40 / 110
裏切りと恋
喧嘩そして
しおりを挟む
アパートに戻ると、姉は不在で甥のハヤトだけが携帯型ゲームをして遊んでいた。
「おかあさんは?」
「仕事探しに行くって」
「そう」
仕事も辞めてたのか。
ていうか何の仕事してた? 子供置いて出かけるなら一言連絡すればいいのに。
スマホを確認すると、登録してない番号からの着信が残っていた。
夕飯、どうする気かな。
とりあえず冬美の分も作っておくか。
「ハヤトくん、嫌いな食べ物ある? アレルギーとか」
「お母さんが、僕はエビとカニは食べちゃダメって言ってた」
心配せんでも、そんな食材はうちにはない。
冷蔵庫を確認すると、冬美が使った形跡はなかった。ゴミ箱にはコンビニの弁当の空箱が無造作に捨ててあり、少しイラッときた。
残した野菜とかそのままだ。
気落ちしている今、何となく凝った料理も作る気が起きず、
「カレーでもいい?」
「カレー好き」
無難なメニューを選ぶ。これなら明日の昼もハヤトが食べられる。
二人で夕飯を済ませ、お風呂まで入れた所でようやく冬美が帰ってきた。
「ちょっと、何で酒臭いのよ?!」
二十二時といえば、普通なら子供は寝ている時間だけど、母親に置いていかれたという不安からか、ハヤトは布団の中でグズっていた。
「友達に仕事紹介してもらったついでに、少し飲んで来ただけじゃなぁい」
一体どのくらい飲んだのか。
日焼けした顔が赤黒くなって目がトロンとしている。部屋に入るなり床に寝転がった。
「……いいご身分ね。子供置いて何も言わずに居候先の妹に世話任せてさ。その友達に仕事だけじゃなくて住む所も頼ればいいじゃない」
別に甥の世話が苦なんじゃない。
こんな不安定な時に、酒を飲んでみっともない姿を子供にさらす冬美にイラついて、つい、突き放す言い方をした。
「友達に何でもかんでも頼れるわけないっしょ~大体そいつ男だし」
それなのに、冬美はあっけらかんとしている。
「あ、そう」
そうだった。この人は昔から男女隔てなく遊ぶタイプで男友達の方が多かった。
「で、仕事って何するの? ていうか今まで何してたの?」
今どき日焼けサロンは流行ってないだろうから、なんでそんなに日焼けしてるのか謎だった。
「ティッシュ配りとか単発のバイトが多かったねぇ」
「……」
そんな仕事してたのか。
それが悪いわけじゃないけど、学生のアルバイトが多いイメージ。
「なによ、その目」
私の思った事が分かったのか、冬美が悪態突きまくる。
「あんたみたいに綺麗な格好して室内でデスクワークするだけがまともな仕事じゃないんだからねっ! その小馬鹿にした目が昔っからキライだったのよっ!」
叫んで、そばにあったティッシュケース(木箱)も投げてきた。
「……いったぁ……」
見事にそれが私の頬を直撃して、堪忍袋の緒が切れる。
「そうやって、すぐに暴力振るうとこが嫌なのっ!」
「暴力~? これが? 昔から大袈裟なんだよ、お前」
頬を押さえる私を尻目に、冬美は欠伸をしてビビるハヤトのそばに移動した。
「何が大袈裟よっ! 気に入らないことあったらお母さんや物に当たって暴れてたじゃない! それが暴力じゃなくてなんなのよ!」
(補導されたりはないから)ヤンキーではなかったはずだが、思春期の難しさを理由にキレる姉は、私からしたらそれよりタチが悪かった。
「……あぁ、うっさい。綺麗事ばっかり並べやがって。そんな頭ガッチガッチだから婚約者に逃げられたんじゃないの? ハハハ、みっともない」
「!」
冬美が嘲笑う。
こんな姉に、そんな話をしたであろう母親に頭に来たが、やっぱり、こいつに馬鹿にされたことが一番腹立った。
「みっともないのはどっちよ! あんたが姉だなんて恥ずかしくてそれこそ婚約者にも友達にも紹介したくない!……いい? 期限まで同居の話はナシ! 明日でもとっとと新居探して出てって!」
この文句が、とんでもない結果を引き起こすことになろうなんて。――この時は、ただ興奮して考えもしなかった。
「おかあさんは?」
「仕事探しに行くって」
「そう」
仕事も辞めてたのか。
ていうか何の仕事してた? 子供置いて出かけるなら一言連絡すればいいのに。
