同級生がCEO―クールな彼は夢見るように愛に溺れたい(らしい)【番外編非公開中】

光月海愛(こうつきみあ)

文字の大きさ
19 / 110
朝チュンからの恋の自覚?

昔からやりたかったこと1

しおりを挟む
「あの時の副社長の顔が面白かったな」
 
 長野さんが思い出しながら、細い目を垂れされている。

「社長も遊びで恋愛のバーチャルヒューマンとか作ってないで、そっちに本腰入れたらいいのにですね」

 空になったグラスを覗き込み何気に言った私を、長野さんが、″おや″と言った目つきで見た。

「もしかして、啓の家に行った?」

 ……しまった。

「お、お試しでゲームとか勧められたので」

 口止めなんてされてないけど、いくら社長の友人だからといって私の口からは話せない。そう、口、では。でも目は泳いでいたはず。
 何か察知したのか長野さんが調子づいて話し出す。

「アイツは昔から恋愛が下手だったから、誘うのはいつもゲームとかだったんだよな」

 聞いてもいないのに、社長の恋愛話がぼた餅みたいに落ちてきた。

「じゃあ、ゲームや開発中のシステムを女性に試させるのは神城社長の恋愛の常套手段って事ですか?」

「そうそう」

「なんか可愛い」

「可愛い? ヤバいだろ。そんな小学生みたいな誘い方してさー。まぁそんな風に不器用だから言い寄られて付き合ってもフラレてしまう。長く交際続いてた女はいないんじゃないかな」

 長野さんはペラペラと社長のプライベートを愉快そうに話す。

「でも恋愛に不器用でも、昔から持ってた才能で夢を実現させて成功してるんだから凄いです」

 神城くんの野望の全ては分からないけれど、これからもっと凄い分野にも手を広げていくに違いない。例えばもしかしたら既にあるのかもしれないけど、月に行けるバーチャル宇宙船とか。

「夢、ねえ。中学時代にはもう甘い夢は見なかったな、俺は」

 長野さんがつまらなそうな目をしてから、フッと私を見た。

「アイツの話ばっかしちゃうな。ね、鈴木さんは何か夢あったの? まさか秘書が夢だったなんて事はないだろ?」

「秘書は想像もしてなかったです」

 夢、本当はあったよ。中学、高校くらいまではそっちの道に進めたらいいな、と漠然と思っていた。

「まさか、啓と同じでシステムエンジニア系?」

「違いますよ、私は……」

 話してる途中、誰か触ったのか急にモニターに映し出されていた映画の音量が増した。

「つまんないB級映画、吹き替え字幕なしで流したって誰もわかんねーよな」

 長野さんが軽く舌打ちして一緒にモニターを眺める。

「これ、結構面白い映画ですよ」

「えー、何言ってるかわかんの?」

「何となく」

 これは、1980年代のアメリカの田舎町が舞台の話。主人公達は超能力を持つ謎の少女と出会い、陰謀に巻き込まれていくというサスペンスだ。

「そろそろ会社戻らないとだなぁ」

「そうですね」

 社長は時間を気にしないでと言ってくれたが、やっぱり仕事が気になって悠長にはできない。

 食堂を出て社に戻ると、秘書室には麦野さんと倉林さんがいた。

「お帰りなさい。お疲れ様です」

 役員の代わりに葬儀に参加した倉林さんはまだ喪服姿だった。

「鈴木さんこそ会議お疲れ様でした」

「議事録の文書化前に社長室に寄ってください。先程、社長も外から戻られました。言葉では仰有りませんでしたが鈴木さんを探していらしたようなので」

「は、はい」

 会議中の発言、咎められる?
 色々気になりながらも社長室のドアをノックすると、「はい」といつもの、低くて穏やかな声が返ってきた。

「失礼します」

「丁度良かった」

 神城社長が机の書類を私に渡した。

「これ、新規契約書。記名と押印して先方に郵送して」

「承知しました」

 メールでアポ取ってもう契約。どんなビジネスだったのか気になる所だが、私が口を挟む事じゃない。

「それともう一つ」

 神城社長が続けて私に仕事を頼む。

「この前の講演会の議事録、英訳してからここに送って欲しい。後で鈴木さんのメアドに宛先回すから」 

「……え、はい」

 社長が見せたタブレットの画面を確認して、顔を上げると探るような目と合った。

「できる?」

「はい」

 私に英語わかると思ってる? 翻訳アプリで充分だと? 
 それとも……。
 私の事を試してる?

「神城社長」

 そこでノックと同時に倉林さんの声が聴こえた。

「どうぞ」

 喪服からビジネスカジュアルへと着替えた彼女が一礼して入ってくる。

「午後四時に訪問予定だった【ビジターエンターテイメント】の猪又様が時間を繰り上げしたいとお電話がありました」

「こっちから出向くのに、繰り上げか」

 一気に険しくなった表情で、社長が私を見た。

「鈴木さん、では先程の件お願いします」

「は、はい」

 あの社長が客に振り回されるのは珍しくはない。
 どんなに世間に注目されようが急成長を遂げた会社の代表でも、大手企業の役員から見たらまだまだ ″若手″というか若造扱いなんだろう。
 そんな社長を不憫に思いながら、秘書室に戻り、まず契約書に記名、押印する。

 当社のスマホ用広視野角VRゴーグルレンズを販売する内容で、これなら即決だったのも頷けた。PDFで保存してから郵送準備をし、社内の差し出し口に持っていく。 
 そして、もう一つの仕事。議事録の英文化。
 神城社長だけでなく、他の講演者の分もやって終わったのは定時になる頃だった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

鬼上官と、深夜のオフィス

99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」 間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。 けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……? 「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」 鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。 ※性的な事柄をモチーフとしていますが その描写は薄いです。

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...