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033 裏事情
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シュヴァルツとの婚約は嬉しいけど、どうしていきなり婚約が許されることになったんだろう?シュヴァルツに聞いてみた。
「要因は色々とあるが…一番大きいのはやはり戦争だろう」
先日行われたアルルトゥーヤ帝国との戦争。その戦争でシュヴァルツは大きな功績を上げた。私は、皆がシュヴァルツを見直してくれて嬉しかったけど、そのことである問題が出てきてしまったらしい。シュヴァルツの上げた功績が大きすぎたのだ。次の王であるヴァイス王太子の地位を危うくするほどに。
旧シュヴァルツ派閥を中心に、シュヴァルツを次の王に求める声はかなり大きいらしい。皆戦争を経験したからか、強い王を求めているようだ。
このままでは昔のように派閥によって国が二つに分かれてしまう。そう危機感を抱いた王様は、シュヴァルツにある提案をしたという。シュヴァルツに王族から籍を抜いて臣籍に下ってくれないかとお願いされたらしい。表向きは今回の功績で公爵を地位を褒美に貰った形として、裏では王族から籍を抜いて王位継承権を放棄する形だ。シュヴァルツはこの提案を受け入れたらしい。
「兄上は愚かとは程遠い優秀な人間だからな。あれなら国を任せられる」
「でも、公爵様ならもっと相応しい縁談もあったんじゃ…?」
シュヴァルツには多くの婚約の打診があったようだし、公爵家にとってプラスになる縁談もたくさん来たに違いない。
「オレが君以外を求めるわけがないだろう」
嬉しいけど、面と向かって言われると顔が熱くなってしまう。
「それより、君にも多くの縁談がきていたみたいじゃないか。受けていないだろうな?」
シュヴァルツが真顔で聞いてくる。ひんやりと冷たい印象を受ける真顔だ。ちょっと怖い。怒ってるのかな?もしかして、私が縁談を受けたと疑ってる?失礼な!
「受けていません!全てお断りしました!」
「なら良い。まったく、君には隙がありすぎる。あれだけのことをしたのに、4年も経てば悪い虫が寄ってくるか…」
隙って何よ、隙って。“これは一度教育した方が良さそうだ”とか物騒な呟きが聞こえるし、怖いんですけど。私はシュヴァルツの意識を逸らそうと話題を変える。
「本当にわたくしと結ばれてもよろしいのですか?もっと公爵家の利益になるような縁談もあったはずです」
嫌だけど、本当は嫌だけど、私はシュヴァルツの第二夫人とか第三夫人とかも覚悟していたのだ。公爵家の利益になるような第一夫人を受け入れて私を第二夫人にというのは、結構現実的な選択肢だと思う。それぐらい私とシュヴァルツの身分は離れている。
「なに、君と結ばれる事にも意味はある」
私と結ばれる事にも政治的に意味があるそうだ。私は只の男爵家の娘で、私と結婚することで得られるメリットなんてほとんどないと言って良い。だが今回は、メリットが無いことがメリットになるようだ。敢えて私みたいなメリットの無い女と結婚することで、シュヴァルツ自身に野心がない事をアピールできるという。
「下手に権力者の娘と結ばれれば、王位簒奪の野心有りと見られかねんからな。それでは国が落ち着かん」
王様も国が割れるのは避けたいのでシュヴァルツと私の婚約を許してくれたそうだ。
「そんな訳で君との婚約が叶ったわけだ。王族ではないオレでは不服か?」
「いいえ」
シュヴァルツと結ばれる。私はそれだけで嬉しい。シュヴァルツが王族かどうかなんて関係ない。王族なんて面倒で肩が凝りそうだから避けたいと思っていたくらいだ。それに、シュヴァルツは公爵になるということは、私は公爵夫人だ。男爵家の娘が公爵夫人になるなんて、周囲が羨むほどの有り得ないくらいの玉の輿である。
公爵夫人と言えば、貴族女性では最高位だ。皆の模範になるべき社交界の中心人物である。ちゃんと礼儀作法習っといて良かったと切に思う。
そう言えば、私の習った礼儀作法は王族用ではなく高位貴族用のものだった。私が礼儀作法を習えるように手配してくれたのはシュヴァルツだったし、もしかしてシュヴァルツは最初からこうなるって分かっていたのかな?
「何を今更…」
シュヴァルツが呆れた様子で私を見てくる。え?本当に分かってたの!?
シュヴァルツは、王族のままでは私と結ばれるのは難しいと最初から分かっていたようだ。私と結ばれる為に王族を抜ける覚悟をしたらしい。
「戦争で勝てるかどうかが勝負だった。只勝つのではなく、大きな功績を上げなければいけなかったからな。我ながら無茶をしたものだ」
それであんなに危険な作戦を…。シュヴァルツは私と結ばれる為に、命すら懸けてくれた。
「予想外なのは兄上がオレを援護してくれた事ぐらいか。おかげで借りができてしまった」
私はその…シュヴァルツが私を思う気持ちの強さに照れてしまった。まさかそこまで私の事を思っていてくれていたなんて…!
