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追い込みと反撃
彼のオフィス
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家を飛び出し、藍野さんの会社へ向かっていると、電話が掛かってきた。
「もしもし? 明日美?」
――藍野さんだ。
声を聞いただけで、涙ぐむ。
「メッセージ、あれ何?」
しかし、藍野さんはそっけない。
「今、忙しいですか?」
「そうだね、まだ仕事してるよ」
「少しでいいので会えませんか?」
「どうした?」
「お渡ししたいものがあります」
「UMENOの情報? それとも明日美が兄に襲われてる映像?」
「……いいえ」
なんてことのないように言われて、また落ち込みそうになる。
「じゃ、なに?」
「兄が調査事務所に調べさせた、藍野さんに関する報告書です」
ここで、少し間が空いた。
「よく持ち出せたな」
「弟が急病で運ばれて、今、誰も家に居ないんです」
「分かった。じゃあ迎えに行く」
「実は藍野さんの会社の近くに来てるんです」
良く覚えてたな、と言ったのは藍野さんだ。
私は、交流も行動範囲も狭いから、一つ一つの場所や出来事を鮮明に覚えてしまう。
「じゃあ、おいで。間違ってもアジャストコンサルティングには行くなよ」
「わかってます」
ファームではない、彼だけの仕事場へ。
もう、梅野家には戻るつもりはない、そう言ったら藍野さんは、どうするだろう?
暗い空の下、白いオフィスビルが月光を浴びて、ポツンと浮き上がって見えた。
不安と期待を抱え、エレベーターのボタンを押す。
前にここを訪れた時は、まさか藍野さんとこういう関係になるなんて思ってなかった。
三階の事務所のドアに、以前はなかった【グッドパートナーズ】というエントランスサインがあった。
凄いな。本当に独立したんだ。
インターホンを数回押すと、藍野さんが静かにドアを開けた。しかも、ほんの少しだけ。
「先に貰っていい?」
隙間から手を差し出される。
これだけで数回刺されたのと同じくらい傷付いた。
「……その前に確認させてください」
「何を?」
「私は、M&Aの事は良く分かりません。でも、」
ドアの間で、彼の眼鏡が冷たく光っている。本当は優しい人のはずなのに、魂のない人形みたいに見えて怖かった。
私は、躊躇いながらも捨て身で尋ねた。
「この報告書に書かれていたように、性交中の女性へ命に関わるほどの暴力を働いたんですか?」
藍野さんの身辺調査は、主に女性関係を対象としていた。
「もしもし? 明日美?」
――藍野さんだ。
声を聞いただけで、涙ぐむ。
「メッセージ、あれ何?」
しかし、藍野さんはそっけない。
「今、忙しいですか?」
「そうだね、まだ仕事してるよ」
「少しでいいので会えませんか?」
「どうした?」
「お渡ししたいものがあります」
「UMENOの情報? それとも明日美が兄に襲われてる映像?」
「……いいえ」
なんてことのないように言われて、また落ち込みそうになる。
「じゃ、なに?」
「兄が調査事務所に調べさせた、藍野さんに関する報告書です」
ここで、少し間が空いた。
「よく持ち出せたな」
「弟が急病で運ばれて、今、誰も家に居ないんです」
「分かった。じゃあ迎えに行く」
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良く覚えてたな、と言ったのは藍野さんだ。
私は、交流も行動範囲も狭いから、一つ一つの場所や出来事を鮮明に覚えてしまう。
「じゃあ、おいで。間違ってもアジャストコンサルティングには行くなよ」
「わかってます」
ファームではない、彼だけの仕事場へ。
もう、梅野家には戻るつもりはない、そう言ったら藍野さんは、どうするだろう?
暗い空の下、白いオフィスビルが月光を浴びて、ポツンと浮き上がって見えた。
不安と期待を抱え、エレベーターのボタンを押す。
前にここを訪れた時は、まさか藍野さんとこういう関係になるなんて思ってなかった。
三階の事務所のドアに、以前はなかった【グッドパートナーズ】というエントランスサインがあった。
凄いな。本当に独立したんだ。
インターホンを数回押すと、藍野さんが静かにドアを開けた。しかも、ほんの少しだけ。
「先に貰っていい?」
隙間から手を差し出される。
これだけで数回刺されたのと同じくらい傷付いた。
「……その前に確認させてください」
「何を?」
「私は、M&Aの事は良く分かりません。でも、」
ドアの間で、彼の眼鏡が冷たく光っている。本当は優しい人のはずなのに、魂のない人形みたいに見えて怖かった。
私は、躊躇いながらも捨て身で尋ねた。
「この報告書に書かれていたように、性交中の女性へ命に関わるほどの暴力を働いたんですか?」
藍野さんの身辺調査は、主に女性関係を対象としていた。
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