聖獣の卵を保護するため、騎士団長と契約結婚いたします。仮の妻なのに、なぜか大切にされすぎていて、溺愛されていると勘違いしてしまいそうです

石河 翠

文字の大きさ
3 / 7

(3)

しおりを挟む
「おはよう、愛しいひと」
「ひ、ひええええ、だ、団長! ど、どうしてここに?」
「結婚した夫婦がひとつ屋根の下で過ごすことは当たり前だろう」
「けっ、けっ、けっ」
「どうした。寝起きでむせたか」
「結婚ですか!」
「なんだ、覚えていないのか。昨夜、自分が熱烈に求婚してきたじゃないか」

 回想することしばし。普段は滅多に口にしない酒に飲まれて酔いつぶれたあげく、通りすがりの騎士団長にうざ絡みした記憶が蘇ってくる。エリカは慌ててベッドから降りると、騎士団長に頭を下げた。

「も、申し訳ありません! もしかして、私、聖獣保護のために結婚してくれって団長に泣きつきました?」
「酒場に響き渡る声で叫んでいたとも。だが、安心してほしい。婚姻届はすでに受理されているし、あの場にいたのはみな俺の部下たちだ。口外しないと約束しよう。約束を破るような奴は、物理的に物言わぬようにしてやるだけのこと」

(それはつまり、部下さんたちはうっかり秘密を漏らすとこの世に別れを告げることになると?)

 エリカの疑問に騎士団長は柔らかく微笑むだけ。その笑顔の優しさに、思わず冷や汗が出る。慌てて別の話題にすり替えた。

「それにしてもここはどこでしょうか」
「ここは俺の家だ」
「騎士団長って高給取りなんですね」
「俺が誰かわかっていて、俺に契約結婚を申し込んだのでは?」
「はあ。少なくとも私よりはお金を稼いでいそうだとは思っていましたが、まさかこんなお貴族さまのようなお屋敷だったなんて」

 メイドさんとか出てきちゃったりなんかして。冗談混じりで笑いかけようとしたとき、エリカは顔をひきつらせた。タイミングよくノックされた扉の向こう側からは、なんとも渋い家令と頭を下げたメイドたちが待機していたからだ。

「旦那さま、準備が整いました」
「ああ、ありがとう。エリカ、湯浴みが済んだら朝食にしよう。昨日はそのまま寝てしまっただろう?」

(さらりと呼び捨て!)

 騎士団長の言葉に、まだ年若いメイドが頬を染めた。

 どことなくそわそわした眼差しを向けてくる家令たちに止まっていたはずの冷や汗が再び吹き出す。

(ち、違うから! 確かに同衾していたみたいなんですが、色っぽい話じゃないんです。酔っぱらいが意識を失ったあげく、今現在もちょっとばかり二日酔いなだけで……)

 はたと気がつき、エリカは騎士団長に飛びついた。周囲のメイドたちが黄色い声をあげる。弁解したい気持ちを抑え、ひそひそと耳元で囁いた。

「自宅の件ですが、どうなるのでしょう? 聖獣保護協会のかたは聖獣に関してはお任せできるとは思うのですが、鶏たちについては玄人ではないはず。この猛暑の中でちゃんとお世話していただけているのか心配です」
「その件だが、もう少し手続きと裏取りに時間がかかりそうだ。聖獣の卵に鶏たち、自宅のことなど気になるのはよくわかるが、どうかもう少し堪えてくれ。部下たちも鶏たちのお世話を頑張っているんだ。……どうも、ピヨリーヌ殿には嫌われているようだが」

(うちのピヨリーヌにどつき回される騎士さまたちって……。本当に、お転婆な娘ですみません!)

 深々と団長に頭を下げられて、とんでもないとエリカは首をぶんぶんと振り続けていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

『完結・R18』公爵様は異世界転移したモブ顔の私を溺愛しているそうですが、私はそれになかなか気付きませんでした。

カヨワイさつき
恋愛
「えっ?ない?!」 なんで?! 家に帰ると出し忘れたゴミのように、ビニール袋がポツンとあるだけだった。 自分の誕生日=中学生卒業後の日、母親に捨てられた私は生活の為、年齢を偽りバイトを掛け持ちしていたが……気づいたら見知らぬ場所に。 黒は尊く神に愛された色、白は"色なし"と呼ばれ忌み嫌われる色。 しかも小柄で黒髪に黒目、さらに女性である私は、皆から狙われる存在。 10人に1人いるかないかの貴重な女性。 小柄で黒い色はこの世界では、凄くモテるそうだ。 それに対して、銀色の髪に水色の目、王子様カラーなのにこの世界では忌み嫌われる色。 独特な美醜。 やたらとモテるモブ顔の私、それに気づかない私とイケメンなのに忌み嫌われている、不器用な公爵様との恋物語。 じれったい恋物語。 登場人物、割と少なめ(作者比)

『階段対策会議(※恋愛)――年上騎士団長の健康管理が過剰です』

星乃和花
恋愛
【完結済:全9話】 経理兼給仕のクラリスは、騎士団で働くただの事務員――のはずだった。 なのに、年上で情緒に欠ける騎士団長グラントにある日突然こう言われる。 「君は転倒する可能性がある。――健康管理対象にする」 階段対策会議、動線の変更、手をつなぐのは転倒防止、ストール支給は防寒対策。 全部合理的、全部正しい。……正しいはずなのに! 「頬が赤い。必要だ」 「君を、大事にしたい」 真顔で“強い言葉”を投下してくる団長に、乙女心を隠すクラリスの心拍数は業務超過。 さらに副団長ローレンは胃薬片手に「恋は会議にするな!!」と絶叫中!? これは健康管理?それとも恋愛? ――答え合わせの前に、まず“階段(概念)“をご確認ください。

氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました

まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」 あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。 ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。 それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。 するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。 好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。 二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

下賜されまして ~戦場の餓鬼と呼ばれた軍人との甘い日々~

星森
恋愛
王宮から突然嫁がされた18歳の少女・ソフィアは、冷たい風の吹く屋敷へと降り立つ。迎えたのは、無愛想で人嫌いな騎士爵グラッド・エルグレイム。金貨の袋を渡され「好きにしろ」と言われた彼女は、侍女も使用人もいない屋敷で孤独な生活を始める。 王宮での優雅な日々とは一転、自分の髪を切り、服を整え、料理を学びながら、ソフィアは少しずつ「夫人」としての自立を模索していく。だが、辻馬車での盗難事件や料理の失敗、そして過労による倒れ込みなど、試練は次々と彼女を襲う。 そんな中、無口なグラッドの態度にも少しずつ変化が現れ始める。謝罪とも言えない金貨の袋、静かな気遣い、そして彼女の倒れた姿に見せた焦り。距離のあった二人の間に、わずかな波紋が広がっていく。 これは、王宮の寵姫から孤独な夫人へと変わる少女が、自らの手で居場所を築いていく物語。冷たい屋敷に灯る、静かな希望の光。 ⚠️本作はAIとの共同製作です。

一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。

甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。 だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。 それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。 後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース… 身体から始まる恋愛模様◎ ※タイトル一部変更しました。

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

処理中です...