同級生がCEO―クールな彼は夢見るように愛に溺れたい(らしい)【番外編非公開中】

光月海愛(こうつきみあ)

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裏切りと恋 3

波紋

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「じゃあ、ここで」

「あぁ、また後で」

 会社の駐車場より数百メートル手前で車から降りて神城くんと別れる。
 既に上司の顔つきになった彼は、唇を気付く結んで軽く手を上げて車を走らせた。
 神城くんは気にしなくていい、と言ってくれたけれどやっぱりこの関係は隠しておきたい。

 そういえば、総務部にはまだ住所変更届は出していない。  

 元々自転車通勤ということで交通費の申請は出してなかったからいいが、問題は住居手当だ。
 実家から通うていにすれば、通勤費の矛盾が出てくる。嘘吐き通すのもシンドいし……と、悶々と歩いていると、

「あれ? 鈴木さん歩き?」

 背後から声を掛けられ、振り向けば広報部の長野さんがいた。久しぶりに顔を合わす。

「おはようございます。ええ、今日は自転車ではないです」

 この人にも隠し事をするのが少し忍びない。
 他愛もない話をしていると、不意に長野さんが私の顔を覗き込んだ。

「鈴木さん、最近綺麗になったね」
「えっ!」

 ただのお世辞に過剰反応。
 普段そういう褒められた方をしないから尚更だ。

「なんつーか、艶っぽくなった」

「そ、そんなことはないでしょう」

 観察するような長野さんの視線に私の良心は痛む。

「もしかして彼氏できた?」

 心臓はキリリッと締まり、あの人を彼氏と呼んでいいのかと悩みながらも、

「こ、恋はしてます」
 
 と曖昧な答え方をした。
 神城くんがそういうつもりでなくても、私は間違いなく彼を男性として好きだ。
 これが恋でなくてなんなのか。

「そっか。そりゃ良かった」

 拍子抜けするほど長野さんは顔を綻ばせる。

「相手が誰かは聞かないけど、いや、何か分かるけど。そんな鈴木さんになら、恋のキューピッドお願いしてもいいかな」

「え……」

 キューピッド? 誰と誰の? 
 首を傾げて続きを待つ。
 すると、前方の横断歩道を渡る美女に視線を移して、長野さんは小声で言った。
 あれは先輩秘書の倉林さんだ。

「倉林さん、なかなか手強くてさ。普通に誘っても絶対に無理だから協力者が必要なのよ」

 そこでようやく物事を理解した私は、ナルホド……と頷いた。
 私に近寄ったのは、そういうことだったのか。
 安堵した反面、ほんの少しでも勘違いした私恥ずかしい。

「彼女、鈴木さんには優しいでしょ? きっと親近感湧いてるからだと思うんだよね。それで相談なんだけど」

″今度、啓くんも一緒にダブルデートしない? ″とハッキリと聞こえたが、私は「急ぎますので」と駆け足で逃げた。
 過去にダブルデートなんてして結果が良かった試しはない。
 ましてや全員社内、一人はCEO。絶対に避けたいイベントだ。

 そんな私を待っていたのは、仕事のトラブルだった。


「VR使用中の事故?」

 倉林さんが受電したクレームは、単に言いがかりとして済まされない内容だった。
 オープンしたばかりのVRカフェ・バーでゲーム使用中にお客様が転倒して怪我をされたのだ。

「バーが泥酔した客に使用を許可した為なんですが、オーナーは製品の説明部分が簡素過ぎるとうちに責任転嫁してるらしいんです」

 社長室での報告に、神城くんは眉間に深いシワを寄せていた。

「機器の使用時に説明をするのは店のスタッフの仕事ですよね?」

 倉林さんの隣で聞いていた私は思わず口を挟んだ。


『……ババァはその辺の道端でやっとけよ……』


『……全く、佐藤さんの方が打ち合わせ楽しみだったのに』


 あの、人を小馬鹿にしたオーナーの顔はまだ記憶に新しい。やっぱり人間性に問題があるに違いない。
 憤慨する私に反して、神城くんはそれでも落ち着いた様子だ。


「損害賠償請求に至らないうちに、お客様と話を進めよう」

 しかし、この問題はSNSの拡散により想定よりも波紋が広がった。

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