【異世界恋愛短編集】冷遇された身代わり花嫁は、継子の不幸を許さない。

石河 翠

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2.最後を決めるのは、あなたではなくて私なのだけれど?

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 ひっきりなしに客が来るとはいえ、食事を客人たちに提供することにも慣れてきた。嬉しそうに食事をするお客さまとの会話も弾む。少しばかり残念なのは、リピーターとなるお客さまがひとりもいないことだろうか。誰もが心の底から満足そうに帰っていくが、もう一度店を訪れる機会はないのだ。食後のお客さまが軽やかな足取りで進んでいく姿を、ヘスターはただ静かに見つめていた。

 そんなある夜、王妃時代のへスターを苦しめた宰相と娘である侯爵令嬢が館を訪れる。薄汚れてはいたが、間違いない。一方の宰相と娘は、ヘスターを見ても彼女が王妃であったことには気が付かないようだった。

「儂が食事を希望しているのだ。席が空いておらずとも、作るものだろう」
「そうよ、そうよ。お父さまを一体誰だと思っているの!」
「こちらではどのような国からいらっしゃっても、どのような地位に就いていらっしゃっても、みな平等でございます。そして大変申し訳ございませんが、あなた方はお客さまたりえないのです」

 なおも食い下がろうとする宰相と侯爵令嬢は、洋館に足を踏み入れようとした瞬間に弾き飛ばされた。まるで雷に打たれたかのように悶絶している。屋敷の主人はその姿を無言で見下ろすと、そのまま扉を閉めてしまった。重厚な扉だが、完全なる防音とは言いがたい。しつこく、食べ物を出せと騒ぎ立てているふたりだったが、それもしばらく経てば静かになった。

 ようやく諦めたのだろうかと思いきや、今度は裏庭で何やら騒がしい音が聞こえてくる。客人に詫びを入れながら、裏庭に向かう主人をヘスターも追いかけると、予想通り宰相とその娘が裏庭へと侵入していた。かつての上品な姿が信じられないほど獣のような勢いで塀を乗り越え、畑の野菜や木々の果実を食べようとしている。けれど彼らが手にした瞬間に、木々も草花もことごとく枯れ果ててしまう。そして水でもいいから飲みたいと井戸に手を触れた瞬間、水さえも干上がってしまうのだ。

「何度も言わせるな。貴様らは客ではない。自分たちのふさわしい場所もわからんのか?」
「ふざけるな! 儂らを何だと思っている!」
「救いようのない屑だが? さっさとこの場所から離れればよいものを、これ以上自分を煩わせるならば」

 そして何をどうしたのか、宙から見事な剣を取り出す。大剣を構えようとした瞬間に、ヘスターは主人に近づきそっと自身の手を重ねたのだった。
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