同級生がCEO―クールな彼は夢見るように愛に溺れたい(らしい)【番外編非公開中】

光月海愛(こうつきみあ)

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裏切りと恋

撮影と傷付く心

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「な、何を言ってるんですか?」

 カタカタとキーボードをたたいて数字を入力してるつもりが、

「……鈴木さん、それ電卓」

 動揺し、そばにある別のものを押してたみたいで、長野さんは吹き出していた。

「多忙な身でありながら部下を家まで送るなんて、その気がないとしないだろうから。そんなことは鈴木さんも自覚してるだろ?」

「……」

 それが恋愛感情なのか、ただシたかっただけなのか、そこがわからずウダウダしてる所なんです――……とは言えず、私は、引きつった笑顔を返すしかない。

「まぁ、いいや。……お。商談終わって今から取材オッケーみたい。じゃ、俺行くね。お邪魔しました」

 あっさりと引き下がった長野さんは、軽快な足取りで秘書室から出て行く。
 あの人も何を考えてるのかわからないけれど、彼からすれば、私も同じかもしれない。

「あ、」
 
 そうだ。
 社長に取材現場に来るように言われていたのを思い出し、長野さんの後を追うように部屋を出る。

 商談が上手く行ったのか、フロアの受付の壁にある、【SMART・GOOD】というロゴの前で、神城社長と高長楽総経理が握手をして撮影していた。社内報だけでなくメディア向けにも用意するそうだ。

「すみませーん、被写体ブレたんでもう一枚いいですかー?」

 三脚を使ってシャッターを切る長野さんの額には汗が滲んでいる。
 ディフューザーを使って、照明を沢山当てられている被写体の二人も暑そうだ。高長楽総経理も顔が脂ギッシュになっている。
 しかし、うちの神城社長はなぜか汗一つかかずクールな印象のままカメラに収まっていた。 
 
 何が違うのだろう?
 まさか、顔の汗腺を取ってしまっているとか? ではないにしても、モデル並に爽やかで美しいのはなんでなの?

 我を忘れて、社長を恍惚とした目で見つめてしまっていた。


「次は秘書の王雨桐《おうゆうとん》さんと神城社長のツーショットでお願いします」


「……え」

 と思わず声を漏らしたのは、私ではなく遠目から撮影を見守っていた麦野さんや他の女子社員達だ。
 
「そのツーショット、要る?」

「ハニートラップに引っかかった馬鹿社長みたいに見えるからやめてほしい」

 ボソボソと反対の意見を言っていたが、撮影隊には聴こえていない。

「我很荣幸能和你在一起。(ご一緒てきて光栄です)」

 宣伝効果大なのだから、神城社長が断るはずもなく、セクシー秘書との握手を撮影されている。

「いやー、すげー絵になるわ。スパイ映画みたいだね!」

 美男美女の被写体に興奮した長野さんが、AV監督みたいに、
「もっと寄って」
「啓社長、王ちゃんの肩抱いてみて!」
 と鼻息荒く指示を出していた。

「くっつき過ぎじゃない?」
「爆乳当たってる!」

 麦野さんたちが見るに耐えないと目をそらす横で、

「……羨ましいなぁ……」

 と、副社長が呟いているのを、倉林さんも私も聞き逃さなかった。

 やっぱり、男性ってフェロモンには弱いんだな。なら、当然、神城社長だってそうなはず……。

 秘書として、冷静に撮影を見守っていたつもりだけど、麦野さんたちと何ら変わりない不快な気持ちが湧いてきた中、余計な提案してきたのは広報部の部長だ。

「次は高長楽と神城社長の秘書とのツーショットでいきましょう」


「はい?」

 皆が私に注目する。
 いやいやいや。
 そんなの無理。
 聞いてないし、撮影の可能性あるならそれなりにもう少し髪も服も何とかしていたし……。
 
「鈴木さん可哀想。あの秘書のあとじゃ公開処刑じゃない?」

 こもっとも。
 麦野さんは皆の胸中を代弁してくれている。
 何も、外見で仕事をしてるわけじゃないと分かっていても、私が広報誌や社外用の写真に載るなんて出来る限り避けたいことだった。


「倉林さんならいいんじゃないか?」


 と、これまた皆が感じてることを言ってのけたのは副社長だ。

「倉林さんなら、さほど王秘書と引けを取らないし」

「……」

 フロアがざわつく。
 当然の見解だけど、それなりに傷つく自分が嫌になった。

「……えー、と、倉林さん撮影大丈夫ですか?」

 困惑した顔で倉林さんに確認を取るのは長野さん。
 既にスタンバイした高長楽総経理が、ニヤニヤと彼女を手招きして呼んでいた。
 倉林さんは、副社長ではなく神城社長の方を見て判断を仰いでいる。神城社長は、首を横に振って応えた。

「従業員の撮影は社内報以外では許可できません」

 何故なら、会社のシステムや予算上、社員の護衛は皆無であり身の安全は保障されていないから――

 神城社長の言葉は説得力があったけれど、現時点でそれは倉林さんのために発せられたものであり、私の胸中は複雑だった。

 その後、高長楽総経理との会食があったが、中国語が話せない私は同伴せずに定時に退社した。



「ただいまー……」



 
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