シュヴァルツってあんまり面と向かって愛の言葉を囁くような真似はしないので、不意打ちに気持ちを伝えられて、照れてしまう。なにこれ嬉しくて恥ずかしくてほわほわする気持ちだ。顔が熱い。
「……い!おい!話を聞いているか?」
「ふぇ…?」
私はシュヴァルツとの婚約が叶って舞い上がって、シュヴァルツの遠回しな愛の告白にのぼせ上がってしまっていたようだ。ちょっと頭がふらふらする。
「まったく、これだから隙が多いと…」
シュヴァルツが私から目を逸らしながら何か呟いている。シュヴァルツの顔は平静そのものだけど、耳がちょっと赤いような…。ひょっとして…。
「…照れてる?」
「な!?バ、バカを言うな!」
シュヴァルツが私から勢いよく離れる。あぁ…せっかくのシュヴァルツのハグが終わってしまった。寂しい…。
「バカな事を言ってないで、早く挨拶に行くぞ!」
シュヴァルツの耳はここから見ても分かるくらい真っ赤だ。やっぱり照れてるんだと思う。図星を指されたからってハグを止めるのは良くないと思う。
「挨拶?」
「君の御両親に挨拶だ。今日は付き添いで来ているのだろう?手間が省けて丁度良い。君の御父上には婚約を認めてもらわなくてはいけないからな」
「そう言えば、何故お父様ではなく私に婚約の話を?」
婚約の話は家の当主を通して行われるのが普通だ。
「君の気持ちを確認したかった。流石に4年も会っていないからな…。王子であるオレが婚約を打診したら命令になってしまうだろ?」
その前に私の気持ちを確認して、私が望まぬ結婚をしなくても良いように考えてくれたらしい。シュヴァルツってゲームではオレ様キャラな設定だったけど、本当は優しくて繊細な人だと思う。
気が付いたら乙女ゲームの世界に生まれて、最初は詰んでるような状況だったけど、結果的には国も皆も無事。上手くいかない事ばっかりで、投げ出してしまいたい時もあったけど、最後まで諦めないで本当に良かった。シュヴァルツという素敵な人と出会って恋をして婚約をして。私は今、幸せです。
余談ですが、私とシュヴァルツの婚約を聞いたお兄様は“大将を討ち取るとは見事!”と言って頭を撫でて褒めてくれました。私は別にシュヴァルツを討ち取ったわけじゃないんだけど…お兄様らしくて笑っちゃいました。早くお兄様にも素敵な人が見つかると良いね!
「要因は色々とあるが…一番大きいのはやはり戦争だろう」
先日行われたアルルトゥーヤ帝国との戦争。その戦争でシュヴァルツは大きな功績を上げた。私は、皆がシュヴァルツを見直してくれて嬉しかったけど、そのことである問題が出てきてしまったらしい。シュヴァルツの上げた功績が大きすぎたのだ。次の王であるヴァイス王太子の地位を危うくするほどに。
旧シュヴァルツ派閥を中心に、シュヴァルツを次の王に求める声はかなり大きいらしい。皆戦争を経験したからか、強い王を求めているようだ。
このままでは昔のように派閥によって国が二つに分かれてしまう。そう危機感を抱いた王様は、シュヴァルツにある提案をしたという。シュヴァルツに王族から籍を抜いて臣籍に下ってくれないかとお願いされたらしい。表向きは今回の功績で公爵を地位を褒美に貰った形として、裏では王族から籍を抜いて王位継承権を放棄する形だ。シュヴァルツはこの提案を受け入れたらしい。
「兄上は愚かとは程遠い優秀な人間だからな。あれなら国を任せられる」
「でも、公爵様ならもっと相応しい縁談もあったんじゃ…?」
シュヴァルツには多くの婚約の打診があったようだし、公爵家にとってプラスになる縁談もたくさん来たに違いない。
「オレが君以外を求めるわけがないだろう」
嬉しいけど、面と向かって言われると顔が熱くなってしまう。
「それより、君にも多くの縁談がきていたみたいじゃないか。受けていないだろうな?」
シュヴァルツが真顔で聞いてくる。ひんやりと冷たい印象を受ける真顔だ。ちょっと怖い。怒ってるのかな?もしかして、私が縁談を受けたと疑ってる?失礼な!
