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055 エルネストとの決闘③
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「バ、バカな!?」
オレがウインドカッターを斬ったことが信じられないのか、テオドールが外野で叫んでいた。
「ほう? 魔法を斬ったことはテオドールくんから聞いてはいたが、どうやらまぐれではないらしいね」
テオドールに比べて、エルネストは落ち着いているね。
あらかじめ予見していたのかな?
「しかし、これはどうかなッ!」
エルネストが二度手を振ると、今度は二重のウインドカッターが展開される。
まぁ、その程度じゃ無駄だけど。
「はっ! せやっ!」
風の魔法は、やはりその中核が見えやすいな。
おかげで楽に斬れるよ。
「や、やるじゃないか……!」
「今度はこちらから行くぞ」
声が上ずっているエルネストに一歩一歩近づいていく。
「こ、これならどうだ! 風刃乱舞!」
エルネストがウインドカッターの乱れ撃ちをする。
数で押し切ろうというのかな?
だが――――ッ!
「無駄だよ」
オレがすべてのウインドカッターを斬り落とすと、さすがにエルネストも引きつった顔をしていた。
しかし、エルネストの風刃乱舞はただのウインドカッターの連射なのか。エルネストの固有魔法かと思っていたんだが、どうやら違うらしい。
なんだかゲームの裏設定を知れたみたいで嬉しかった。
さらに一歩近づくと、エルネストは悪趣味なレイピアを構える。
「な、なるほど。キミはたしかに魔法が斬れるらしい。だが、私のレイピアは超えられない!」
エルネストはレイピアに絶対の自信を持ってるみたいだね。テオドールが今年の舞闘祭の優勝候補って言ってたし、三年生の中でもそれなりに強いのだろうが……。
「はあっ!」
エルネストが裂帛の気合いを籠めた突きを放つ。
レイピアの先端はブレブレだ。
だが、オレはもう知っている。エルネストのレイピアは、ここから変幻自在の軌道をたどることを。
しかし、同時にオレはレイピアという武器の弱点も看破していた。
それは――――。
「よっと」
「なっ!?」
オレは素早くバックステップを踏むと、レイピアを避ける。
すると、目の前には伸びきったレイピアが揺れていた。
この状態なら、変幻自在のレイピアもただの揺れる細い剣である。
「ふんっ!」
そして、レイピアはその細さ故に耐久力がない。剣をぶつけるだけで簡単に折れた。
「ぐっ!? まだだ! 風刃乱――――!?」
レイピアを失っても決闘を諦めないエルネスト。そのファイティングスピリッツは賞賛すべきものだな。
だが、この距離なら魔法の発動よりも直接殴った方が早い。
「がふ……」
オレはエルネストの胴に剣の峰を叩きつけた。
エルネストは体をビクリッと震わせると、そのまま体を弛緩させる。
気を失ったか。これでオレの勝利だな。
オレは確認するようにコランティーヌ先生を見る。
「勝者、アベル・ヴィアラット!」
コランティーヌ先生はエルネストの状態を確かめると、勝者を告げた。
「やった! すごいわ!」
「よかったですね、シャルリーヌ様」
「強い……!」
「うおー! 三年生に勝っちまうなんてマジでスゲーぜ!」
「すごいんだなー」
オレの勝利にシャルリーヌたちも大盛り上がりだ。
「エルネスト様が一年生に負けた……?」
「あの一年は何者だ!?」
「嘘でしょう!? エルネスト様は今年の武闘祭の優勝候補なのよ!?」
「こいつはわからなくなってきたな……」
「嵐が来るわね……」
いつの間にかオレとエルネストの決闘を見ていた上級生たちも驚きの声を上げていた。
彼らにしてみれば、日頃からエルネストの強さをよく知っている分、驚きが大きいのかもしれない。
驚きや歓喜に溢れる闘技場の中、一人だけ暗い感情を溢れさせている者がいた。
テオドールだ。
オレがウインドカッターを斬ったことが信じられないのか、テオドールが外野で叫んでいた。
「ほう? 魔法を斬ったことはテオドールくんから聞いてはいたが、どうやらまぐれではないらしいね」
テオドールに比べて、エルネストは落ち着いているね。
あらかじめ予見していたのかな?
