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ほんとうの姿
暗雲
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藍野さんがUMENOから引き上げてから、私への連絡は途絶えた。
「帰りたくない」なんて我儘言ったから引いたのか、それとも、コンサルタントの仕事が終わったら、私は用済みなのか。
利用しようとしたけれど、それほどの価値が無かったのかもしれない。
そんな自己否定が募り、ますます仕事への意欲が落ちていた頃――
「明日美さん」
ある午後、竹林部長に呼ばれた。
「はい」
飲み会後の″あの件″から、業務以外で話すことがなくなっていたので、何となく緊張した。
竹林部長も強張った表情で、やや声を落として話す。
上野さん達はランチからまだ戻っていないが、何かまずい話だろうか?
「藍野さんから経営陣、もしくはM&A担当者との面談依頼のメールが来てるんだ」
「……M&A……」
「そして、彼の会社名が【アジャストコンサルティング】じゃなくなって、【グッドパートナーズ】になってる」
「そう、ですか」
いよいよ、だ。
「調べたら、藍野さんはアジャストコンサルティングはうちとの契約が終わってから退職してるみたいだね」
UMENO買収の件が動き出した。
「……明日美さん、彼から聞いてる?」
買収しようとしてる会社がいること、彼が別にM&Aのアドバイザーとして働いているのは聞いてるが、具体的な話は聞いていない。
私は、小さく首を横に振った。
「明日美さん、嘘が下手だな」
呆れたような顔をされたが、私から話すことは何もない。
藍野さんのメールは雅夫兄さんや継母に転送され、外出していた雅夫兄さんは鬼のような顔で戻って来た。
「母さんは?」
「常務は本日は出社されてません」
部長が答えると、雅夫兄さんは舌打ちしていた。そう言えば今日はネイルサロンへ行くと言っていたはず。
「明日美、ちょっと来い」
どすの利いた声で社長室に呼ばれた。
きっと尋問される。
まさか、社内で暴力はないと思いたいけれど、今の雅夫兄さんは過去最高にピリついている。
兄が先に社長室に入ると、背後で事務員達がヒソヒソと話していた。
「社長の奥様と喧嘩してるみたいよ」「葉月さん、家出てるんだって」「飲み会の時普通だったじゃん」
そう。
雅夫兄さんが雇った探偵事務所から葉月さんが浮気していると報告があったらしく、喧嘩し、今は別居となっているのだ。
それと入れ替わるように義理妹の瑠衣が家に帰って来ている。
暗雲立ち込める梅野家と、うまく行かない恋。
これ以上悪い事が起こりませんように。
「……痛っ……」
社長室に入った途端、スマホを投げつけられた。頭に当たったスマホはふかふかの絨毯の上に無傷で落ちた。
「藍野は何しようとしてんだよ?」
兄に拾ったスマホをすかさず渡す。
「分かりません」
「なわけないだろっ?!」
外に漏れそうなほどの大きな声を出して、雅夫兄さんは私の胸ぐらを掴んだ。シャツのボタンが一つ飛んで行った。
「俺が探偵事務所使って、葉月の事だけを調べてると思うか?」
赤い目には憎悪をさえ窺える。
「……な、にを?」
調べたの?
「お前と藍野が会ってるの、ちゃんと証拠押さえてたんだからな」
「帰りたくない」なんて我儘言ったから引いたのか、それとも、コンサルタントの仕事が終わったら、私は用済みなのか。
利用しようとしたけれど、それほどの価値が無かったのかもしれない。
そんな自己否定が募り、ますます仕事への意欲が落ちていた頃――
「明日美さん」
ある午後、竹林部長に呼ばれた。
「はい」
飲み会後の″あの件″から、業務以外で話すことがなくなっていたので、何となく緊張した。
竹林部長も強張った表情で、やや声を落として話す。
上野さん達はランチからまだ戻っていないが、何かまずい話だろうか?
「藍野さんから経営陣、もしくはM&A担当者との面談依頼のメールが来てるんだ」
「……M&A……」
「そして、彼の会社名が【アジャストコンサルティング】じゃなくなって、【グッドパートナーズ】になってる」
「そう、ですか」
いよいよ、だ。
「調べたら、藍野さんはアジャストコンサルティングはうちとの契約が終わってから退職してるみたいだね」
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「……明日美さん、彼から聞いてる?」
買収しようとしてる会社がいること、彼が別にM&Aのアドバイザーとして働いているのは聞いてるが、具体的な話は聞いていない。
私は、小さく首を横に振った。
「明日美さん、嘘が下手だな」
呆れたような顔をされたが、私から話すことは何もない。
藍野さんのメールは雅夫兄さんや継母に転送され、外出していた雅夫兄さんは鬼のような顔で戻って来た。
「母さんは?」
「常務は本日は出社されてません」
部長が答えると、雅夫兄さんは舌打ちしていた。そう言えば今日はネイルサロンへ行くと言っていたはず。
「明日美、ちょっと来い」
どすの利いた声で社長室に呼ばれた。
きっと尋問される。
まさか、社内で暴力はないと思いたいけれど、今の雅夫兄さんは過去最高にピリついている。
兄が先に社長室に入ると、背後で事務員達がヒソヒソと話していた。
「社長の奥様と喧嘩してるみたいよ」「葉月さん、家出てるんだって」「飲み会の時普通だったじゃん」
そう。
雅夫兄さんが雇った探偵事務所から葉月さんが浮気していると報告があったらしく、喧嘩し、今は別居となっているのだ。
それと入れ替わるように義理妹の瑠衣が家に帰って来ている。
暗雲立ち込める梅野家と、うまく行かない恋。
これ以上悪い事が起こりませんように。
「……痛っ……」
社長室に入った途端、スマホを投げつけられた。頭に当たったスマホはふかふかの絨毯の上に無傷で落ちた。
「藍野は何しようとしてんだよ?」
兄に拾ったスマホをすかさず渡す。
「分かりません」
「なわけないだろっ?!」
外に漏れそうなほどの大きな声を出して、雅夫兄さんは私の胸ぐらを掴んだ。シャツのボタンが一つ飛んで行った。
「俺が探偵事務所使って、葉月の事だけを調べてると思うか?」
赤い目には憎悪をさえ窺える。
「……な、にを?」
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「お前と藍野が会ってるの、ちゃんと証拠押さえてたんだからな」
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