異世界で勇者兼聖女なりました!……が、現在ドラゴンにストーカーされてます!?

嘉藤 静狗

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第1章 『最初の街』編

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「───昨晩、私にが下りました。
 ……『教会には行かず、直ちに《魔王》討伐に出るように』とのことです」
「そう、か……」

 部屋に入って早々に私がそう言うと、ギルドマスターは少しホッとしたようだった。ま、自分で決めるよりは楽だもんね。
 ……余談だけど、昨日のアレを神託って言うのは間違いじゃないはず。なんせイリオスはここじゃ神様なんだし。嘘じゃない……よね?

「出来れば、今日中にはここアトラスヴィルを出たいと思ってるのですが……」
「何か問題が……?
 ───あぁ、報酬でs……いや、報酬か。了解した」

 またも敬語を使おうとしたギルドマスターを、私は無言の睨みで牽制する。……慣れてもらっちゃ、困るんだよ。


 さてさて~、報酬はーっと……あ、金貨一枚と大銀貨と銀貨五枚──日本で言うところの、十五万五千円──だ!ん?よく見たら、霊薬も一つある!

 わー、思ったより稼げたなぁ♪
 さすが、ギルドマスター預かりの依頼なだけあったね!これで、しばらくはお金に困らないかな。

「だが、変質したスライムの欠片は、俺じゃ価値が判断しきれないから本部に送ってしまってな……。
 その結果が出るまでは、報酬は保留にしてくれないか?」

 ほへ?なんぞやそれ??
 ……そんなん、依頼書にはなかったよ。だって、成功報酬はお金、追加報酬は霊薬でしょ?
 その他には、なーんも書いてなかったはず。

「お嬢、ギルド報酬のことは知らないか。
 ……無理もない。ベテランでも、滅多なことじゃ貰えないからな」


 ───ギルドマスター曰く……ってこのフレーズ前にも使ったな。


 まぁ、いっか。
 とにかく、ギルド報酬とは、特殊なアイテムの入手時や追加報酬以上の手柄を立てた冒険者に対して、ギルドから渡される報酬のことを指す、らしい。
 ちなみに通常の依頼は、依頼者から支払われる。だから、全く別物なんだって。

 で、今回の私のパターンは前者──特殊なアイテムの入手に該当する。
 何だかんだ言ってるけど、要は買い取りだ。素材によっては下手なところに買い取られると、後で問題になるからね。犯罪に使われたりとか。

 そして、私の作った──作ってしまった、とも言う──変質したスライムの欠片は、査定に時間がかかっているようだ。アイテムは質によって価値が変わるらしく、特殊なアイテムほど鑑定基準が厳しい。変質したスライムの欠片はそこまででもないんだけど、今回は数が多かったのも関係してるそうな。
 ……渡したのは、半分だけなんだけどね。

「分かりました。ギルド報酬は後日で構いませんよ。
 ……ただ、保証書ぐらいは欲しいです」
「おぅ、そりゃ勿論だ。ここに用意してあるぞ、既に」

 そう言って、ギルドマスターは一枚の紙を手渡してきた。羊皮紙より分厚くて、少し堅い。大きさも……折り紙ぐらいだ。
 どうやら、魔力で加工してあるっぽい。

「それに、お嬢の血と魔力を流してくれ。そうすれば、お嬢以外には使えん。
 これがあれば、どこのギルドでもギルド報酬が受け取れるぞ」

 あー、話が早くて助かる。
 貰える物なら貰いたいし、かといって拘束され続けるのも困るからね!

 さっそくギルドマスターから針を貰って、人差し指に小さく傷をつける。それから、紙の真ん中に、血とそこに込めた魔力を刷り込むように押し付ける。と、紙は淡く発光して、魔法陣が完成した。
 後は針に着いた血と、指の傷を【水】魔法でぱぱっと処置して……完了っ!


 報酬の件も終わったし、これで《アトラスヴィル》でやり残したことはもうないな!
 じゃ、さっさと《魔王》討伐──の、前に。

「ギルドマスター、一つお願いがあります。
 ……私のことは、公表しないでください」
「なぜだ?『勇者』、『聖女』の《使命職ロールジョブ》持ちと言っておけば、どこに行っても優遇されるのに」

 やっぱりかぁ。一応、確認しておいて正解だった。
 一般的にはそうかもだけど、こっちにも事情があるんだよね。主に……教会に目をつけられたりとかさ。邪魔されるの、嫌だし。

「───訳ありか。そう言えば、教会に行くのも拒否してたしな……。
 よし、分かった。お嬢のことは、俺の胸に仕舞っておこう」
「ありがとうございます、ギルドマスター」

 うんうん、よかった~。これでもう、何の憂いもないよ。そろそろおいとましようか、と私が腰を上げた。そのとき、

「お嬢、俺はギュミルだ」
「───はぃ?」
「俺のあざなは、《水虎すいこ》のギュミルと言う。……そう、呼んでくれ」

 ギルドマスターは、他にもいるからな。と、ギルドマスター──もとい、ギュミルさんは言った。
 えぇと……名前(正しくは、あざなだけど)呼びの許可をくれたってことは、少しは信頼してもらえた、のかな?

「お嬢───ハルア・キラ嬢の行く道に、穏やかな夜が来るように」
「……はい、ギュミルさんの上にも優しい朝日を願います」

 この世界での、別れの前の決まり文句。
 現在、この世界で唯一の神であり──主神たる《イリオスヴァスィレマ》は空に関する名前を持つ神。だから、文言に空を混ぜて言うことで、《イリオスヴァスィレマ》に祈り、加護を望むそうだ。

 本人(?)は、あまり使われなくなったと言ってたけど、ギュミルさんは知っていたみたい。……よかったね、イリオス。

 私はその場でギュミルさんに深くお辞儀すると、踵を返し、部屋を出る。
 一人で出てきた私に受付のお姉さんは、一瞬目を丸くしてた。美人の可愛らしいそんな様子に、私はほんのりと苦笑してしまった。

「行ってきますね」
「……はい、お気を付けて」

 なんでもないような、ちょっとした会釈だけをして。私はそのまま、ギルドをあとにする。


 そしてその後、一度も振り返ることなく初めての町──《アトラスヴィル》を去っていったのだ。
 ……あ、嘘です。途中でポーション飴買いました。大瓶で各五個ずつ。えへへ。





 ───冒険者ハルア・キラが、《勇聖ゆうせい月虹姫げっこうき》として名を上げた後に、この地アトラスヴィルに一つ謳われるようになる話があった。

 曰く、城壁より少し離れた場所に、ハルア・キラが初めて魔法を使った丘がある。
 当時、その丘には一面のスライムがいて、町に向かう者をことごとく阻んでいた。
 物流が滞り、困り果てた人々。そして、そこにふらりと表れた彼女。
 彼女は依頼を受けるや、すぐさま丘に氷と雷の雨を降らせ、瞬く間にスライムの群れを殲滅したのだ。
 その後、ハルア・キラは日を置かず町を後にした。
 ……大量のポーション飴だけを手に。


 以来、ハルア・キラの好物として『ポーション飴』が周知され、その有用性が認められた。
 やがて、『ポーション飴』の製法は大陸中に広まり、多くの人々の命を救っていくことになるのだ──。
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