「しかし、これはどうかなッ!」
エルネストが二度手を振ると、今度は二重のウインドカッターが展開される。
まぁ、その程度じゃ無駄だけど。
「はっ! せやっ!」
風の魔法は、やはりその中核が見えやすいな。
おかげで楽に斬れるよ。
「や、やるじゃないか……!」
「今度はこちらから行くぞ」
声が上ずっているエルネストに一歩一歩近づいていく。
「こ、これならどうだ! 風刃乱舞!」
エルネストがウインドカッターの乱れ撃ちをする。
数で押し切ろうというのかな?
だが――――ッ!
「無駄だよ」
オレがすべてのウインドカッターを斬り落とすと、さすがにエルネストも引きつった顔をしていた。
しかし、エルネストの風刃乱舞はただのウインドカッターの連射なのか。エルネストの固有魔法かと思っていたんだが、どうやら違うらしい。
なんだかゲームの裏設定を知れたみたいで嬉しかった。
さらに一歩近づくと、エルネストは悪趣味なレイピアを構える。
「な、なるほど。キミはたしかに魔法が斬れるらしい。だが、私のレイピアは超えられない!」
エルネストはレイピアに絶対の自信を持ってるみたいだね。テオドールが今年の舞闘祭の優勝候補って言ってたし、三年生の中でもそれなりに強いのだろうが……。
「はあっ!」
エルネストが裂帛の気合いを籠めた突きを放つ。
レイピアの先端はブレブレだ。
だが、オレはもう知っている。エルネストのレイピアは、ここから変幻自在の軌道をたどることを。
しかし、同時にオレはレイピアという武器の弱点も看破していた。
それは――――。
「よっと」
「なっ!?」
オレは素早くバックステップを踏むと、レイピアを避ける。
すると、目の前には伸びきったレイピアが揺れていた。
この状態なら、変幻自在のレイピアもただの揺れる細い剣である。
「ふんっ!」
そして、レイピアはその細さ故に耐久力がない。剣をぶつけるだけで簡単に折れた。
「ぐっ!? まだだ! 風刃乱――――!?」
レイピアを失っても決闘を諦めないエルネスト。そのファイティングスピリッツは賞賛すべきものだな。
だが、この距離なら魔法の発動よりも直接殴った方が早い。
「がふ……」
オレはエルネストの胴に剣の峰を叩きつけた。
エルネストは体をビクリッと震わせると、そのまま体を弛緩させる。
気を失ったか。これでオレの勝利だな。
オレは確認するようにコランティーヌ先生を見る。
「勝者、アベル・ヴィアラット!」
コランティーヌ先生はエルネストの状態を確かめると、勝者を告げた。
「やった! すごいわ!」
「よかったですね、シャルリーヌ様」
「強い……!」
「うおー! 三年生に勝っちまうなんてマジでスゲーぜ!」
「すごいんだなー」
オレの勝利にシャルリーヌたちも大盛り上がりだ。
「エルネスト様が一年生に負けた……?」
「あの一年は何者だ!?」
「嘘でしょう!? エルネスト様は今年の武闘祭の優勝候補なのよ!?」
「こいつはわからなくなってきたな……」
「嵐が来るわね……」
いつの間にかオレとエルネストの決闘を見ていた上級生たちも驚きの声を上げていた。
彼らにしてみれば、日頃からエルネストの強さをよく知っている分、驚きが大きいのかもしれない。
驚きや歓喜に溢れる闘技場の中、一人だけ暗い感情を溢れさせている者がいた。
テオドールだ。
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