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022 後日談
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あれから数週間。
王国の情勢は一気に変わった。ヴァイスが正式に王太子に決まり、次の王の座を巡る派閥の争いは終結を迎えた。シュヴァルツが起こした暴挙は国政にまで影響を与えたのだ。
私の予想通り、これからはヴァイス派閥が主流になるし、海軍が優先して増強されるらしい。来るアルルトゥーヤ帝国の侵攻に備えるためだ。それが正解なのかはまだ分からないけど、国の意思決定が一本化したことだけは、シュヴァルツの功績として褒めてあげてもいいかもしれない。
そのシュヴァルツだけど、私の心配していた通り、評価は散々なものになってしまった。曰く『堕ちた天才』『政治の分からないバカ王子』『軍才以外無い王子』などなど。臣籍に落とすべきって厳しい意見も出たようだけど、ヴァイスが庇ってくれたらしい。シュヴァルツがまだ王族のままでいられるのはヴァイスのおかげだ。
私の評価も、元々低かったけど、更に低くなった。曰く『天才を堕とした希代の悪女』だ。これまでは貴族院の中での悪評だったけど、今では国中に私の悪評が広まってしまった。悪女って酷くない?元シュヴァルツ派閥の人達からは蛇蝎の如く嫌われてるし、散々だと思う。家に帰った時も、お父様とお母様から怒られるし……。
散々だとは思うけど、あれだけのことをしておいて、罰らしい罰も無く、私とシュヴァルツは普通に生活できている。貴族院にも通えてるし、行動の制限とかも無い。おそらく、まだ成人していない子どもだからと大目に見られているんだと思う。
システィーナについてだけど、彼女は実家で養成中だ。あの後、貴族院の調べで分かったのだけど、シュヴァルツからいじめを止めるように言われ、彼女はいじめを止めたらしい。でも、一部のホッケカイヤ貴族の娘達が暴走して私へのいじめを継続したようだ。シュヴァルツには何度も警告を受け、ホッケカイヤ貴族の娘にいじめを止めるように言っても止まらず。システィーナはシュヴァルツと暴走したホッケカイヤ貴族の間に挟まれて相当苦しんだようだ。追い詰められたシスティーナはあの日、ふらふらと階段の方へと歩く私を見つけて魔が差したらしい。これが階段突き落とし事件の真相である。
システィーナが罪に問われることは無かった。情状酌量の余地があるし、彼女もまだ子どもということで大目に見られたのだと思う。あるいは、私達が犯した罪と相殺ということで政治的な取引があったのかもしれない。そっちの方がありそうだ。
私とシュヴァルツの婚約だけど、結局許可は下りなかった。あれだけの騒動を起こしておいて、自分達だけ願いを叶えるのは認められなかったのだ。システィーナの父親、大貴族ロベルタ二ア侯爵の面子を立てる為にも、頑なに反対されたらしい。とても悔しいし納得いかないけど、たぶんこれが私達に下された罰なのだろう。シュヴァルツは「任せておけ」って言っていたけど、どうにかなるのかしら?私にはシュヴァルツを信じることしかできない。
「ボーッとしない!背筋を伸ばして!顎を少し引く!」
「はい!」
怒られてしまった……。このおばさん鋭い。私は今、王都にあるキルヒレシア辺境伯の館で礼儀作法を学んでいた。ちなみに教師はキルヒレシア辺境伯婦人、ゲオグラムのお母様だ。
私が何故、礼儀作法を学んでいるかと言うと、もし将来シュヴァルツと結ばれた時に困らない為である。下級貴族である男爵家の娘に必要な礼儀作法や教養と、王族の妃になるのに必要な礼儀作法や教養って全く違うのだ。
実は、シュヴァルツがゲオグラムに私の教育を頼んでくれたらしい。シュヴァルツは私と結ばれることを諦めていない。その事実だけでも嬉しくなる。だから頑張って身に付けないと!
「顔を上げて!もっと堂々としなさい!」
「はい!」
堂々とか…。思い出すのはシスティーナの姿だ。システィーナは常に堂々としていた。シュヴァルツに婚約破棄を告げられた時でさえ、取り乱したり、泣き出したりしなかった。去る時も涙を見せず、気丈とした態度だった。今にして思う、すごく立派な態度だった。
私はどうだろう?システィーナのように振る舞えるだろうか?たぶん無理だ。シュヴァルツに別れを告げられたら泣き喚いてしまうかも。でもそれじゃあダメなのだ。
今のままではシュヴァルツに相応しいとは誰も思ってくれない。少しでも礼儀作法や教養を身に付けて、シュヴァルツに相応しくなりたい!
もしかしたら、シュヴァルツと結ばれることが許されず、全てが無駄になるかもしれない。ううん、そうなる可能性の方がずっと高い。
でも!私はシュヴァルツを信じたい!私もシュヴァルツと結ばれる未来を信じたい!少しでもシュヴァルツに相応しくなりたい!
「良いですよ。では、最初からもう一度」
「…はい!」
き、厳しい…。でも、負けないんだから!
