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018 期待と不安
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私はハッと目を覚ます。こんなに意識がはっきりとした目覚めは初めてかもしれない。見開いた目に飛び込んできたのは白い天井だった。知らない天井だ。私の部屋じゃない。此処は何処?
「痛たたたたた…」
体を起こそうとすると、全身が痛かった。特に腕や肩、腰が痛い。私は起きるのを諦めて力を抜いて倒れ込む。目を動かして辺りを見渡すと、どうやら私は、白いカーテンに区切られた狭い空間で、ベッドの上で寝ているらしい。まるで病院みたいだ。
「気が付きましたか?」
私の声に気が付いたのだろう。カーテンが開き、女の人が入ってくる。制服を着ていないし、おばさまと言っていい年齢の白い服を着た女の人だ。生徒ではない。見たことない人だ。誰だろう?
「自分のことは分かりますか?この指、何本に見えますか?」
女の人が心配そうに尋ねてくる。
「わたくしは、マリアベル・レ・キルヒレシアです。指は二本に見えます。あの、此処は何処でしょうか?」
「此処は保健室です。貴女は階段から落ちたのですよ。思い出せますか?」
階段から……。そうだ、私、アラスティアと別れて、寮に帰ろうとして、階段で……ッ!グルグル回る視界、全身を叩かれ続けるような衝撃、誰かに押された背中。思い出した、私、誰かに落とされたんだ!
思い出した衝撃の内容に、私は思わず上体を起こす。
「痛い……」
でも、まさか、本当に?本当に誰かに落とされたの?そんな危ないこと普通する?普通なら有り得ない。でも……。でも、私の背には、まだ押された時の手の感覚が残っていた。私、本当に誰かに突き落とされたんだ……。
「急に起き上がってはいけません!頭も打ってるかもしれません。とにかく、横になって安静に……」
「私、落とされたんです!階段の上で、背中を押されて!」
「えっ!?」
突然の話に、女性が驚く。いきなりこんな話、驚くのも無理はないと思う。でも、私は助けを求めるように女性に話した。元々いじめを受けていた事、階段の上で背中を押された事、今回の事もいじめの一環の可能性が高い事。だって怖かった。階段の上から落とされるなんて、打ち所が悪ければ、私は死んでいた。明らかにいじめの範囲を超えている。こんなことが続けば、私はいつか本当に死んでしまう。
自分でもショックだったのだろう。私の頭は混乱して、口から出る言葉は、文法も時系列もめちゃくちゃで、上手にしゃべれない。それでも、私は女性に縋り付くようにしゃべった。だって、もう他に誰に助けを求めればいいのか分からなかった。
女性は、親身に私の言葉に耳を傾けてくれた。時々相槌を打ち、悲しげな表情を浮かべている。
「良く話してくれましたね。辛かったでしょう…」
女性が私を優しく抱きしめる。柔らかくて、温かい。ヤバイ。ヤバイと思ったけど、止められなかった。不意に人の優しさに触れて、私の心は堰を切った様に溢れだした。何故私ばかり辛い思いをしなければならないのか、何故いじめに遭わなくてはいけないのか、何故人に避けられねばいけないのか、何故……。
気が付いたら泣いていた。泣きながら、今まで押さえつけていた思いを吐き出した。
本当は自分でも分かってる。私がシュヴァルツに近づいたのがいけないのだ。この国の常識を守らない私が悪いのだ。私はいじめられて当然の、皆に避けられて当然の事をしてしまったのだ。
でも、それには理由があって……。なにもこんな目に遭わなくてもいいじゃない…!
その後、私は女性に付き添われて、寮の自室まで戻って来た。女性は、いじめや今回の件について、貴族院の方でも調べることを約束してくれた。女性はどうやら保健の先生だったらしい。ただ、調べるのは時間が掛かるとも言われた。今は時期が悪いらしい。四日後に迫った建国記念日の式典の準備で今は大忙しのようだ。いじめの調査に割ける人が居ないらしい。
式典か……。式典とは言うけれど、建国記念日を盛大に祝うパーティだ。ゲームでも登場し、物語のラストを締めくくる重要なイベントになっている。ん……?
「あ!」
たしかヒロインちゃんは、パーティの数日前に、何者かに階段から落とされるイベントがあったはずだ!ってことは、これってイベントだったの!?
ということは、私を突き落とした犯人は……。でも、あり得るの…?
