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「国王陛下におかれましてはご機嫌麗しゅう」
「正式な謁見ではない。楽にしてくれ」

 目覚めたエマは、とりあえず国王陛下に会うことになった。通常、「とりあえず」で会えるものではないが、かつての婚約者が国王となり、義妹が王妃となっていたがゆえのことである。

「あらあら、二人ともすっかり大きくなって」
「親戚のおばちゃんのような口調になるのはやめてくれ。だいたいこの歳になったら、『大きくなった』とは言わぬ。ただ『老けた』のだ」
「まあ、お城の厨房におやつをくすねに行っていた王子さまとは思えない発言だわ」
「おい!」
「怒っちゃいやよ。でも安心したの。寝て起きたら、みんなすっかり変わってしまっていたし」
「頭部と腹部を重点的に観察するのはやめてくれ」

 ころころと笑えば、王妃となった義妹がエマに突進してきた。

「お義姉さま。本当にごめんなさい」
「一体、何を謝っているの?」
「だって、本当なら王妃になるのはお義姉さまのはずだったのに……」
「もう、何泣いてるの。あなたが幸せなら私も幸せに決まってるじゃない。大きくなっても天使は天使ね。というか、マジで女神さまの御使いなんじゃないの。めっちゃ良い匂いするんだけど!」
「お義姉さま!」
「おい、そこのふたり。俺を放置していちゃいちゃしないでくれ……」

 エマが昏睡状態に陥ったあと、義妹は無事に王太子に嫁いでいた。なんでも義妹の父親が判明し、さる高貴なる血筋であることが立証されたのだとか。

「だったら、もっと早めに名乗り出てほしいよねー」
「今回の騒ぎでようやく昔の恋人の居場所がわかったのだそうだ」
「さすが、お義母さま。お父さまをゲットする前に捕まえていたひとも、かなりハイスペックな男性だったのね! まあでも手放したお相手が悪いんだし、お義母さまはもう私たちのものよ。好きなら何があってもちゃんと側にいなきゃね!」

 エマが笑顔でガッツポーズを決めれば、付き従ってきたリーバイが部屋の隅で小さくうなずいた。
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