スマホを確認すると、登録してない番号からの着信が残っていた。
夕飯、どうする気かな。
とりあえず冬美の分も作っておくか。
「ハヤトくん、嫌いな食べ物ある? アレルギーとか」
「お母さんが、僕はエビとカニは食べちゃダメって言ってた」
心配せんでも、そんな食材はうちにはない。
冷蔵庫を確認すると、冬美が使った形跡はなかった。ゴミ箱にはコンビニの弁当の空箱が無造作に捨ててあり、少しイラッときた。
残した野菜とかそのままだ。
気落ちしている今、何となく凝った料理も作る気が起きず、
「カレーでもいい?」
「カレー好き」
無難なメニューを選ぶ。これなら明日の昼もハヤトが食べられる。
二人で夕飯を済ませ、お風呂まで入れた所でようやく冬美が帰ってきた。
「ちょっと、何で酒臭いのよ?!」
二十二時といえば、普通なら子供は寝ている時間だけど、母親に置いていかれたという不安からか、ハヤトは布団の中でグズっていた。
「友達に仕事紹介してもらったついでに、少し飲んで来ただけじゃなぁい」
一体どのくらい飲んだのか。
日焼けした顔が赤黒くなって目がトロンとしている。部屋に入るなり床に寝転がった。
「……いいご身分ね。子供置いて何も言わずに居候先の妹に世話任せてさ。その友達に仕事だけじゃなくて住む所も頼ればいいじゃない」
別に甥の世話が苦なんじゃない。
こんな不安定な時に、酒を飲んでみっともない姿を子供にさらす冬美にイラついて、つい、突き放す言い方をした。
「友達に何でもかんでも頼れるわけないっしょ~大体そいつ男だし」
それなのに、冬美はあっけらかんとしている。
「あ、そう」
そうだった。この人は昔から男女隔てなく遊ぶタイプで男友達の方が多かった。
「で、仕事って何するの? ていうか今まで何してたの?」
今どき日焼けサロンは流行ってないだろうから、なんでそんなに日焼けしてるのか謎だった。
「ティッシュ配りとか単発のバイトが多かったねぇ」
「……」
そんな仕事してたのか。
それが悪いわけじゃないけど、学生のアルバイトが多いイメージ。
「なによ、その目」
私の思った事が分かったのか、冬美が悪態突きまくる。
「あんたみたいに綺麗な格好して室内でデスクワークするだけがまともな仕事じゃないんだからねっ! その小馬鹿にした目が昔っからキライだったのよっ!」
叫んで、そばにあったティッシュケース(木箱)も投げてきた。
「……いったぁ……」
見事にそれが私の頬を直撃して、堪忍袋の緒が切れる。
「そうやって、すぐに暴力振るうとこが嫌なのっ!」
「暴力~? これが? 昔から大袈裟なんだよ、お前」
頬を押さえる私を尻目に、冬美は欠伸をしてビビるハヤトのそばに移動した。
「何が大袈裟よっ! 気に入らないことあったらお母さんや物に当たって暴れてたじゃない! それが暴力じゃなくてなんなのよ!」
(補導されたりはないから)ヤンキーではなかったはずだが、思春期の難しさを理由にキレる姉は、私からしたらそれよりタチが悪かった。
「……あぁ、うっさい。綺麗事ばっかり並べやがって。そんな頭ガッチガッチだから婚約者に逃げられたんじゃないの? ハハハ、みっともない」
「!」
冬美が嘲笑う。
こんな姉に、そんな話をしたであろう母親に頭に来たが、やっぱり、こいつに馬鹿にされたことが一番腹立った。
「みっともないのはどっちよ! あんたが姉だなんて恥ずかしくてそれこそ婚約者にも友達にも紹介したくない!……いい? 期限まで同居の話はナシ! 明日でもとっとと新居探して出てって!」
この文句が、とんでもない結果を引き起こすことになろうなんて。――この時は、ただ興奮して考えもしなかった。
6
あなたにおすすめの小説
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
*全28話完結
*辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
*他誌にも掲載中です。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる