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本編
11話
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……さて、どうしたものか。
つい勢いでラーミナを自室に連れてきてしまったが、この先どうするかは決めてない。まぁ、一応理由はあるのだが。
「……とに、かく!血塗れなのはダメだよな。
後は怪我の治療と……」
幸いオレの部屋の床は、毛足の長いカーペットで覆われている。必要以上にモコモコなのは、オレの趣味だ。素材は魔獣の毛皮。
乾きかけているとはいえ、彼女をこれから寝かせるベッドを血で汚すわけにもいかないから、一時的に床で待っててもらおう。
……一応、予備のシーツを敷いた上に。
クローゼットから金盥を取り出す。いつからあるのは分からんが、あることだけは知ってたんだよなぁ。ま、役立つときが来るとは思ってなかったけどな。
おっと、意識が飛んだ。とにかく、金盥に魔法でお湯をためて、箪笥からタオルを取り出す。
……で、ここでなんだが。
「服、どうしようか……」
傷の治療にも、清潔面でも、身体を拭かなきゃ始まらない。それは充分に理解している。
でもさ、年頃の女の子──それも初恋の相手──を脱がすのって、ちょっと常識的にどうなのか。
んー、でも事情があれだからなぁ。今更誰かを呼ぶわけにもいかないし……。しゃーない、覚悟を決めよう!
「……ごめん、ラーミナ。後で弁償する」
べっとりと魔獣の血で身体に張りついてしまった服を、風邪魔法で慎重に剥がしていく。……さすがに直接触れるのは気が引けるし、下着までとらなければセー──
(いやいや、アウトだろ!)
と、とにかく今回は見逃してもらわなければ!……えぇい、ままよ!!目を瞑ってもこれくらいはできる!
だが、剥がした服はとてもじゃないけどもう着れる代物ではなくなっていた。ところどころが破れて解れて、ただの黒い布切れになってしまっている。
一応、身体は拭いたけど(もちろん魔法で、直では触れてないぞ!)、下着のままベッドに入れるのもなぁ……。まだ夜は肌寒い季節だし。オレの夜着は、サイズが合わないし。てか、一着しか残ってない。
そこで思い出したのは、ミーカ姉上の嬉々とした表情。……そうか、アレがあったのか。
「……あぁ、くっそ!
まさか本当に使うはめになるとは……!!」
つかつかとオレの衣装のクローゼットのところに向かうと、下の方の板の一部を外す。そこにあるのは、木製のペダル。オレは苛立ち紛れに力一杯踏みつけた。
──ガゴンッ……ゴゴゴ……
オレの普段着や、変装着、訓練着がかかった部分が回転して裏側に引っ込む。実はこれ、からくり扉なのだ。そして代わりに現れたのは──女性用の夜着。
ネグリジェ、といってもいわゆる……その、エr(ごほんごほん)やっぱなんでもない、とにかくそういった目的のではなく純粋に寝るときに着られるものだ。
生地も機能性抜群の高級タオル地だし、たとえ汗ばんでも問題ない代物だ。
まぁ、病衣として扱ってもいいだろう。
……そもそも、なんでこんなものがオレの部屋にあるかというと、ミーカ姉上のおふざけである。
なんでも、兄たちに物語(いわゆる御伽噺ではない方、ドロドロしてると尚良し)の王子のような浮わついた話がなく、つまらないからオレにそういったことを期待しているということだった。
一体、元引き篭りに何を期待してんだよ……。
「……役には立ったけどよ」
なんとも複雑な気分だ。
さぁ、治療は終わった。
といっても、治癒魔法をかけるだけだったし、ラーミナにはほとんど外傷もなかったんだよな。なんで倒れたんだろ?
