愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠

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 ここ最近、エリックさまが屋敷にいらっしゃる時間が増えました。どうやら先日の夜会でお会いしたダイナマイトボディな美女とは別れてしまったようです。なるほど、それならようやく妻としての役割を果たせますね。

「アイビー、これは一体……」
「エリックさま、どうぞおかけになってください。こちらは、東方から取り寄せた紅茶です。香りが芳醇で、甘いお菓子によく合うんですよ」
「そうよ、お父さま。せっかくアイビーがお茶会を主催しているのだから、しっかり参加してくれなくちゃ」
「君たちは一体、いつの間に仲良くなったんだい」

 私とリサは目を合わせ、お互いに小首を傾げてみせました。リサが私をバッサリと切って捨ててくれたおかげで仲良くなったと伝えても、わかってもらえるのでしょうか。

 男性の世界では、殴り合いから友情が芽生えることもあるようですし、意外と納得していただけるかもしれませんね。

「それで、彼女たちは君の友人かい?」
「いいえ。エリックさまの恋人候補の皆さまです」
「は?」

 なぜか口をあんぐりさせるエリックさまに、得意満面で女性陣をご紹介していきます。セクシー美女からスレンダー美人まで、選り取りみどりなのです!

「私たちが書類上の夫婦であることは周知の事実ですし、エリックさまを紹介してほしいという女性は多いのです。とはいえ、無節操にご紹介するのもよろしくないでしょうから、こちらである程度ふるいにかけさせていただきました」
「き、君は一体何を!」
「お父さま。アイビーから見てお父さまがどんな風に見えるか、おわかりいただけたかしら?」

 なぜか顔を赤くしたり青くしたりお忙しいエリックさまに、呆れ顔のリサが腕を組んで何やら言い募っています。ここ最近、父娘の会話も増えたようで嬉しい限りですね。
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