異世界で勇者兼聖女なりました!……が、現在ドラゴンにストーカーされてます!?

嘉藤 静狗

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第0章 『辞職からの転生』編

とある青年の心配

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 ──清明さやか姉さんが、死んだ。

 それを聞いた瞬間、俺の意識はブラックアウトした。





 俺の名前は勇谷いさみや 悠音ゆうと。漢字はアレだが、歴とした男だ。


 俺には、二歳上に姉が一人いた。
 ……ちなみに母は俺が五歳の時に、そして父は姉の成人を見送るように亡くなっている。

 以来、この七年間は姉弟二人で支え合うように生きてきた。一緒に暮らしてたワケじゃないけど、互いに面倒を見てくれるような相手──つまり、恋人とか──がいなかったから、定期的に顔を合わせていた。

 ……でも、姉が死んだから、俺は本当に独りぼっちになってしまった。


 姉の清明は、基本的にお人好し。頼まれたら、断れないタイプの人間だ。
 だから、死因が過労による心臓麻痺と聞いても、違和感はなかった。


 上司に無理を言って、駆け込んだ病院──の、霊安室。
 そこにいた姉の遺体は、傷も汚れもなく綺麗なまま。まるで、眠っているかのようだ。……身体が、冷たくなければ。
 ただ、最後に会ったときに比べると、いくらかやつれていた。
 父が生きていた頃は、むしろぽっちゃりマシュマロ系だった姉。この頃は会うたびに痩せていたけど、これは……あんまりだ。


 昔からそうだ。
 あの姉は、本当に人を頼ることを知らない。……そういうところが父そっくりだった、 見た目も中身も。


 そんな姉を助けたくて、俺は姉の家に近い今の勤務先に入った。……のに、肝心なときに出張で出払ってたとか。俺、本当にタイミングわりぃな。

「……これから、どーすっかなぁ」

───なぁ、姉さん。

 姉の葬式が終わった、今。
 唐突に何もかもを失くした気がして、俺は茫然とする他なかった。


 だから──これは、何の嫌がらせだ?



 ===*===*===*===*===

───拝啓、我が愛しの愚弟へ

 新緑が青々と繁る季節になりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
 私は、そちらではおそらく死んだことになっていることでしょう。

 さて、悠音がこの手紙を読んでくれてると言うことは、あの方がちゃんと約束を守ってくれたことかと思います。よかった。
 ……本当は渋られたんだけどね。でも、悠音にだけは、ちゃんと事情を知っててもらいたかったから。

 □月×日。
 確かこの日が、私の命日になっているはず。でも、私は生きていたんだ。……最初の時間ではね。
 詳しい事情は省くけど、私は本来なら私は死んでいたところを、偶然にも生き残っていたそう。スゴいでしょ?
 でも、そのまま私が生きていると、どうも世界に及ぼす影響が強すぎるらしい。最悪、地球滅亡とか。
 だから、本来のシナリオに戻すことを条件に、私は転生することになったんだ。
 あ、心配しないでね?チートスペックは、ちゃーんと準備してもらったから。……と言っても、これ書いてる今は実感ないんだけど。変じゃなきゃいいなぁ。

 私は、そちらの世界では死んだ。……けど、これからは異世界で生きていく。
 この先、悠音に会えなくなるのは正直、寂しい。
 でも、こうなった以上は、今いる場所で生きなくちゃ。

 だからさ、悠音。
 私の愛すべき、愚弟。

 泣いてないで、前を向いてね。アンタは、心配しいだけど。姉さんは、むしろアンタの方が心配だわ。
 悠音は昔から他人ひとに依存する傾向があったから……よけい、ね。

 悠音、悠音。私の大切な弟。
 強く、しぶとく、長生きしてね。お願いよ。

 そして、輪廻転生の先のどこかで、また家族になれならいいな。

貴女の姉、清明より


追伸 この手紙を届けた者より

 貴方のお姉さんは、無事に異世界に転生しました。
 ……と言っても、肉体情報はこちらのものをそのまま流用しているので、ほぼ転移と言っても過言ではない状態です。名目上の親はボクですが、彼女は何も変わってません。容姿も、性格も。
 ……あ、でも。魔法が使えるようになったのと、体質──太りやすいのは、変わりましたね。うん、そこだけかな?

 だから、安心してください。
 彼女は、きっと元気にやっていけますから。

 ===*===*===*===*===


 宛名が姉さんの名前だから、つい読んでしまった。自室に引きこもり、誰にも見せないように、気づかれないように。ひっそりと。
 嫌がらせか、悪戯か。最初はそのどっちかと思ってた。

 でもこれは、紛う事なき姉の文章だ。
 ……ワープロで打ち出したのか、筆跡は分からなかったけど。でも、基本は真面目なのに、ところどころで何処か間抜けているのは、姉の文の特徴だった。
 この内容をそのまま信じると、姉は別世界で生きているらしい。……遺体を見て、遺骨も荼毘にした後だから、にわかには信じがたいが。
 あの姉ならやりかねない。

 そして、最後の追伸の部分。
 これを書いたのが、きっと文中に出てくる『あの方』なんだろう。……姉が好かれそうなタイプだな。

 清明姉さんは、なぜか小さい頃から変人に好かれやすかった。
 その変人たちは、決して悪い人ではないのだが──こう、あれだ。浮世離れしていると言うか、孤立しやすそうな性格の人ばかりだった。あ、一匹狼もか。

 清明姉さんは、この人(?)が名目上の親になっていることを知ってるんだろうか?
 ……いや、知らないだろうなぁ。そういうところ、あの姉は抜けてるし。

 でも親なら、どうかお願いだ。
 清明姉さんが、変なのに引っ掛からないように見守ってほしい。鈍いし、恋愛初心者だから。


 ……って、やっぱり。
 どんなに姉さんが俺を頼りなく思ってても。結局はどこへ行っても、俺に心配されるんだよ、姉さんは。

「……姉さんこそ、今度は長生きしろよ」

 その瞬間、最後の涙がほろりと頬を伝っていく。
 俺の呟きは、窓向こうの夕空に浮かぶ一番星だけが聞いていた。
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