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「本当に最初から気がついていらっしゃったのですか?」
「君は僕の運命のひとだ。どこにいてもすぐにわかるよ」
「それ誰にでも言っていますよね? 何度もナンパされましたし」
「僕はパメラ以外には、この言葉を使ったことはないが?」
「つまり、すべて私だと認識してナンパしてというのですか?」
「パメラ。なぜ君が僕のことを信用してくれないのかわからないが、僕が君を思う気持ちは本物だよ」
「だって、いつもふんわり耳心地の良いことしかおっしゃらないではありませんか。デートだって、普段は誘ってくださらないのに、髪を染めているときだけは声をかけてこられますし」
私のツッコミに、ヴィンセントさまが崩れ落ちました。そんな全力で「絶望」を表現されても困ります。
「伝えたほうが良かったのか?」
「むしろ、どうして伝えなくていいと思ったのですか。少なくとも私は、具体的に私のどこが好きか教えてほしいですね」
婚約者さまの言葉は、誰にでも使える美辞麗句過ぎて、口先だけの言葉にしか聞こえませんでしたから。
「そうなのか。陛下からは、『具体的過ぎて気持ち悪いから控えろ』と忠告をされていたんだが、失敗したな。悲しい思いをさせてしまってすまない」
「えーと、陛下がアドバイスをくださったのですか? やはりこれは政略結婚なのでしょうか?」
「まさか! 僕が陛下にお願いしたんだ。パメラとの結婚を許してほしいと」
「よくお許しが出ましたね」
こんな優良物件、下手したら、王女の降嫁先として挙げられるでしょうに。不思議がる私に向かって、婚約者さまがこくりとうなずきました。
「結婚を許してもらえないなら、君をさらって他国に逃亡すると宣言したからな」
「さらりと私の意思を無視しないでください」
「陛下からは、くれぐれも嫌がっている相手をさらうな、監禁するな、無理矢理添い遂げるなと言われている」
「恋愛指南どころか、犯罪防止のための注意事項なのでは?」
なんとまあ信じられないことに、私は想像以上に愛されていたようです。
「だが、そうか。パメラは具体的に愛の言葉があったほうが安心できたのか。ならば安心してほしい。君に伝えられなかったぶんのこれまでの愛の言葉は、すべて詩集にしてある。それを今すぐ届けさせよう。図書館に僕の寄贈本専用の書庫があってね」
「は、詩集?」
ちょっと予想外の言葉が出てきました。研究一筋のヴィンセントさまがポエムを口ずさむとか、想像がつきません。
「今までは迷惑がられると控えめにしていたプレゼントも、どんどんやっていこう。季節の花束を君に届けられるように、王都に植物園を作っていたんだが、気に入ってくれたようで嬉しいよ。あそこの名義も君にしておくからね」
「……は?」
「これからは、大手をふってデートができるな。結婚前に万一のことがあってはならないと言われていて二人きりのデートも禁止されていたから、街中で君を見つけたときは天にものぼる気持ちだったよ。しばらく様子を見てみたところによれば、髪を染めたパメラは魔力波動が変わって彼らも認知しづらいみたいだね。陛下の派遣した護衛も簡単に撒けるから正直助かるよ」
え、陛下が派遣した護衛? それって、誰から私を守っているのでしょうか?
首を傾げていると、私をぎゅうぎゅうと抱き締めているヴィンセントさまの力が強くなります。
「まったく、パメラは可愛いな。『パメラ』という名前はパメラにしか使えないようにしたい。ああ、それがいいな。今度報奨をもらうときには、それをお願いしよう」
「やめてください」
一体どこの暴君ですか。陛下の苦労がわかったような気がしました。今度から、日々のお祈りの際には陛下への感謝も捧げるようにしておきましょう。
「君は僕の運命のひとだ。どこにいてもすぐにわかるよ」
「それ誰にでも言っていますよね? 何度もナンパされましたし」
「僕はパメラ以外には、この言葉を使ったことはないが?」
「つまり、すべて私だと認識してナンパしてというのですか?」
「パメラ。なぜ君が僕のことを信用してくれないのかわからないが、僕が君を思う気持ちは本物だよ」
「だって、いつもふんわり耳心地の良いことしかおっしゃらないではありませんか。デートだって、普段は誘ってくださらないのに、髪を染めているときだけは声をかけてこられますし」
私のツッコミに、ヴィンセントさまが崩れ落ちました。そんな全力で「絶望」を表現されても困ります。
「伝えたほうが良かったのか?」
「むしろ、どうして伝えなくていいと思ったのですか。少なくとも私は、具体的に私のどこが好きか教えてほしいですね」
婚約者さまの言葉は、誰にでも使える美辞麗句過ぎて、口先だけの言葉にしか聞こえませんでしたから。
「そうなのか。陛下からは、『具体的過ぎて気持ち悪いから控えろ』と忠告をされていたんだが、失敗したな。悲しい思いをさせてしまってすまない」
「えーと、陛下がアドバイスをくださったのですか? やはりこれは政略結婚なのでしょうか?」
「まさか! 僕が陛下にお願いしたんだ。パメラとの結婚を許してほしいと」
「よくお許しが出ましたね」
こんな優良物件、下手したら、王女の降嫁先として挙げられるでしょうに。不思議がる私に向かって、婚約者さまがこくりとうなずきました。
「結婚を許してもらえないなら、君をさらって他国に逃亡すると宣言したからな」
「さらりと私の意思を無視しないでください」
「陛下からは、くれぐれも嫌がっている相手をさらうな、監禁するな、無理矢理添い遂げるなと言われている」
「恋愛指南どころか、犯罪防止のための注意事項なのでは?」
なんとまあ信じられないことに、私は想像以上に愛されていたようです。
「だが、そうか。パメラは具体的に愛の言葉があったほうが安心できたのか。ならば安心してほしい。君に伝えられなかったぶんのこれまでの愛の言葉は、すべて詩集にしてある。それを今すぐ届けさせよう。図書館に僕の寄贈本専用の書庫があってね」
「は、詩集?」
ちょっと予想外の言葉が出てきました。研究一筋のヴィンセントさまがポエムを口ずさむとか、想像がつきません。
「今までは迷惑がられると控えめにしていたプレゼントも、どんどんやっていこう。季節の花束を君に届けられるように、王都に植物園を作っていたんだが、気に入ってくれたようで嬉しいよ。あそこの名義も君にしておくからね」
「……は?」
「これからは、大手をふってデートができるな。結婚前に万一のことがあってはならないと言われていて二人きりのデートも禁止されていたから、街中で君を見つけたときは天にものぼる気持ちだったよ。しばらく様子を見てみたところによれば、髪を染めたパメラは魔力波動が変わって彼らも認知しづらいみたいだね。陛下の派遣した護衛も簡単に撒けるから正直助かるよ」
え、陛下が派遣した護衛? それって、誰から私を守っているのでしょうか?
首を傾げていると、私をぎゅうぎゅうと抱き締めているヴィンセントさまの力が強くなります。
「まったく、パメラは可愛いな。『パメラ』という名前はパメラにしか使えないようにしたい。ああ、それがいいな。今度報奨をもらうときには、それをお願いしよう」
「やめてください」
一体どこの暴君ですか。陛下の苦労がわかったような気がしました。今度から、日々のお祈りの際には陛下への感謝も捧げるようにしておきましょう。
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