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レイモンドは、セリーヌのきまぐれで拾われた孤児。見た目こそ整ってはいるが、血筋を重んじる貴族の家で、セリーヌのそばで働けることが不思議な身の上。それ以上のことなど望むべくもなかった。
――ねえ、レイモンド。わたくし、悪い男に弄ばれてみたいの。どうしたらいいかしら――
けれど、セリーヌの言葉でたがが外れた。一時の冒険心で手折られるくらいなら、いっそこの手で。あるいはそう思い詰めるくらいには、このやり直しの日々にレイモンドが耐えられなくなっていたのかもしれなかった。
「お嬢さま、ご存知ですか。乙女の証を傷つけることなく、快感を得る手段もあるのですよ。お互いにね」
首筋に顔をうずめれば、くらくらするほど甘い香りに包まれる。そのまま少しばかり歯を立ててやれば、セリーヌが頬を染めたあげく、涙をあふれさせた。
まったく、このおかたは。これでは相手を拒むどころか、興奮させる要素しかない。高貴な女性の涙は、いっそ扇情的でさえある。
まるみを帯びた頬から、真珠のような雫が伝い落ちる。それをそっと舐め上げて堪能し、レイモンドは言い聞かせるようにささやいた。
「お嬢さま、男をあまり舐めてはいけません。いくら身分という純然たる壁があったとしても、欲情した男にそれらを理解する理性など残ってはいないのです」
はくはくと唇を震わせるセリーヌ。その唇にむしゃぶりついて、まろやかな胸をもみしだき思う存分甘い声で鳴かせてみたい。そんな凶暴な想いを押し隠し、レイモンドは微笑む。
「これに懲りたら、むやみやたらに男を煽るような真似をしてはいけませんよ。……怖がらせてしまい、本当に申し訳ありませんでしt」
「……あら、これがなかったことになるとでも?」
普段のふわふわとした砂糖菓子のような雰囲気はどこへやら、つんと冷たく言い捨てられてレイモンドは苦笑する。
「当然でございます。クビになることはもとより、お嬢さまを辱しめた罪としてこの両腕を切り落とされてもしかるべきだと存じます」
責任は取るつもりだ。それだけのことをした自覚はある。もはやこれまでだとうなだれつつ、けれどようやくセリーヌから離れられると安堵したのもまた事実。
だが、レイモンドを前にセリーヌは微笑んだ。随分昔に見たようなどこか懐かしい高慢な顔つきで。
――ねえ、レイモンド。わたくし、悪い男に弄ばれてみたいの。どうしたらいいかしら――
けれど、セリーヌの言葉でたがが外れた。一時の冒険心で手折られるくらいなら、いっそこの手で。あるいはそう思い詰めるくらいには、このやり直しの日々にレイモンドが耐えられなくなっていたのかもしれなかった。
「お嬢さま、ご存知ですか。乙女の証を傷つけることなく、快感を得る手段もあるのですよ。お互いにね」
首筋に顔をうずめれば、くらくらするほど甘い香りに包まれる。そのまま少しばかり歯を立ててやれば、セリーヌが頬を染めたあげく、涙をあふれさせた。
まったく、このおかたは。これでは相手を拒むどころか、興奮させる要素しかない。高貴な女性の涙は、いっそ扇情的でさえある。
まるみを帯びた頬から、真珠のような雫が伝い落ちる。それをそっと舐め上げて堪能し、レイモンドは言い聞かせるようにささやいた。
「お嬢さま、男をあまり舐めてはいけません。いくら身分という純然たる壁があったとしても、欲情した男にそれらを理解する理性など残ってはいないのです」
はくはくと唇を震わせるセリーヌ。その唇にむしゃぶりついて、まろやかな胸をもみしだき思う存分甘い声で鳴かせてみたい。そんな凶暴な想いを押し隠し、レイモンドは微笑む。
「これに懲りたら、むやみやたらに男を煽るような真似をしてはいけませんよ。……怖がらせてしまい、本当に申し訳ありませんでしt」
「……あら、これがなかったことになるとでも?」
普段のふわふわとした砂糖菓子のような雰囲気はどこへやら、つんと冷たく言い捨てられてレイモンドは苦笑する。
「当然でございます。クビになることはもとより、お嬢さまを辱しめた罪としてこの両腕を切り落とされてもしかるべきだと存じます」
責任は取るつもりだ。それだけのことをした自覚はある。もはやこれまでだとうなだれつつ、けれどようやくセリーヌから離れられると安堵したのもまた事実。
だが、レイモンドを前にセリーヌは微笑んだ。随分昔に見たようなどこか懐かしい高慢な顔つきで。
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