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021 パーティー③
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システィーナが消えた後、会場は騒然となった。当たり前だ、目の前でこれほどの政変が起こったのだ。王国内の情勢が一気に変わるほどの大事件だ。シュヴァルツは、それほどのことをしてしまったのだ。
シュヴァルツの暴挙とも言える行動によって、国の未来まで決まってしまったと言ってもいい。シュヴァルツは自らの手で自身の最大の支援者を切り捨て、次期国王の座まで投げ捨ててしまった。そして、それはもう取り返しのつかないことなのだ。万座で婚約破棄なんて恥をかかされたシスティーナが、ロベルタ二ア侯爵家が、再びシュヴァルツの手を取ることはもうない。
これからは、ヴァイスが次期国王に内定し、ヴァイス派閥が主流になるはずだ。ヴァイス派閥の掲げる海軍の増強が主流となる。それが正解なのかは分からない。本当にそれで国を守れるのかなんて分からない。でも、もう取り返しのつかないところまできてしまった。
生徒たちの声を聞いていると、声の明るいグループと暗いグループがある。きっと前者がヴァイス派閥で、後者がシュヴァルツ派閥の生徒なのだろう。
「皆、静まれ!」
シュヴァルツの声が再び響く。シュヴァルツの声ってよく通るのよね。生徒達がおしゃべりをピタリと止めてこちらを向く。流石、よく教育された貴族の子ども達、お行儀が良い。
「皆にはもう一つ知らせることがある」
生徒達は顔を見合わせたりしている。その顔には不安そうな表情が浮かんでいた。これだけのことをしたシュヴァルツが、まだ話があると言う。今度は何が起こるのかと、戦々恐々な思いなのだろう。
「オレは!」
シュヴァルツが振り返り、私を強引に抱き寄せた。腰に手を回され、ガッツリとシュヴァルツと密着してしまう。ちょ、近い近い!
「此処に居るマリアベル・レ・キルヒレシアとの婚約を宣言する!」
シンとした空気が会場を包む。あーあ、やっぱり…。ゲームだと歓声が起きるんだけど、起きるはずないわよね。私とシュヴァルツの婚約は無理がある。誰にもメリットの無い、誰も喜ばない婚約だ。歓声なんて起きるわけが無い。まぁ、現実はこんなもんよね…。
「殿下、お戯れが過ぎます……」
シュヴァルツを拒絶しようとしたら、自分でも信じられないくらい弱弱しい声が出た。シュヴァルツを突き放そうとした腕にも全然力が入っていない。シュヴァルツの腕の中から抜け出せない。…抜け出したくない。本当は私だってシュヴァルツと結ばれたい。でもそれは叶わないのだ。見てよ、誰も祝福してくれない。私達が結ばれることなんて誰も望んでいない…!
「任せておけ」
シュヴァルツはそう言って、更に私を抱きしめるけど……無理なものは無理なのよ……。
パチパチパチパチ……
突然拍手が聞こえてきて、私は驚いて振り返った。ヴァイスが笑顔を浮かべて拍手をしてくれている。ヴァイス…居たんだ。忘れてた。一度も話したことないけど、ゲームの推しキャラにこんなところを見られるのは少し恥ずかしい。でも、ヴァイスは祝福してくれるみたい。そのことがとても嬉しい。
パチパチパチパチ……
前の方からも拍手が聞こえてきた。アラスティア…!
疎らだった拍手がだんだんと大きくなる。拍手をしてくれる人が増えていく。拍手の波が広がっていく。一つ一つは小さな拍手が、重なり、寄り集まり、大きな音になり、やがて会場全体は溢れんばかりの拍手に埋め尽くされた。そんな、まさか、本当に?皆、祝福してくれるの?未だ信じ切れない私の耳に歓声まで聞こえてきた。
無論、拍手してない人も大勢いる。拍手してくれる人も、ヴァイスが拍手しているから、仕方なく拍手しているだけかもしれない。それでも、祝福を受けているようで、私とシュヴァルツが結ばれることを望んでくれる人がいるようで、私はとても嬉しかった。
無理だと諦めていた。誰も祝福なんてしてくれないと、誰も認めてなんてくれないと思い込んでいた。でも、こんなにたくさんの人が、拍手してくれる、歓声を上げてくれる。良いんだ。私、シュヴァルツと結ばれても良いんだ。もう、心を押し殺さなくて良いんだ。皆の拍手が、歓声が、私の背中を押してくれる。
私はおずおずと手を伸ばし、シュヴァルツに抱きついた。シュヴァルツの体は、細く見えるのに、触ると硬くてしっかりしていた。女の子とは違う男の体だ。ドキドキする。
「な?任せておけと言っただろ?」
シュヴァルツが得意気に言い放つ。その顔は悪戯が成功した悪戯っ子の様な顔をしていた。かっこいい…それでいて、かわいい。そんな顔卑怯よ!シュヴァルツへの愛おしさが溢れてくる。私は抗議の意味も込めて、更に強くシュヴァルツに抱きついた。
「マリアベル…」
シュヴァルツが私の名を呼ぶ。その声に蕩けてしまいそうだ。シュヴァルツを見上げると、シュヴァルツが降ってきた。これって…!