ま、とにかくオレも少し休もうかな。
いくらオレが魔力を消費しにくいとはいえ、さすがにあれは骨が折れたし、正直眠い。
昨日の今日で公務も出来たもんじゃないだろうから、きっと下っ端や後回しでも支障のでない役職のやつは数日間は休みになるだろう。
逆に騎士団は大忙しになる。いや、兄上たちは全員忙しいだろうな。オレはまだ成人してないからあまり仕事が回ってこないのだ。
そして、おそらくあの人は“休む”ということは知らないだろうな……。
おっと、でもこのまま寝るのはまずいか。この部屋、極稀に女官が入ってくることがあるのだ。……目的は、まぁ区々なんだが。
その女官に部屋に女性がいると伝わると、女官長にもバレる。確実に。
あの人、オレをいまだにぼんくら扱いするから苦手なんだよなぁ。しかも、正妃様にチクるし。噂に尾ひれと角までつけて。
ゼッッッタイいい顔されないよな……。
あ、内鍵もかけられないことはないんだが、マスターキーは女官長が持ってるから意味はない。
仕方ないけど、魔法結界を張っておかなきゃな。効果は、隠蔽と感知と魔法封じ。これで黒魔法使い以外には見つからない。
黒魔法使いは少ないしな、身内だとハルコスぐらいか。ここには来ないだろうし、そもそも連れてきたとき鉢合わせたから大した問題ではない。あいつは察しがいいから。
あぁ、でもこうしてラーミナと同じ部屋にいるのもなんだか悪い気がするな……。でも経過観察したい。容態が急変したら困るし。
……部屋の隅に、ソファを持ってこよう。たぶん物置にあったはずだ。えーと……ほら、やっぱりな。
やれやれ、これで少しは落ち着けるか。まぁでも、落ち着かないのは、オレだけなんだが。
なぁ、ラーミナ。目が覚めたら、話したいことがある。
そう、たくさん……ある……ん、だ。
(────やっと眠ったわ、彼)
(────うん。でもぉ、彼もラーミナちゃんも、お疲れだしぃ。今回はやっぱ、やめとこぉ?)
(────そう、だよ。今は、休ませて、あげよ)
(────そうね、会うのはまた今度ね)
つい勢いでラーミナを自室に連れてきてしまったが、この先どうするかは決めてない。まぁ、一応理由はあるのだが。
「……とに、かく!血塗れなのはダメだよな。
後は怪我の治療と……」
幸いオレの部屋の床は、毛足の長いカーペットで覆われている。必要以上にモコモコなのは、オレの趣味だ。素材は魔獣の毛皮。
乾きかけているとはいえ、彼女をこれから寝かせるベッドを血で汚すわけにもいかないから、一時的に床で待っててもらおう。
……一応、予備のシーツを敷いた上に。
クローゼットから金盥を取り出す。いつからあるのは分からんが、あることだけは知ってたんだよなぁ。ま、役立つときが来るとは思ってなかったけどな。
おっと、意識が飛んだ。とにかく、金盥に魔法でお湯をためて、箪笥からタオルを取り出す。
……で、ここでなんだが。
「服、どうしようか……」
傷の治療にも、清潔面でも、身体を拭かなきゃ始まらない。それは充分に理解している。
でもさ、年頃の女の子──それも初恋の相手──を脱がすのって、ちょっと常識的にどうなのか。
んー、でも事情があれだからなぁ。今更誰かを呼ぶわけにもいかないし……。しゃーない、覚悟を決めよう!
「……ごめん、ラーミナ。後で弁償する」
べっとりと魔獣の血で身体に張りついてしまった服を、風邪魔法で慎重に剥がしていく。……さすがに直接触れるのは気が引けるし、下着までとらなければセー──
(いやいや、アウトだろ!)
と、とにかく今回は見逃してもらわなければ!……えぇい、ままよ!!目を瞑ってもこれくらいはできる!
