【虐げヒロインはドSエリートに翻弄される】〜囚える鎖を放すか否か(仮)

光月海愛(こうつきみあ)

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策略

願い

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「……部長?」

 回された逞しい腕は、逃げる隙を与えないほどしっかりと私をホールドしてしまっている。
 家に居るはずの凱也に見られたら、また嫌味を言われる。解きたいのに、更に部長の手に力が込められた。

「取り返しのつかなくなる前に、明日美さんを引き留めて置きたいんだ」

「……引き留めるって、私はどこにも行けませんよ?」

 梅野家にあの人達がいる限り、私は身動き取れない。
 会社が買収され、あの人達が追放されれば、自由になれる可能性もあるし、逆に全てを失う可能性もある。
 それでも、藍野さんに委ねたいと思っている。
 例え、彼に仕事以外の思惑があったとしても。

「気持ちはあの男の所へ行ってるだろ?」

「だとしても、部長には関係ないじゃないですか」

「あるよ、俺はずっと明日美さんの事を好きだったんだから」

「え」  

 ようやく部長の力が弱まり、私はそっと部長の顔を見た。ポーチライトで浮かび上がった表情は何処か切ない。

 竹林部長が、私の事を好き?
 誰にでも優しいから、親切にされても特別だなんて思わなかった。

「じゃあ、どうして藍野さんとの付き合いを勧めたんですか?」

「お似合いだと思ったんだよ。見た目も、年齢的にも。藍野さんの素性知らなかったから、外部の彼なら明日美さんの限られた世界を広げてくれるだろうって。好きな人には幸せになってほしいものだろ」

「……」

 わからなかった。
 竹林部長の口から紡ぎ出される言葉が本心からなのか、それとも、言わされてるのか。

 ――そうだ。

 この人は、常務である継母にヘッドハンティングされてきた取締役員だ。
 きっと、私を藍野さんから引き離すように指示を出されたに違いない。

「なら、放っておいてください。私がたとえ藍野さんに恋をしていたとしても、会社がマイナスになることはしません」

 かと言って、プラスになることもしない。今までそうだったように。

「わかった」
 
 諦めた口調で、竹林部長が私を解放する。

「じゃあ、気を付けてお帰りください」

 しかし、ドアを開けた途端、部長もすかさず中に入ってきてしまった。

「……な、なんですか?」

 今日は本当におかしい。
 こんなの竹林部長らしくない。
 気迫に押されて、私は式台に腰を落とした。その前で部長が跪く。さっきまでの強引さとのギャップに戸惑う。
 
「明日美さんがどうしても、彼を選ぶというのなら、最後に俺の願いを聞いてくれないか」

「……え?」

 憂いた瞳を見ていると、胸が苦しくなる。

 藍野さんが現れるまで、ずっと片思いしてきた、頼れる男性からの願いとは―――








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