三度目の結婚ですが、ようやく幸せな家族を手に入れました。

石河 翠

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 ちなみに元夫の話も風の噂で聞くことになった。
 例の彼女と結婚したそうだが、すぐに離婚する羽目になったらしい。何でも、生まれてきた子どもは夫にまるで似ていなかったのだという。赤子の顔はすぐに変わるとは言うが、明らかに隣国の人々の特徴を持ち合わせた赤子を見ては、悠長なことは言っていられなかったようだ。

 これはどういうことかと散々に責め立てたところ、翌日屋敷から煙のように消え失せてしまったのだという。その上、金目のものはすっかりなくなってしまっていたのだとか。元夫の家では、置いて行かれた赤子をどうすべきかで揉めに揉めているそうだ。

 となると彼女は子どもを産み捨ててすぐに、クララの父親を引っ掛けたことになる。恐るべき体力と根性だ。まあ、もはや我が家には関係のない話だろう。

「ナンシーお母さま!」
「まあ、クララ。お顔に美味しそうなものがついていますよ」
「見てみて、お庭のいちじくでタルトを作ったの。料理長と一緒に一生懸命頑張ったのだから!」
「まあ、それは楽しみですね」
「甘さ控えめだから、ボニフェースお父さまも大丈夫よ!」
「ありがとう。それじゃあ、お茶の時間になるまでクララのピアノを聞かせてもらおうか」
「わかったわ。わたしはピアノを弾くから、ふたりはちゃんと踊ってね。新婚さんなんだからもう恥ずかしくないでしょう? それにいつダンスがお医者さまによって禁止になるかもわからないわけだし」
「もう、そんなにひとを年寄り扱いするものではありませんよ。しばらくは、たくさん踊れます」
「うーん、そういう意味じゃあないのだけれどなあ」

 夫となったボニフェースさまに手を差し伸べられ、そっと自分の手を乗せる。穏やかな午後の昼下がり、屋敷の中では軽やかで楽しげなワルツが絶え間なく聞こえていた。
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みんなの感想(1件)

HIRO
2024.06.11 HIRO

6 叔父様のs→叔父様のすでは?あえてでしたか?(承認不要です)

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