
こんなことは最初から分かっていたはずだ。なんでシュヴァルツなんて好きになっちゃったんだろう…。私のバカ。
ドンッ!
「え…?」
突然背中に衝撃を受けて、体が前につんのめる。反射で手が前に出るけど、目の前には階段。嘘、これって!?
私の体は重力に引かれて階段へと落ち、そのまま階段を転げ落ちた。
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