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S(藍野視点
トラウマⅡ
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父親が気難しくても、両親が変態的な性行為をしていても、経済的に安定していれば、家庭は表明上は崩壊しないはずだった。
けれど、ある日を境に、俺の家は坂道を転がるように堕ちていく。
父が会社で横領の容疑をかけられたからだ。
刑事告訴は免れたようだが、当然、父は会社を解雇となり、返済の義務を課せられた。
「俺はやってないんだ、嵌められたんだ」
それまで、家での飲酒は無かった父が、借金まみれになってからはアル中同然、誰に言うわけでもなく独り言のように冤罪を訴え、浴びるように飲むようになった。
サディストが酒乱になったのだから、その暴力は命の危機を感じるほど激しくなった。俺も何度も殴られたし、投げ飛ばされた。
おまけに無職だからずっと家にいる。
母と俺の地獄のような日は続いた。
外で働き始めた母の収入は、借金返済と父の酒代に消えていき、生活は困窮を極めた。
「離婚してください」
ある日。
リビングでうたた寝していた父に、母が耳元に語りかけた。
テーブルには判を押した離婚届け。母の背後には出ていく用意をした俺がいた。
黙って逃げればいいのに、と子供ながらに思ったが、まだ未練があったのか母は最後まで父に従順だった。
「……んだと?」
うっすら目を開けて、床に正座する母を認めると、父は案の定、思い切り平手打ちをした。乾いた音がリビングに広がった。
「今まで世話になっておきながら、俺が窮地に立たされたら捨てるのか? 薄情者!」
倒れた母に跨り、髪を引っ張る。その時の父の顔は金剛力士のようで殊更恐ろしかった。
母の背中や尻を蹴り上げた。今まで見たことのないほどの激しい暴力が目の前で繰り広げ、俺は萎縮を通り越してちびりそうになった。
心臓がドクドクとし、身体中のアドレナリンが出ていた。しかし、このままでは死んでしまう、と不安にかられた俺は咄嗟にテーブルにあった酒の瓶を掴んでいた。
「母さんを虐めるな!」
そう叫んで、父の後頭部を目掛けて振り下ろした。
けれど、ある日を境に、俺の家は坂道を転がるように堕ちていく。
父が会社で横領の容疑をかけられたからだ。
刑事告訴は免れたようだが、当然、父は会社を解雇となり、返済の義務を課せられた。
「俺はやってないんだ、嵌められたんだ」
それまで、家での飲酒は無かった父が、借金まみれになってからはアル中同然、誰に言うわけでもなく独り言のように冤罪を訴え、浴びるように飲むようになった。
サディストが酒乱になったのだから、その暴力は命の危機を感じるほど激しくなった。俺も何度も殴られたし、投げ飛ばされた。
おまけに無職だからずっと家にいる。
母と俺の地獄のような日は続いた。
外で働き始めた母の収入は、借金返済と父の酒代に消えていき、生活は困窮を極めた。
「離婚してください」
ある日。
リビングでうたた寝していた父に、母が耳元に語りかけた。
テーブルには判を押した離婚届け。母の背後には出ていく用意をした俺がいた。
黙って逃げればいいのに、と子供ながらに思ったが、まだ未練があったのか母は最後まで父に従順だった。
「……んだと?」
うっすら目を開けて、床に正座する母を認めると、父は案の定、思い切り平手打ちをした。乾いた音がリビングに広がった。
「今まで世話になっておきながら、俺が窮地に立たされたら捨てるのか? 薄情者!」
倒れた母に跨り、髪を引っ張る。その時の父の顔は金剛力士のようで殊更恐ろしかった。
母の背中や尻を蹴り上げた。今まで見たことのないほどの激しい暴力が目の前で繰り広げ、俺は萎縮を通り越してちびりそうになった。
心臓がドクドクとし、身体中のアドレナリンが出ていた。しかし、このままでは死んでしまう、と不安にかられた俺は咄嗟にテーブルにあった酒の瓶を掴んでいた。
「母さんを虐めるな!」
そう叫んで、父の後頭部を目掛けて振り下ろした。
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