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朝チュンからの恋の自覚?
涙と期待
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他の参加者の控室にも回り、社長の代わりにご挨拶を済ませ、私達は会場で他の方の話を聴いた。
勿論議事録もだが、今回は倉林さんと二人でやった。
メディアも聴講しているらしく、最後の神城社長の時は、フラッシュの嵐でやっぱり注目の人物なんだな、と改めて思った。
「好きな開発だけしてれば、こんな疲れる仕事も引き受ける事もなかっただろうに」
広報部の長野さんが、カメラを社長に向けてボソッと言った。神城社長とは古い知り合いなのかな。
チラリと見ると長野さんと目が合った。
「でも、TVも雑誌も彼を撮りたがるの分かるよ。静止画といい動画といい、そこらの俳優やタレントよりも絵になるもん」
ほら、とファインダーを覗くように勧められ、私は言われるまま、その窓から登壇する神城社長を見た。
当てられたライトのせいか、仰る通り生で見るよりも美しく眩しい。オーラが芸能人のように光っている。
そんな人が酒のせいでうっかり私を抱いて、きっと今、後悔している。秘書として雇った事も――
意味不明の涙がポロリと溢れて、私は急いで手の甲で拭った。
その翌日から、倉林さんのフォローは少しずつ減りはじめ、私の仕事量はかなり増えていく。
「わ、こんなに来てる」
メールを確認すれば、神城社長がメディアに出た分、アポメールがぐんと増えていた。
【件名:弊社リサーチ部門立上げに伴う面談のお願い】
ただでさえ詰まったスケジュールに新規アポイント。段々と優先順位は分かってきたけれど、それでも全てを把握は出来てないので、やっぱり先輩かボスに相談をしなくちゃいけなくなる。
秘書室を見渡すと倉林さんはいない。
本日の予定を確認すると、泊まり込みをしていない限り神城社長が出社してくる時間だ。珈琲を準備しながらその到着を待った。
「おはようございます」
「おはよう」
仕事を始める社長に珈琲を出し、新規のアポイントがあった事を伝える。
「今日午前中の社内会議終わったら挨拶くらいは出来そうだ」
「そのまま部屋を押さえますか?」
「いや。外に行く。近場でいい店あるから軽く食べながら話を聞くよ。そう返事してくれる?」
「承知しました」
会釈をしてそのまま秘書室に戻ろうとすると「鈴木さん」と爽やかな声で呼び止められた。
「はい」
「少し雰囲気変わったね」
「そうですか?」
「うん。なんか落ち着いた」
「髪を上げたからでしょうか?」
蒸し暑くなってきたし髪が伸びてきたのでまとめてアップにしている。
『目が肥えた取引先に、舐められない姿である事が大切です』
『馬鹿にされない雰囲気を醸し出す事も大事だ』
倉林さんと神城社長の言葉の意味を考え、結果、美しさやスタイルの良さとは無縁の自分は、せめて、″賢そう″に見せるしかないと答えを出した。
なので、髪型とメイクを専門動画を観ながら少し変えてみたのだった。
「そっちの方が似合ってるよ」
眼鏡の奥の目を細めて、抵抗なく部下を褒める。
こういった所は前と変わりないから、嬉しいし励みになるけど、心の何処かで違う言葉を待っている自分に気が付く。
期待しちゃいけない。
自分は対象外。
そもそも、あの夜が夢であってほしいと願ったのは私自身だ。
勿論議事録もだが、今回は倉林さんと二人でやった。
メディアも聴講しているらしく、最後の神城社長の時は、フラッシュの嵐でやっぱり注目の人物なんだな、と改めて思った。
「好きな開発だけしてれば、こんな疲れる仕事も引き受ける事もなかっただろうに」
広報部の長野さんが、カメラを社長に向けてボソッと言った。神城社長とは古い知り合いなのかな。
チラリと見ると長野さんと目が合った。
「でも、TVも雑誌も彼を撮りたがるの分かるよ。静止画といい動画といい、そこらの俳優やタレントよりも絵になるもん」
ほら、とファインダーを覗くように勧められ、私は言われるまま、その窓から登壇する神城社長を見た。
当てられたライトのせいか、仰る通り生で見るよりも美しく眩しい。オーラが芸能人のように光っている。
そんな人が酒のせいでうっかり私を抱いて、きっと今、後悔している。秘書として雇った事も――
意味不明の涙がポロリと溢れて、私は急いで手の甲で拭った。
その翌日から、倉林さんのフォローは少しずつ減りはじめ、私の仕事量はかなり増えていく。
「わ、こんなに来てる」
メールを確認すれば、神城社長がメディアに出た分、アポメールがぐんと増えていた。
【件名:弊社リサーチ部門立上げに伴う面談のお願い】
ただでさえ詰まったスケジュールに新規アポイント。段々と優先順位は分かってきたけれど、それでも全てを把握は出来てないので、やっぱり先輩かボスに相談をしなくちゃいけなくなる。
秘書室を見渡すと倉林さんはいない。
本日の予定を確認すると、泊まり込みをしていない限り神城社長が出社してくる時間だ。珈琲を準備しながらその到着を待った。
「おはようございます」
「おはよう」
仕事を始める社長に珈琲を出し、新規のアポイントがあった事を伝える。
「今日午前中の社内会議終わったら挨拶くらいは出来そうだ」
「そのまま部屋を押さえますか?」
「いや。外に行く。近場でいい店あるから軽く食べながら話を聞くよ。そう返事してくれる?」
「承知しました」
会釈をしてそのまま秘書室に戻ろうとすると「鈴木さん」と爽やかな声で呼び止められた。
「はい」
「少し雰囲気変わったね」
「そうですか?」
「うん。なんか落ち着いた」
「髪を上げたからでしょうか?」
蒸し暑くなってきたし髪が伸びてきたのでまとめてアップにしている。
『目が肥えた取引先に、舐められない姿である事が大切です』
『馬鹿にされない雰囲気を醸し出す事も大事だ』
倉林さんと神城社長の言葉の意味を考え、結果、美しさやスタイルの良さとは無縁の自分は、せめて、″賢そう″に見せるしかないと答えを出した。
なので、髪型とメイクを専門動画を観ながら少し変えてみたのだった。
「そっちの方が似合ってるよ」
眼鏡の奥の目を細めて、抵抗なく部下を褒める。
こういった所は前と変わりないから、嬉しいし励みになるけど、心の何処かで違う言葉を待っている自分に気が付く。
期待しちゃいけない。
自分は対象外。
そもそも、あの夜が夢であってほしいと願ったのは私自身だ。
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