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裏切りと恋と2
ピザとキュウリ
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神城社長とのメッセージのやり取りは、見事に要件ばっかり。(スタンプどころか絵文字の欠片もない)
【21時には帰ってくる】
【ピザ頼んでおく】
手ぶらで行くのもなんなので、何か買ってくる物はないか尋ねたら、
【鈴木さんちの野菜】
と、きたもんだ。
一旦家に帰ってから行くつもりだったから良いけど。
お泊りセット………いる、よね。明日は休みだし。
あとで剥がれるくらいなら、と、すっぴんでタクシーに乗り社長の自宅へ向かう。
「凄い豪邸だよね。通るたびに誰が住んでるんだろうって気になってたんだよ。芸能人?」
運転手さんが料金を受け取りながら、豪邸を窓から眺めた。
「以前はそうだったみたいですけど。今は一般人ですよ」
神城社長くらいメディアに出てる人を一般人と呼んでいいのかわからないけど、とりあえずそう答えた。
降りて、タクシーが遠のいてから門扉のインターホンを鳴らす。
「隣の扉から入ってきて」と、社長の声が聞こえたのと同時に、ガチャと解錠の音がした。
来るのは初めてじゃないのに、緊張する。
……しかし、遠いな。
この前は車でアプローチを移動したが、ここまで庭が広いと立派な公園と変わらない。ホーム着でテロテロ歩いてようやく玄関へ。
「……ごめん、車で迎え行けば良かったね。いつも車で入るから感覚わかんなくて」
玄関から出迎えてくれた神城社長が、申し訳無さそうにしていた。
「いいえ。夜の散歩みたいで気持ち良かったです」
森林の少ない都心で、これだけ緑豊かな場所は珍しく、マイナスイオンを沢山浴びた気分になった。
「……散歩かぁ」
目を細めて私を見る社長が微笑んでいる。
「着心地よさそうなルームウェアだね」
「あ、はい。コットン100%で」
シワになってもアイロン掛けられるやつ。
「入って」
神城社長が私が下げてきた袋を手に取る。中には社長用に酒と、私用にお茶、リクエストのキュウリと、それに付けるふき味噌か入っている。
「″こんばんは、いらっしゃい″」
靴を脱いでいると、ペットロボのダルマ……じゃなかった ″ラン″も私を出迎えてくれた。ランは目を閉じたり開けたりして私に近寄ってきた。
「″ケイのアイジン″」
「こら」
神城社長がランを諌めると、スゴスゴと廊下の奥へ消えていく。本当に生きてるみたい。
アレが居たらこんなに広い部屋でも淋しくないんだろうか。
……いや、淋しいから、貰い物とはいえアレを起動させているんじゃないのだろうか。
「どうした? ランの知識はネットからも取り入れてるから」
「……あ、そうなんですね」
別に ″アイジン″を気にしてるわけではなかったのだが……。
リビングに移動し、神城社長が私の持ってきたスパーリングワインをグラス二つに注いでいる。
「あ、今日は私はお茶で」
「何で」
「学習しますよ、それなりに」
「一杯だけなら平気だろ」
「……」
まず、飲みたかったんたろうな。今日暑かったしな。で、乾杯をしたタイミングで宅配ピザが届き、それを熱いうちに食べる。
あまりピザは好物ではないけど、たまになら美味しい。
社長はワインの他に焼酎も飲み始めた。
食べ終えると、忘れていいのに、社長が持ってきたキュウリを皿に並べた。
「これ、このままかじっていいんだよね」
「はい。味噌つけても塩でもいいと思います」
「お手本見せて」
お手本て。
「じゃあ、私は味噌で」
家ではちゃんと切って食べるが、社長の先入観に付き合い、丸かじりとやらをしてみる。
いや、流石に水っぽいです。
一口かじって苦笑いしていると、不意に社長の手が、私の顔に伸びてきた。
【21時には帰ってくる】
【ピザ頼んでおく】
手ぶらで行くのもなんなので、何か買ってくる物はないか尋ねたら、
【鈴木さんちの野菜】
と、きたもんだ。
一旦家に帰ってから行くつもりだったから良いけど。
お泊りセット………いる、よね。明日は休みだし。
あとで剥がれるくらいなら、と、すっぴんでタクシーに乗り社長の自宅へ向かう。
「凄い豪邸だよね。通るたびに誰が住んでるんだろうって気になってたんだよ。芸能人?」
運転手さんが料金を受け取りながら、豪邸を窓から眺めた。
「以前はそうだったみたいですけど。今は一般人ですよ」
神城社長くらいメディアに出てる人を一般人と呼んでいいのかわからないけど、とりあえずそう答えた。
降りて、タクシーが遠のいてから門扉のインターホンを鳴らす。
「隣の扉から入ってきて」と、社長の声が聞こえたのと同時に、ガチャと解錠の音がした。
来るのは初めてじゃないのに、緊張する。
……しかし、遠いな。
この前は車でアプローチを移動したが、ここまで庭が広いと立派な公園と変わらない。ホーム着でテロテロ歩いてようやく玄関へ。
「……ごめん、車で迎え行けば良かったね。いつも車で入るから感覚わかんなくて」
玄関から出迎えてくれた神城社長が、申し訳無さそうにしていた。
「いいえ。夜の散歩みたいで気持ち良かったです」
森林の少ない都心で、これだけ緑豊かな場所は珍しく、マイナスイオンを沢山浴びた気分になった。
「……散歩かぁ」
目を細めて私を見る社長が微笑んでいる。
「着心地よさそうなルームウェアだね」
「あ、はい。コットン100%で」
シワになってもアイロン掛けられるやつ。
「入って」
神城社長が私が下げてきた袋を手に取る。中には社長用に酒と、私用にお茶、リクエストのキュウリと、それに付けるふき味噌か入っている。
「″こんばんは、いらっしゃい″」
靴を脱いでいると、ペットロボのダルマ……じゃなかった ″ラン″も私を出迎えてくれた。ランは目を閉じたり開けたりして私に近寄ってきた。
「″ケイのアイジン″」
「こら」
神城社長がランを諌めると、スゴスゴと廊下の奥へ消えていく。本当に生きてるみたい。
アレが居たらこんなに広い部屋でも淋しくないんだろうか。
……いや、淋しいから、貰い物とはいえアレを起動させているんじゃないのだろうか。
「どうした? ランの知識はネットからも取り入れてるから」
「……あ、そうなんですね」
別に ″アイジン″を気にしてるわけではなかったのだが……。
リビングに移動し、神城社長が私の持ってきたスパーリングワインをグラス二つに注いでいる。
「あ、今日は私はお茶で」
「何で」
「学習しますよ、それなりに」
「一杯だけなら平気だろ」
「……」
まず、飲みたかったんたろうな。今日暑かったしな。で、乾杯をしたタイミングで宅配ピザが届き、それを熱いうちに食べる。
あまりピザは好物ではないけど、たまになら美味しい。
社長はワインの他に焼酎も飲み始めた。
食べ終えると、忘れていいのに、社長が持ってきたキュウリを皿に並べた。
「これ、このままかじっていいんだよね」
「はい。味噌つけても塩でもいいと思います」
「お手本見せて」
お手本て。
「じゃあ、私は味噌で」
家ではちゃんと切って食べるが、社長の先入観に付き合い、丸かじりとやらをしてみる。
いや、流石に水っぽいです。
一口かじって苦笑いしていると、不意に社長の手が、私の顔に伸びてきた。
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