「受けていません!全てお断りしました!」
「なら良い。まったく、君には隙がありすぎる。あれだけのことをしたのに、4年も経てば悪い虫が寄ってくるか…」
隙って何よ、隙って。“これは一度教育した方が良さそうだ”とか物騒な呟きが聞こえるし、怖いんですけど。私はシュヴァルツの意識を逸らそうと話題を変える。
「本当にわたくしと結ばれてもよろしいのですか?もっと公爵家の利益になるような縁談もあったはずです」
嫌だけど、本当は嫌だけど、私はシュヴァルツの第二夫人とか第三夫人とかも覚悟していたのだ。公爵家の利益になるような第一夫人を受け入れて私を第二夫人にというのは、結構現実的な選択肢だと思う。それぐらい私とシュヴァルツの身分は離れている。
「なに、君と結ばれる事にも意味はある」
私と結ばれる事にも政治的に意味があるそうだ。私は只の男爵家の娘で、私と結婚することで得られるメリットなんてほとんどないと言って良い。だが今回は、メリットが無いことがメリットになるようだ。敢えて私みたいなメリットの無い女と結婚することで、シュヴァルツ自身に野心がない事をアピールできるという。
「下手に権力者の娘と結ばれれば、王位簒奪の野心有りと見られかねんからな。それでは国が落ち着かん」
王様も国が割れるのは避けたいのでシュヴァルツと私の婚約を許してくれたそうだ。
「そんな訳で君との婚約が叶ったわけだ。王族ではないオレでは不服か?」
「いいえ」
シュヴァルツと結ばれる。私はそれだけで嬉しい。シュヴァルツが王族かどうかなんて関係ない。王族なんて面倒で肩が凝りそうだから避けたいと思っていたくらいだ。それに、シュヴァルツは公爵になるということは、私は公爵夫人だ。男爵家の娘が公爵夫人になるなんて、周囲が羨むほどの有り得ないくらいの玉の輿である。
公爵夫人と言えば、貴族女性では最高位だ。皆の模範になるべき社交界の中心人物である。ちゃんと礼儀作法習っといて良かったと切に思う。
そう言えば、私の習った礼儀作法は王族用ではなく高位貴族用のものだった。私が礼儀作法を習えるように手配してくれたのはシュヴァルツだったし、もしかしてシュヴァルツは最初からこうなるって分かっていたのかな?
「何を今更…」
シュヴァルツが呆れた様子で私を見てくる。え?本当に分かってたの!?
シュヴァルツは、王族のままでは私と結ばれるのは難しいと最初から分かっていたようだ。私と結ばれる為に王族を抜ける覚悟をしたらしい。
「戦争で勝てるかどうかが勝負だった。只勝つのではなく、大きな功績を上げなければいけなかったからな。我ながら無茶をしたものだ」
それであんなに危険な作戦を…。シュヴァルツは私と結ばれる為に、命すら懸けてくれた。
「予想外なのは兄上がオレを援護してくれた事ぐらいか。おかげで借りができてしまった」
私はその…シュヴァルツが私を思う気持ちの強さに照れてしまった。まさかそこまで私の事を思っていてくれていたなんて…!
シュヴァルツってあんまり面と向かって愛の言葉を囁くような真似はしないので、不意打ちに気持ちを伝えられて、照れてしまう。なにこれ嬉しくて恥ずかしくてほわほわする気持ちだ。顔が熱い。
「……い!おい!話を聞いているか?」
「ふぇ…?」
私はシュヴァルツとの婚約が叶って舞い上がって、シュヴァルツの遠回しな愛の告白にのぼせ上がってしまっていたようだ。ちょっと頭がふらふらする。
「まったく、これだから隙が多いと…」
シュヴァルツが私から目を逸らしながら何か呟いている。シュヴァルツの顔は平静そのものだけど、耳がちょっと赤いような…。ひょっとして…。
「…照れてる?」
「な!?バ、バカを言うな!」
シュヴァルツが私から勢いよく離れる。あぁ…せっかくのシュヴァルツのハグが終わってしまった。寂しい…。
「バカな事を言ってないで、早く挨拶に行くぞ!」
シュヴァルツの耳はここから見ても分かるくらい真っ赤だ。やっぱり照れてるんだと思う。図星を指されたからってハグを止めるのは良くないと思う。
「挨拶?」
「君の御両親に挨拶だ。今日は付き添いで来ているのだろう?手間が省けて丁度良い。君の御父上には婚約を認めてもらわなくてはいけないからな」
「そう言えば、何故お父様ではなく私に婚約の話を?」
婚約の話は家の当主を通して行われるのが普通だ。
「君の気持ちを確認したかった。流石に4年も会っていないからな…。王子であるオレが婚約を打診したら命令になってしまうだろ?」
その前に私の気持ちを確認して、私が望まぬ結婚をしなくても良いように考えてくれたらしい。シュヴァルツってゲームではオレ様キャラな設定だったけど、本当は優しくて繊細な人だと思う。
気が付いたら乙女ゲームの世界に生まれて、最初は詰んでるような状況だったけど、結果的には国も皆も無事。上手くいかない事ばっかりで、投げ出してしまいたい時もあったけど、最後まで諦めないで本当に良かった。シュヴァルツという素敵な人と出会って恋をして婚約をして。私は今、幸せです。
余談ですが、私とシュヴァルツの婚約を聞いたお兄様は“大将を討ち取るとは見事!”と言って頭を撫でて褒めてくれました。私は別にシュヴァルツを討ち取ったわけじゃないんだけど…お兄様らしくて笑っちゃいました。早くお兄様にも素敵な人が見つかると良いね!
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