私はシュヴァルツに逆らわずに目を閉じた。
シュヴァルツの暴挙とも言える行動によって、国の未来まで決まってしまったと言ってもいい。シュヴァルツは自らの手で自身の最大の支援者を切り捨て、次期国王の座まで投げ捨ててしまった。そして、それはもう取り返しのつかないことなのだ。万座で婚約破棄なんて恥をかかされたシスティーナが、ロベルタ二ア侯爵家が、再びシュヴァルツの手を取ることはもうない。
これからは、ヴァイスが次期国王に内定し、ヴァイス派閥が主流になるはずだ。ヴァイス派閥の掲げる海軍の増強が主流となる。それが正解なのかは分からない。本当にそれで国を守れるのかなんて分からない。でも、もう取り返しのつかないところまできてしまった。
生徒たちの声を聞いていると、声の明るいグループと暗いグループがある。きっと前者がヴァイス派閥で、後者がシュヴァルツ派閥の生徒なのだろう。
「皆、静まれ!」
シュヴァルツの声が再び響く。シュヴァルツの声ってよく通るのよね。生徒達がおしゃべりをピタリと止めてこちらを向く。流石、よく教育された貴族の子ども達、お行儀が良い。
「皆にはもう一つ知らせることがある」
生徒達は顔を見合わせたりしている。その顔には不安そうな表情が浮かんでいた。これだけのことをしたシュヴァルツが、まだ話があると言う。今度は何が起こるのかと、戦々恐々な思いなのだろう。
「オレは!」
シュヴァルツが振り返り、私を強引に抱き寄せた。腰に手を回され、ガッツリとシュヴァルツと密着してしまう。ちょ、近い近い!
「此処に居るマリアベル・レ・キルヒレシアとの婚約を宣言する!」
シンとした空気が会場を包む。あーあ、やっぱり…。ゲームだと歓声が起きるんだけど、起きるはずないわよね。私とシュヴァルツの婚約は無理がある。誰にもメリットの無い、誰も喜ばない婚約だ。歓声なんて起きるわけが無い。まぁ、現実はこんなもんよね…。
「殿下、お戯れが過ぎます……」
シュヴァルツを拒絶しようとしたら、自分でも信じられないくらい弱弱しい声が出た。シュヴァルツを突き放そうとした腕にも全然力が入っていない。シュヴァルツの腕の中から抜け出せない。…抜け出したくない。本当は私だってシュヴァルツと結ばれたい。でもそれは叶わないのだ。見てよ、誰も祝福してくれない。私達が結ばれることなんて誰も望んでいない…!
「任せておけ」
シュヴァルツはそう言って、更に私を抱きしめるけど……無理なものは無理なのよ……。
パチパチパチパチ……
突然拍手が聞こえてきて、私は驚いて振り返った。ヴァイスが笑顔を浮かべて拍手をしてくれている。ヴァイス…居たんだ。忘れてた。一度も話したことないけど、ゲームの推しキャラにこんなところを見られるのは少し恥ずかしい。でも、ヴァイスは祝福してくれるみたい。そのことがとても嬉しい。
パチパチパチパチ……
前の方からも拍手が聞こえてきた。アラスティア…!
疎らだった拍手がだんだんと大きくなる。拍手をしてくれる人が増えていく。拍手の波が広がっていく。一つ一つは小さな拍手が、重なり、寄り集まり、大きな音になり、やがて会場全体は溢れんばかりの拍手に埋め尽くされた。そんな、まさか、本当に?皆、祝福してくれるの?未だ信じ切れない私の耳に歓声まで聞こえてきた。
無論、拍手してない人も大勢いる。拍手してくれる人も、ヴァイスが拍手しているから、仕方なく拍手しているだけかもしれない。それでも、祝福を受けているようで、私とシュヴァルツが結ばれることを望んでくれる人がいるようで、私はとても嬉しかった。
無理だと諦めていた。誰も祝福なんてしてくれないと、誰も認めてなんてくれないと思い込んでいた。でも、こんなにたくさんの人が、拍手してくれる、歓声を上げてくれる。良いんだ。私、シュヴァルツと結ばれても良いんだ。もう、心を押し殺さなくて良いんだ。皆の拍手が、歓声が、私の背中を押してくれる。
私はおずおずと手を伸ばし、シュヴァルツに抱きついた。シュヴァルツの体は、細く見えるのに、触ると硬くてしっかりしていた。女の子とは違う男の体だ。ドキドキする。
「な?任せておけと言っただろ?」
シュヴァルツが得意気に言い放つ。その顔は悪戯が成功した悪戯っ子の様な顔をしていた。かっこいい…それでいて、かわいい。そんな顔卑怯よ!シュヴァルツへの愛おしさが溢れてくる。私は抗議の意味も込めて、更に強くシュヴァルツに抱きついた。
「マリアベル…」
シュヴァルツが私の名を呼ぶ。その声に蕩けてしまいそうだ。シュヴァルツを見上げると、シュヴァルツが降ってきた。これって…!
私はシュヴァルツに逆らわずに目を閉じた。
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