【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)

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090 マジックバッグ入手と借金

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「できればもっと容量が欲しいな。難しいか?」
「でしたら鞄型のマジックバッグがお勧めです。鞄型は指輪型などとは比べ物にならないほど物が入りますので」
「失礼いたします」

 従業員が静かに置いたのは、大きな縦長のランドセルのようなバックパックだった。これもマジックバッグなのか?

「こちらは当店でも最大の容量を誇るマジックバッグです。そうですな……。この店を入れてもまだ余裕があるかと」
「そんなに!?」

 それってもう戦略級のアイテムじゃないか?

 隣に座るシャルリーヌも目を見開いて驚いている。

 だが、そんな規格外のアイテム、お値段も規格外なんじゃないか?

 オレは恐る恐る口を開く。

「いくらなのか、訊いてもいいか?」
「もちろんです」

 すると、ジャンは紙に羽ペンで数字を書き始めた。

「こちらになります」
「ッ!?」

 ヤベー金額だわ。手も足も出そうにない。それこそ、家どころか砦とか城とか建つんじゃないか?

「とても買えそうにないな。もっと手頃なものはないか?」
「でしたら、こちらなどがお勧めです」

 そんなこんなでいくつもマジックバッグを見ては性能や金額を確認していく。

 なんとか買えそうなのは、マジックバッグの性能としては最底辺の革袋タイプだった。それでも、腕輪型の何倍もの容量があるし、ぜひとも欲しい逸品だ。

 だが……。

「うーん……」

 オレは悩みに悩む。

 実は、革袋タイプのもう一つ上のランクであるポシェットタイプにもがんばれば手が届きそうなのだ。

 とはいえ、大金が必要だからすぐには買えないし、稼ぐ当てもない。

 ブラシェール伯爵のマヨネーズの販売が始まればお金が転がり込んでくるのだが、それはまだまだ先の話だ。

 できれば今すぐにでも欲しいのだが、革袋タイプとポシェットタイプでは容量に二倍以上の差がある。

 本当に今、革袋タイプを買ってしまってもいいのだろうか?

 悩むなぁ。

「アベルはこっちが欲しいの?」
「ああ。だが、金が足りないんだ……」

 シャルリーヌがポシェットタイプのマジックバッグを指差して確認してきたので頷く。

「わかったわ。じゃあ、わたくしが足りない分を貸してあげる」
「え?」

 だって、足りない分って言ってもかなりの大金だよ?

 それをシャルリーヌに貸してもらえるのは正直なところ助かるけど、なんだかかっこ悪い気がした。

「いや、助かるけど……でも……」
「いいのいいの」

 そう言うシャルリーヌは、頭のリボンをちょんと弾いた。

 もしかして、リボンのお礼に?

 でも、リボンとマジックバッグじゃ値段が違い過ぎるよ。

「シャルリーヌ、あの、やっぱり……」
「アベルは言ったでしょ? 初デートの記念よ。それに貸すだけだから。後からちゃんと返してもらうわ。だから、気にしないで」
「ありがとう、シャルリーヌ。助かるよ」
「ええ」

 にっこりと笑うシャルリーヌの手を取って、オレはお礼を口にする。

 まさか、初デートでシャルリーヌに借金ができるとは……。

 だが、おかげでポシェットタイプのマジックバッグが買えた。

 その見た目は黒い革製のポシェットで、わりとシンプルな作りだ。パッと見、これがすごいマジックバッグだとはわからない。

「ふふっ。お揃いね」

 シャルリーヌが自分の腰のポシェットを撫でてみせる。

「そうだね」

 そういえば、シャルリーヌもポシェットタイプのマジックバッグを使ってるんだったね。オレのマジックバッグもポシェットタイプだし、お揃いだ。もしかしたら、オレとお揃いにするためにお金を貸してくれたのかな?

 そんなのぼせた考えまで頭の中に浮かんだ。

 まぁ、それはないか。一応、婚約者ではあるけど、シャルリーヌにそこまで好きになってもらえるようなことをした覚えがないしね。

 その後、オレたちは馬車に乗って王都デートを楽しんだのだった。


 ◇


「ぜはぁー、ぜはぁー、ひゅ、ぜはぁー」
「ほらほらがんばって。あと少しで学園だから」

 わたくしブリジットは、アリソンに肩を貸しながら夕暮れの王都の街中を歩いていた。

 もうアリソンは淑女としてだいぶアウトは荒い呼吸で疲労困憊といった感じだ。

 だから、意地を張らずにわたくしたちも馬車に乗ろうと言ったのに。

 そもそも、歩くよりも馬車の方が速いのだから、こうなることはわかりそうなものだけど……。ちょっと抜けているのがアリソンクオリティよね。

「でも、意外とアベル様は紳士だったわね。ちょっと驚いたわ」
「そう、ね……。かはっ、ぜひゅっ」
「ほら、辛いなら無理にしゃべらなくてもいいから」

 力が抜けたようにコクリと頷くアリソン。アリソンはシャルリーヌ様の貞操を心配していたけど、アベル様はビックリするほど紳士にシャルリーヌ様を丁重に扱っていた。

 ずっと馬車を追いかけていたけど、アリソンが危惧していたように、連れ込み宿に行くこともなかったし、お二人とも楽しそうだった。

 やっぱりアリソンの考え過ぎだったのよ。

「これで少しはアベル様のことを信用してもいいんじゃない?」
「そう、ね……。ぜひゅっ、べはっ!?」
「もう、だから無理にしゃべらなくってもいいってば」
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