【虐げヒロインはドSエリートに翻弄される】〜囚える鎖を放すか否か(仮)

光月海愛(こうつきみあ)

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本当のS(藍野視点

本当の別れ

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 学部と大学院の数年でMBAを取得し、東京に戻ってから【アジャストコンサルティング】に就職した。
 会社で実績を上げた俺は、マネージャー手前でありながら年収は1000万を優に超えた。
 世間からは勝ち組だと言われたが、それは俺の過去を知らない人間だけ。
 女もハイスペだのスパダリだのと俺を持て囃し、付き合えば婚期を逃すまいと必死になる。
 なので女には不自由しなかったが、俺の表面しか見ていない奴に本性はさらけ出せなかった。
 そんな時、

「雄星、お父さんが危篤らしいのよ」

 父が入院していると母に聞いた。
 アル中の進行から脳の萎縮が起こり、まともに歩く事も喋る事も出来なくなっていたらしい。

 それでもアパートで一人住まいを続け、依存症対策センター等の専門機関にも頼らず、脳梗塞で倒れていた父を発見したのは家賃滞納の注意をしに来た大家だった、と――

「プライドの高い人だったから」

 病院へ向かう途中、助手席で母が呟いた。

 離婚しても尚、家族として病院に呼び出されたのは二人が連絡を取り合っていたから。
 絶縁してると思ったのに。

 母に騙された感が拭えないまま、父の病室へ行くと、ずっと会っていなかった伯父さんもいた。
 父よりかなり歳上なので、お祖父ちゃんのようだった。
 母に対して、「別れたのにすまんね」と頭を下げていた。

「春樹はずっと後悔してたんだよ」

 伯父さんは、父が梅野で働いたばかりに横領の濡れ衣を着せられ人生を狂わせたと嘆いていた。
 父も酔っぱらってそんな事言っていたっけ。
 当時は俺も母さんも恐怖でそれどころじゃなかったし、戯言だと思っていたけど――

 酸素吸入をし、もういつ死んでもおかしくなかったのに、父が突然目を開けて、意識を取り戻した。

 医学的には中治り現象(終末期の一時的現象)と言うらしい。今まで呂律さえ回ってなかったらしいのに、

「雄星」

 と、小さいが、ハッキリと俺の名前を呼んだ。

 母に促され俺は父の側に寄った。

 母を奴隷のように甚振り、支配していた頃の面影はなく骸骨のような顔だった。

「……何?」

 流石に哀れで、俺は腰を落として耳を傾けた。「大きくなったな」でも、「悪かった」でもなく、最期に父が言い残した言葉は――

「俺のようになるなよ」

 だった。
 涙も出なかった。

 でも、父の性分を少なくとも引き継いでる俺は、それなりに深く受け止めた。

 だから、日常では穏やかで柔和な印象を持たれるように心掛けた。
 父がそうだったとは言わないが、サディストを通り越してサイコパスにならないように。

 なるべく他人を傷付けずに自分の欲を満たすには、やはり真性のМとの出会いが必要だった。














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