【虐げヒロインはドSエリートに翻弄される】〜囚える鎖を放すか否か(仮)

光月海愛(こうつきみあ)

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SM(藍野視点Ⅱ)

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 今まで付き合ってた(と言えるか曖昧な関係の)女達も、そんな感じで駄々をこねる事はあった。

 だけど、明日美のは違う。
 家に戻っても、ただ従事だけを求められ、疲弊し、癒される時間もないのだろう。

 だからと言って「俺の家に来る?」と軽々しく誘えない。  

 風邪の時のように一時的ならともかく、梅野家から逃亡させるには、俺の家なんて不相応だ。

 それに、まだ大事な仕事が終わってない。
 UMENOの買収が上手くいかない事には、あの家から彼女を救い出すなんて出来ない。

 何より、明日美は、″普通″だった。
 自己否定感は強いが、被虐性は思ったほどない。
 どちらかというとSよりはМというだけで、横暴さや駆け引きに弱く、とにかく流されやすい。

 おまけに純真で無垢だから、調教しようと思えば出来る。
 Sの俺を満足させるM女に仕立て上げるのも可能だった。
 だけど、それは、違うような気がしてきた。



 明日美と距離を置くようになってから間もなく、俺はコンサルタントファームを退職し、M&Aアドバイザー一本で生計を立てていく事にした。


「梅野は二代目から経営不振の兆候があったんだよな。後継者があの息子なら、そう先は長くない」

 面談へ向かう途中。
 羽取ホールディングスの社長が、自信ありげに言った。
 しかし、UMENOの経営陣では交渉がスムーズにいかないと分かっている。
 だからこそ、こちらが優位に立つ必要がある。

「雅夫社長達の弱点は押さえてます。今日の面談次第では、方向性を変えましょう」

 運転席から、そびえ立つUMENOの自社ビルを見上げる。
 メンテナンスを怠ってそうな、鉄筋コンクリートも、このままだと数十年はもたない。
 仕事モードで車から降りたのに、いざビルに入ってしまうと、つい、明日美の姿を探してしまう。

「わぁ、藍野さん、お久しぶりです」「今日はどうしたんですか?」

 顔見知りの社員達に次々に遭遇するも、彼女は見当たらない。

「上野さん、明日美さんは外出?」

「倉庫の片付けしてるみたいですよ」

「……倉庫?」

 何でまた。

 気になったが、約束の時間になり、俺は羽取ホールディングスの社長達と応接室に入った。

 常務は不在。
 雅夫と経理部長の竹林がいた。
 UMENOにはまともな役員が竹林しか居ない。一代目からの有能な重鎮たちは、二代目の時に排除したらしい。それが経営不振に拍車をかけた。

「うちにコンサルタントで入っておきながら、買収の仲介するなんて、非常識だろう」

 雅夫の反発は想定内だ。

「たまたまですよ。それにコンサルタントとしての契約反故をしたのはそちらですし、守秘義務に違反する行為は常駐期間は起こしてません」

「はぁぁ~?!!」


 雅夫の声に、お茶を持ってきた上野がビクッとなる。チラチラと心配そうにしながら退室していた。

「お前、常駐中に俺の妹に手ぇ出して情報聞き出してんだろぉ?」

「何の話ですか」

 とぼける俺に、雅夫はスマホの写真を見せつけてきた。

「これ、明日美だろ? そんで、この車お前のだろーが?」

 隣に座っていた羽取ホールディングスの社長が目を丸くして覗き込む。
 俺は、直ぐに公園での写真だと分かったが、しらばっくれた。

「明日美さんがどうかなんて、顔は隠れてるしこれじゃわからない。どこを見たら分かるんですか?」

 車窓から見えてるのは、乳、ほぼ上半身の裸。

「お兄様だから見慣れてるんですか?」

 俺の邪推が当たったのか、雅夫は顔を真っ赤にして、「こいつは露出狂で風呂上がりも裸でうろつくんだ」とか、「今でも着替えを手伝ってるんだ」とか、その後は訳の分からない事を口走っていた。
 竹林部長も羽取ホールディングスの社長も、ただ困惑して交渉成立なんて程遠かった。

 そして、応接室から出ても明日美は倉庫から戻って無かった。
 オマケに、竹林部長の机の上に【倉庫】のネームタグの付いた鍵が放置されていた。

 ――何で、鍵がここに?

 俺はピンときた。 

 明日美は閉じ込められてる。

 そして、竹林はそれを分かるように俺に見せてるのだ、と。

 竹林が羽取ホールディングスの社長と二人で話している間に俺は鍵を手に取った。

 社長を会社まで送った後に、再びUMENOに向かう。
 こんなに車を飛ばしたのは久しぶりだった。






























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