同級生がCEO―クールな彼は夢見るように愛に溺れたい(らしい)【番外編非公開中】

光月海愛(こうつきみあ)

文字の大きさ
56 / 110
裏切りと恋 3

慰め

しおりを挟む
【スマートグッド製品 欠陥】

【殺人VR】

 まだ示談中だというのに、カフェ・バーではなくスマートグッドを批判する投稿が掲示板にも見られるようになる。

「まるで人が死んだみたいな騒ぎだな。転倒して骨折したのは酔っ払ったオッサンだろ? 利用者や店への批判が無いのが気になる」

 メディアの取材対応をした長野さんが苦い顔をしていたが、私もそこが気になっていた。
 怪我をしたお客様には、神城くんと一緒にお見舞いに行き、誠意を持って怪我の保障はすることは伝えている。その時のお客様の態度から、ネットに書き込みをするようには見えなかった。

「競合会社がやってる可能性はあるな」

 長野さんが腕を組んでしかめ面をする。

「ステマですか?」

「そうとも言う。……啓社長、この件どうする?」

「そうだな」

 問われた神城くんは、見ていたパソコンから長野さんに視線を移して、「ステマ規制の様子見で暫く放置」と答えた。
 何故なら、名誉毀損からの記事削除に達するまでの経験を積んだ弁護士がそう多くはないからだそう。

 けれど、会社のトラブルはこれだけに留まらなかった。



「ただいま……起きてたんだね」

 その日、神城くんの帰宅は深夜となった。
 専属秘書とはいえ、彼の身の回りに起こる全ての事を把握しているわけではなく、だから、疲弊した様子の神城くんを見てとても心配になった。

「うん、眠れなくてランと遊んでた。ご飯は食べる? 鴨そばだけど」

「いや。今日はいいや。朝から食べるよ」

 私の手元から離れたランが彼のそばに移動し、目を瞬きさせる。

「ケイ、ゲンキない。何かやらかしたの?」

 ペットロボでさえ、彼の声の調子や歩き方で感じ取っているのだ。

「ちょっとつまづくと、これだからな俺は。慰めてくれよ」

 上着を脱いでソファーに置くと、神城くんはランではなく私に甘えてきた。ソファーで熱めの茶をすすっていた私は、抱きつく彼にかからないように、そっと湯呑みを置いた。

「……何かあったの?」

 空いた両手で神城くんの髪を触る。整髪料で固まってない襟足部分は柔らかくて小動物の背中みたいだ。
 私の胸に顔を埋めたまま、くぐもった声で彼が答えた。

「カフェ・バーのは完全に言いがかりだったけど、今度は自社製品による健康被害の記事が出るみたいなんだ」

「……え、どんな記事?」

 健康被害?
 それはやっぱりヘッドマウントディスプレイによるものだろうか。
 長時間使用で乗り物酔いに似た症状が出ると、この前のカフェ・バーでも利用前に説明があった。

「一応、子供の使用開始年齢は明記してるけど、説明不足だったみたいだね。うちのゲーム機普及と子供の斜視の増加に関連性があると某メディアが取り上げるらしい」

 業界大手の【スマートグッド】が槍玉にあげられるのは仕方ないにしても、今までそういった警告指摘は多々あったはずだ。
 急に手のひら返したみたいな扱いはなぜ?
 しかし、大変な時なのに、言葉のボキャブラリーが少ない私はこんな事しか言えない。

「……大丈夫?」

「大丈夫じゃないかも……」

 茶化した風に答えた神城くんは、まるで乳児のようにパジャマの上から胸を吸い始めた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! *全28話完結 *辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 *他誌にも掲載中です。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

元遊び人の彼に狂わされた私の慎ましい人生計画

イセヤ レキ
恋愛
「先輩、私をダシに使わないで下さい」 「何のこと?俺は柚子ちゃんと話したかったから席を立ったんだよ?」 「‥‥あんな美人に言い寄られてるのに、勿体ない」 「こんなイイ男にアピールされてるのは、勿体なくないのか?」 「‥‥下(しも)が緩い男は、大嫌いです」 「やだなぁ、それって噂でしょ!」 「本当の話ではないとでも?」 「いや、去年まではホント♪」 「‥‥近づかないで下さい、ケダモノ」 ☆☆☆ 「気になってる程度なら、そのまま引き下がって下さい」 「じゃあ、好きだよ?」 「疑問系になる位の告白は要りません」 「好きだ!」 「疑問系じゃなくても要りません」 「どうしたら、信じてくれるの?」 「信じるも信じないもないんですけど‥‥そうですね、私の好きなところを400字詰め原稿用紙5枚に纏めて、1週間以内に提出したら信じます」 ☆☆☆ そんな二人が織り成す物語 ギャグ(一部シリアス)/女主人公/現代/日常/ハッピーエンド/オフィスラブ/社会人/オンラインゲーム/ヤンデレ

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...