でも、私はシュヴァルツとヴァイスの和解以降シュヴァルツとゲオグラムに会っていない。普通なら誰とも結ばれないノーマルエンドになるはずだ。ノーマルエンドでは、階段から落とされるイベントは発生しない。何かがおかしい。
もしかして…。ううん、でも……。
私の心は期待と不安の間で揺れ動く。もし期待が叶ってしまったら……この国を大きな衝撃が襲うことになってしまう。でも、期待する心はもう抑えられそうにない。あぁ、私はいったいどうしたら良いの!?
「痛たたたたた…」
体を起こそうとすると、全身が痛かった。特に腕や肩、腰が痛い。私は起きるのを諦めて力を抜いて倒れ込む。目を動かして辺りを見渡すと、どうやら私は、白いカーテンに区切られた狭い空間で、ベッドの上で寝ているらしい。まるで病院みたいだ。
「気が付きましたか?」
私の声に気が付いたのだろう。カーテンが開き、女の人が入ってくる。制服を着ていないし、おばさまと言っていい年齢の白い服を着た女の人だ。生徒ではない。見たことない人だ。誰だろう?
「自分のことは分かりますか?この指、何本に見えますか?」
女の人が心配そうに尋ねてくる。
「わたくしは、マリアベル・レ・キルヒレシアです。指は二本に見えます。あの、此処は何処でしょうか?」
「此処は保健室です。貴女は階段から落ちたのですよ。思い出せますか?」
階段から……。そうだ、私、アラスティアと別れて、寮に帰ろうとして、階段で……ッ!グルグル回る視界、全身を叩かれ続けるような衝撃、誰かに押された背中。思い出した、私、誰かに落とされたんだ!
思い出した衝撃の内容に、私は思わず上体を起こす。
「痛い……」
でも、まさか、本当に?本当に誰かに落とされたの?そんな危ないこと普通する?普通なら有り得ない。でも……。でも、私の背には、まだ押された時の手の感覚が残っていた。私、本当に誰かに突き落とされたんだ……。
「急に起き上がってはいけません!頭も打ってるかもしれません。とにかく、横になって安静に……」
「私、落とされたんです!階段の上で、背中を押されて!」
「えっ!?」
突然の話に、女性が驚く。いきなりこんな話、驚くのも無理はないと思う。でも、私は助けを求めるように女性に話した。元々いじめを受けていた事、階段の上で背中を押された事、今回の事もいじめの一環の可能性が高い事。だって怖かった。階段の上から落とされるなんて、打ち所が悪ければ、私は死んでいた。明らかにいじめの範囲を超えている。こんなことが続けば、私はいつか本当に死んでしまう。
自分でもショックだったのだろう。私の頭は混乱して、口から出る言葉は、文法も時系列もめちゃくちゃで、上手にしゃべれない。それでも、私は女性に縋り付くようにしゃべった。だって、もう他に誰に助けを求めればいいのか分からなかった。
女性は、親身に私の言葉に耳を傾けてくれた。時々相槌を打ち、悲しげな表情を浮かべている。
「良く話してくれましたね。辛かったでしょう…」
女性が私を優しく抱きしめる。柔らかくて、温かい。ヤバイ。ヤバイと思ったけど、止められなかった。不意に人の優しさに触れて、私の心は堰を切った様に溢れだした。何故私ばかり辛い思いをしなければならないのか、何故いじめに遭わなくてはいけないのか、何故人に避けられねばいけないのか、何故……。
気が付いたら泣いていた。泣きながら、今まで押さえつけていた思いを吐き出した。
本当は自分でも分かってる。私がシュヴァルツに近づいたのがいけないのだ。この国の常識を守らない私が悪いのだ。私はいじめられて当然の、皆に避けられて当然の事をしてしまったのだ。
でも、それには理由があって……。なにもこんな目に遭わなくてもいいじゃない…!
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式典か……。式典とは言うけれど、建国記念日を盛大に祝うパーティだ。ゲームでも登場し、物語のラストを締めくくる重要なイベントになっている。ん……?
「あ!」
たしかヒロインちゃんは、パーティの数日前に、何者かに階段から落とされるイベントがあったはずだ!ってことは、これってイベントだったの!?
ということは、私を突き落とした犯人は……。でも、あり得るの…?
でも、私はシュヴァルツとヴァイスの和解以降シュヴァルツとゲオグラムに会っていない。普通なら誰とも結ばれないノーマルエンドになるはずだ。ノーマルエンドでは、階段から落とされるイベントは発生しない。何かがおかしい。
もしかして…。ううん、でも……。
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