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025 アラスティア
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長かった冬休みも漸く終わり、貴族院での寮生活が始まった。まさか貴族院が始まるのが、こんなに待ち遠しく感じるなんて思わなかった。最近、家に居づらかったからホッとする思いだ。お母様は顔を合わせる度にシュヴァルツとの恋を諦めるように言ってくるし、お父様も何も言わないけど諦めて欲しそうだ。唯一お兄様が私の恋を応援してくれるけど…“今こそ好機、シュヴァルツ殿下を討ち取るのだ!”って…何か勘違いしてそうなのよね…。私は別にシュヴァルツを倒すつもりは無いんですよ、お兄様?
そんな理由もあって貴族院の始まりが待ち遠しかったけど、やっぱり一番の理由はシュヴァルツに早く会いたかったからだ。
私は結局冬休みの間シュヴァルツに会うことができなかった。原因は幾つも思い当たる。私の礼儀作法が王城に行くレベルに達していなかったり、シュヴァルツ自身が忙しかったり…。でも、一番の原因は身分が違いすぎることだと思う。男爵家当主のお父様も王子に面会できる機会なんてほとんどない。当主でも無理なのに、男爵家の一娘でしかない私が、王子であるシュヴァルツと会える機会なんてあるわけがない。
そんな訳で、シュヴァルツと会うのは冬休み前に行われた建国記念日のパーティ以来だ。シュヴァルツと、その、キ、キスをした日から会っていないことになる。
思い出したら急に恥ずかしくなってきた。早くシュヴァルツに会いたいけど、いったいどんな顔をして会えば良いのか分からなくて会いたくない。相反する二つの気持ちに挟まれて胸が苦しくなる。私はいったいどうすれば良いの?!
「急に黙り込んでどうしましたの?」
その言葉にハッと現実に戻される。目の前のテーブルにはティーカップが二つ。向かいの席にはアラスティアが座っている。そうだった。今は食堂で食後のお茶を楽しんでいる真っ最中だった。話し相手が急に黙り込んだら心配を掛けてしまうだろう。アラスティアには悪い事をした。
「なんでもありませんわ。少し考え事を…」
ホホホッと笑ってお茶を濁す。ティータイムだしね。
「どうせシュヴァルツ殿下の事を考えていたのでしょう?」
「ッ!」
当たっているだけに何も言い返せなくなってしまう。
「あらあらー、図星ですわね?」
アラスティアがニマニマと意地の悪い笑みを浮かべる。アラスティア・ラ・ロンデリウム。ゲームでは、シュヴァルツルートにおける友人キャラだった。あのシュヴァルツが私との婚約を宣言した事件以来、周囲は私を腫物を扱う様に接してきたけど、彼女は私に変わらず接してくれる。私にはそれがとてもありがたい。
「ふふっ。教室での振る舞いやテーブルマナーも、まるで別人かと思うくらい完璧な淑女で驚きましたけど、漸く素顔を覗かせましたね。顔を赤らめて、かわいらしいわ」
「そんなこと…」
ビックリして淑女モードが解けてしまったらしい。淑女モードは意識を集中しないとできないから、ちょっとしたことで解けてしまう弱点がある。気を付けないと。
「それで?シュヴァルツ殿下とはその後どうですか?」
アラスティアが身を乗り出して聞いてくるけど、私とシュヴァルツは冬休みの間会うことすらできなかったので、特に進展らしい進展はない。手紙で愛を囁かれたりしたけど、これはアラスティアには内緒だ。
「その後と言われても…特に何もありませんわ」
「残念ですわ。わたくしはお二人の事を応援していますのに」
彼女は、変わらず私とシュヴァルツの恋を応援してくれるらしい。ヴァイスが王太子になって目標を達成した今、今更彼女に私達の恋を応援する必要は無いと思うんだけど…どうして応援してくれるのだろう?
「実は…わたくしは貴女に恩がありますの」
恩?どういうことだろう?私は何かアラスティアにした覚えはないけど。
実はアラスティアに、ある婚約のお話があったらしい。相手は随分年上の人で、何度か会ったけど好きになれる自信が沸かなかったそうだ。でも御家の為には仕方ないと諦めていたのだけど、シュヴァルツの婚約破棄や私との婚約宣言を聞いて、自分の気持ちに正直になろうと勇気を貰ったと言う。そして、彼女は父親に婚約の話を断って欲しいとお願いしたらしい。
「婚約の話は白紙となりました。お二人のおかげで、わたくしは望まぬ結婚を避けることができたのです。結婚は一生の事ですからね。わたくしは貴女にとても感謝しているのですよ」
そう言って、アラスティアが優し気な笑みを浮かべる。
「ですから、わたくしはお二人には幸せになって欲しいと願っていますわ」
まさかアラスティアにそんな事情があったなんて知らなかった。アラスティアが私達の事を応援してくれるのはとても嬉しい。反対意見ばかり耳に入ってきていたので、余計に嬉しく感じる。そうだ!アラスティアにシュヴァルツの事相談してみよう。
「アラスティア様に相談があるのですけど…」
「早速ですね。よろしくてよ」
シュヴァルツに恥ずかしくて会えない事を相談すると、「惚気は結構ですわ」と一蹴されてしまった。なんで?
そんな理由もあって貴族院の始まりが待ち遠しかったけど、やっぱり一番の理由はシュヴァルツに早く会いたかったからだ。
私は結局冬休みの間シュヴァルツに会うことができなかった。原因は幾つも思い当たる。私の礼儀作法が王城に行くレベルに達していなかったり、シュヴァルツ自身が忙しかったり…。でも、一番の原因は身分が違いすぎることだと思う。男爵家当主のお父様も王子に面会できる機会なんてほとんどない。当主でも無理なのに、男爵家の一娘でしかない私が、王子であるシュヴァルツと会える機会なんてあるわけがない。
そんな訳で、シュヴァルツと会うのは冬休み前に行われた建国記念日のパーティ以来だ。シュヴァルツと、その、キ、キスをした日から会っていないことになる。
思い出したら急に恥ずかしくなってきた。早くシュヴァルツに会いたいけど、いったいどんな顔をして会えば良いのか分からなくて会いたくない。相反する二つの気持ちに挟まれて胸が苦しくなる。私はいったいどうすれば良いの?!
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「ふふっ。教室での振る舞いやテーブルマナーも、まるで別人かと思うくらい完璧な淑女で驚きましたけど、漸く素顔を覗かせましたね。顔を赤らめて、かわいらしいわ」
「そんなこと…」
ビックリして淑女モードが解けてしまったらしい。淑女モードは意識を集中しないとできないから、ちょっとしたことで解けてしまう弱点がある。気を付けないと。
「それで?シュヴァルツ殿下とはその後どうですか?」
アラスティアが身を乗り出して聞いてくるけど、私とシュヴァルツは冬休みの間会うことすらできなかったので、特に進展らしい進展はない。手紙で愛を囁かれたりしたけど、これはアラスティアには内緒だ。
「その後と言われても…特に何もありませんわ」
「残念ですわ。わたくしはお二人の事を応援していますのに」
彼女は、変わらず私とシュヴァルツの恋を応援してくれるらしい。ヴァイスが王太子になって目標を達成した今、今更彼女に私達の恋を応援する必要は無いと思うんだけど…どうして応援してくれるのだろう?
「実は…わたくしは貴女に恩がありますの」
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「早速ですね。よろしくてよ」
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