王国の情勢は一気に変わった。ヴァイスが正式に王太子に決まり、次の王の座を巡る派閥の争いは終結を迎えた。シュヴァルツが起こした暴挙は国政にまで影響を与えたのだ。
私の予想通り、これからはヴァイス派閥が主流になるし、海軍が優先して増強されるらしい。来るアルルトゥーヤ帝国の侵攻に備えるためだ。それが正解なのかはまだ分からないけど、国の意思決定が一本化したことだけは、シュヴァルツの功績として褒めてあげてもいいかもしれない。
そのシュヴァルツだけど、私の心配していた通り、評価は散々なものになってしまった。曰く『堕ちた天才』『政治の分からないバカ王子』『軍才以外無い王子』などなど。臣籍に落とすべきって厳しい意見も出たようだけど、ヴァイスが庇ってくれたらしい。シュヴァルツがまだ王族のままでいられるのはヴァイスのおかげだ。
私の評価も、元々低かったけど、更に低くなった。曰く『天才を堕とした希代の悪女』だ。これまでは貴族院の中での悪評だったけど、今では国中に私の悪評が広まってしまった。悪女って酷くない?元シュヴァルツ派閥の人達からは蛇蝎の如く嫌われてるし、散々だと思う。家に帰った時も、お父様とお母様から怒られるし……。
散々だとは思うけど、あれだけのことをしておいて、罰らしい罰も無く、私とシュヴァルツは普通に生活できている。貴族院にも通えてるし、行動の制限とかも無い。おそらく、まだ成人していない子どもだからと大目に見られているんだと思う。
システィーナについてだけど、彼女は実家で養成中だ。あの後、貴族院の調べで分かったのだけど、シュヴァルツからいじめを止めるように言われ、彼女はいじめを止めたらしい。でも、一部のホッケカイヤ貴族の娘達が暴走して私へのいじめを継続したようだ。シュヴァルツには何度も警告を受け、ホッケカイヤ貴族の娘にいじめを止めるように言っても止まらず。システィーナはシュヴァルツと暴走したホッケカイヤ貴族の間に挟まれて相当苦しんだようだ。追い詰められたシスティーナはあの日、ふらふらと階段の方へと歩く私を見つけて魔が差したらしい。これが階段突き落とし事件の真相である。
システィーナが罪に問われることは無かった。情状酌量の余地があるし、彼女もまだ子どもということで大目に見られたのだと思う。あるいは、私達が犯した罪と相殺ということで政治的な取引があったのかもしれない。そっちの方がありそうだ。
私とシュヴァルツの婚約だけど、結局許可は下りなかった。あれだけの騒動を起こしておいて、自分達だけ願いを叶えるのは認められなかったのだ。システィーナの父親、大貴族ロベルタ二ア侯爵の面子を立てる為にも、頑なに反対されたらしい。とても悔しいし納得いかないけど、たぶんこれが私達に下された罰なのだろう。シュヴァルツは「任せておけ」って言っていたけど、どうにかなるのかしら?私にはシュヴァルツを信じることしかできない。
「ボーッとしない!背筋を伸ばして!顎を少し引く!」
「はい!」
怒られてしまった……。このおばさん鋭い。私は今、王都にあるキルヒレシア辺境伯の館で礼儀作法を学んでいた。ちなみに教師はキルヒレシア辺境伯婦人、ゲオグラムのお母様だ。
私が何故、礼儀作法を学んでいるかと言うと、もし将来シュヴァルツと結ばれた時に困らない為である。下級貴族である男爵家の娘に必要な礼儀作法や教養と、王族の妃になるのに必要な礼儀作法や教養って全く違うのだ。
実は、シュヴァルツがゲオグラムに私の教育を頼んでくれたらしい。シュヴァルツは私と結ばれることを諦めていない。その事実だけでも嬉しくなる。だから頑張って身に付けないと!
「顔を上げて!もっと堂々としなさい!」
「はい!」
堂々とか…。思い出すのはシスティーナの姿だ。システィーナは常に堂々としていた。シュヴァルツに婚約破棄を告げられた時でさえ、取り乱したり、泣き出したりしなかった。去る時も涙を見せず、気丈とした態度だった。今にして思う、すごく立派な態度だった。
私はどうだろう?システィーナのように振る舞えるだろうか?たぶん無理だ。シュヴァルツに別れを告げられたら泣き喚いてしまうかも。でもそれじゃあダメなのだ。
今のままではシュヴァルツに相応しいとは誰も思ってくれない。少しでも礼儀作法や教養を身に付けて、シュヴァルツに相応しくなりたい!
もしかしたら、シュヴァルツと結ばれることが許されず、全てが無駄になるかもしれない。ううん、そうなる可能性の方がずっと高い。
でも!私はシュヴァルツを信じたい!私もシュヴァルツと結ばれる未来を信じたい!少しでもシュヴァルツに相応しくなりたい!
「良いですよ。では、最初からもう一度」
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