だが、剥がした服はとてもじゃないけどもう着れる代物ではなくなっていた。ところどころが破れて解れて、ただの黒い布切れになってしまっている。
一応、身体は拭いたけど(もちろん魔法で、直では触れてないぞ!)、下着のままベッドに入れるのもなぁ……。まだ夜は肌寒い季節だし。オレの夜着は、サイズが合わないし。てか、一着しか残ってない。
そこで思い出したのは、ミーカ姉上の嬉々とした表情。……そうか、アレがあったのか。
「……あぁ、くっそ!
まさか本当に使うはめになるとは……!!」
つかつかとオレの衣装のクローゼットのところに向かうと、下の方の板の一部を外す。そこにあるのは、木製のペダル。オレは苛立ち紛れに力一杯踏みつけた。
──ガゴンッ……ゴゴゴ……
オレの普段着や、変装着、訓練着がかかった部分が回転して裏側に引っ込む。実はこれ、からくり扉なのだ。そして代わりに現れたのは──女性用の夜着。
ネグリジェ、といってもいわゆる……その、エr(ごほんごほん)やっぱなんでもない、とにかくそういった目的のではなく純粋に寝るときに着られるものだ。
生地も機能性抜群の高級タオル地だし、たとえ汗ばんでも問題ない代物だ。
まぁ、病衣として扱ってもいいだろう。
……そもそも、なんでこんなものがオレの部屋にあるかというと、ミーカ姉上のおふざけである。
なんでも、兄たちに物語(いわゆる御伽噺ではない方、ドロドロしてると尚良し)の王子のような浮わついた話がなく、つまらないからオレにそういったことを期待しているということだった。
一体、元引き篭りに何を期待してんだよ……。
「……役には立ったけどよ」
なんとも複雑な気分だ。
さぁ、治療は終わった。
といっても、治癒魔法をかけるだけだったし、ラーミナにはほとんど外傷もなかったんだよな。なんで倒れたんだろ?
ま、とにかくオレも少し休もうかな。
いくらオレが魔力を消費しにくいとはいえ、さすがにあれは骨が折れたし、正直眠い。
昨日の今日で公務も出来たもんじゃないだろうから、きっと下っ端や後回しでも支障のでない役職のやつは数日間は休みになるだろう。
逆に騎士団は大忙しになる。いや、兄上たちは全員忙しいだろうな。オレはまだ成人してないからあまり仕事が回ってこないのだ。
そして、おそらくあの人は“休む”ということは知らないだろうな……。
おっと、でもこのまま寝るのはまずいか。この部屋、極稀に女官が入ってくることがあるのだ。……目的は、まぁ区々なんだが。
その女官に部屋に女性がいると伝わると、女官長にもバレる。確実に。
あの人、オレをいまだにぼんくら扱いするから苦手なんだよなぁ。しかも、正妃様にチクるし。噂に尾ひれと角までつけて。
ゼッッッタイいい顔されないよな……。
あ、内鍵もかけられないことはないんだが、マスターキーは女官長が持ってるから意味はない。
仕方ないけど、魔法結界を張っておかなきゃな。効果は、隠蔽と感知と魔法封じ。これで黒魔法使い以外には見つからない。
黒魔法使いは少ないしな、身内だとハルコスぐらいか。ここには来ないだろうし、そもそも連れてきたとき鉢合わせたから大した問題ではない。あいつは察しがいいから。
あぁ、でもこうしてラーミナと同じ部屋にいるのもなんだか悪い気がするな……。でも経過観察したい。容態が急変したら困るし。
……部屋の隅に、ソファを持ってこよう。たぶん物置にあったはずだ。えーと……ほら、やっぱりな。
やれやれ、これで少しは落ち着けるか。まぁでも、落ち着かないのは、オレだけなんだが。
なぁ、ラーミナ。目が覚めたら、話したいことがある。
そう、たくさん……ある……ん、だ。
(────やっと眠ったわ、彼)
(────うん。でもぉ、彼もラーミナちゃんも、お疲れだしぃ。今回はやっぱ、やめとこぉ?)
(────そう、だよ。今は、休ませて、あげよ)
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