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追い込みと反撃
魔女の犬
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私を見上げる部長の瞳に憐れみが滲む。
「……はい」
「藍野さんとはもう終わったの?」
「それ、答えないといけませんか?」
終わった、なんて、泣きたくなる。
でも、あれから藍野さんからの連絡はないから、本当に利用されただけで終わったのかもしれない。
「いや。ただ、彼の周辺も穏やかじゃなくなると思うから」
竹林部長は、誰もいない社長室の方を見ながら言った。
「社長達も黙ってやられてばかりじゃないからね」
「……どういう意味ですか?……」
藍野さんに悪い事が起こるの?
喉に何か詰まったように、掠れた声しか出なかった。
「藍野さんは過去にもM&Aを手掛けてるけど、違法ギリギリの事もしてるみたいでね」
「……」
あり得るかも、と思った。
私から機密情報を得たように、他でも同じ手口で情報入手して、交渉材料にしたかもしれない。
彼は、人をみる目がある。
どんな人間が自分の言う事を聞くか分かって近付いているのだろう。
「終わってなくても、もう彼には近づかない方がいい。結婚もよほど嫌な相手でない限り、明日美さんにとっては良法だと思う」
「……そう、ですね」
竹林部長は私に幸せになってもらいたいと言った。
それは、私も同じ。
藍野さんは、悲しみや苦しみとは無縁であって欲しい。
その日の夕方遅く。
私は一人になった事務所で、スマホを持って勇気を奮い起こしていた。
藍野さんへ連絡をしたい、ただそれだけ。
けれど、気軽に出来ない時点でやはり恋人同士とは関係性が違ったのだろう。
だから、連絡する口実をくれた竹林部長には感謝している。
【話せませんか?】
メッセージを送ってみる。
しかし、忙しいのか既読にすらならない。
本当は声が聞きたかったけど仕方ない。
【兄達には気をつけてください】
それだけ打って、事務所を出て暗くなった廊下へ出た。
普段は入ることもない常務室の前を通ると、パチンと乾いた音が聞こえた。
――なに?
ドアは綺麗に閉まっておらず、数cmほどの隙間があった。私は何気に立ち止まって中を覗いた。
そして、見たのを後悔した。
中では、職場にふさわしくない事が行われていたからだ。
「どうか、お許しください」
男が床に頭を着けて、女に許しを請うていた。
「もう一度、私にチャンスをください」
「うるさい! せっかく拾ってやったのにこの役立たず!」
しゃがれた声で男を怒鳴りつけているのは、継母の美里だ。
「許して頂けるなら、どんな御奉仕でも致します」
その継母に頭や顔を蹴られているのは、竹林部長だった。
「あ、あぁ、そう。それなら、靴ごとしゃぶりなさい」
冷ややかに、愉快さも滲ませて、継母は部長に命令していた。
部長は顔を上げ、タイトスカートから伸びた継母の足にキスをしていた。
髪を引っ張られても、それさえもご褒美だという顔で、部長は靴を舐めている。
まさか。
二人がそういう関係だったなんて。
衝撃と気持ち悪さで吐気を催し、私は、そっと踵を返した。
「……はい」
「藍野さんとはもう終わったの?」
「それ、答えないといけませんか?」
終わった、なんて、泣きたくなる。
でも、あれから藍野さんからの連絡はないから、本当に利用されただけで終わったのかもしれない。
「いや。ただ、彼の周辺も穏やかじゃなくなると思うから」
竹林部長は、誰もいない社長室の方を見ながら言った。
「社長達も黙ってやられてばかりじゃないからね」
「……どういう意味ですか?……」
藍野さんに悪い事が起こるの?
喉に何か詰まったように、掠れた声しか出なかった。
「藍野さんは過去にもM&Aを手掛けてるけど、違法ギリギリの事もしてるみたいでね」
「……」
あり得るかも、と思った。
私から機密情報を得たように、他でも同じ手口で情報入手して、交渉材料にしたかもしれない。
彼は、人をみる目がある。
どんな人間が自分の言う事を聞くか分かって近付いているのだろう。
「終わってなくても、もう彼には近づかない方がいい。結婚もよほど嫌な相手でない限り、明日美さんにとっては良法だと思う」
「……そう、ですね」
竹林部長は私に幸せになってもらいたいと言った。
それは、私も同じ。
藍野さんは、悲しみや苦しみとは無縁であって欲しい。
その日の夕方遅く。
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藍野さんへ連絡をしたい、ただそれだけ。
けれど、気軽に出来ない時点でやはり恋人同士とは関係性が違ったのだろう。
だから、連絡する口実をくれた竹林部長には感謝している。
【話せませんか?】
メッセージを送ってみる。
しかし、忙しいのか既読にすらならない。
本当は声が聞きたかったけど仕方ない。
【兄達には気をつけてください】
それだけ打って、事務所を出て暗くなった廊下へ出た。
普段は入ることもない常務室の前を通ると、パチンと乾いた音が聞こえた。
――なに?
ドアは綺麗に閉まっておらず、数cmほどの隙間があった。私は何気に立ち止まって中を覗いた。
そして、見たのを後悔した。
中では、職場にふさわしくない事が行われていたからだ。
「どうか、お許しください」
男が床に頭を着けて、女に許しを請うていた。
「もう一度、私にチャンスをください」
「うるさい! せっかく拾ってやったのにこの役立たず!」
しゃがれた声で男を怒鳴りつけているのは、継母の美里だ。
「許して頂けるなら、どんな御奉仕でも致します」
その継母に頭や顔を蹴られているのは、竹林部長だった。
「あ、あぁ、そう。それなら、靴ごとしゃぶりなさい」
冷ややかに、愉快さも滲ませて、継母は部長に命令していた。
部長は顔を上げ、タイトスカートから伸びた継母の足にキスをしていた。
髪を引っ張られても、それさえもご褒美だという顔で、部長は靴を舐めている。
まさか。
二人がそういう関係だったなんて。
衝撃と気持ち悪さで吐気を催し、私は、そっと踵を返した。
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