同級生がCEO―クールな彼は夢見るように愛に溺れたい(らしい)【番外編非公開中】

光月海愛(こうつきみあ)

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理想と現実2 (神城視点)

企み?

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 中国系企業ハイヤングから来客があったその翌日。
 受付が何やら騒がしかった。
 アポ無しで "俺に会いたい" とやって来た客がいるらしい。

「……あ、神城社長」

 俺を見て、受付嬢が困った顔で、「この方が……」とその訪問者を指さした。
 鈴木さんのお姉さんだった。

「本当に社長だった!」

 と、手を叩いて喜べば彼女の白いサファリハットが大きく揺れた。黒いラメ入りのノースリブのワンピースがギラギラしている。
 オフィスビルで浮いたそのいでたちは、社員達の注目を浴びていた。

「先日は失礼いたしました」

「こちらこそ邪魔して悪かったわねぇ。……ちょっと話せる?」

「ええ……少しなら」

 通りのオープンカフェにお姉さんを促した。
 何の話だろうか。
 鈴木さんの様子からすると、あまり仲の良い姉妹ではなさそうだったが。

「こんな有名人が妹の男なんてビックリよー」 


オレンジジュースを啜り、「写真撮ってもいい?」といきなり俺にスマホを向けるあたり、鈴木さんとは全くタイプが違う人種なのだとわかる。
 なんだか、この人、誰かに似てる。

「写真は仕事用でしか撮りません」

「モデルみたいなこと言うよねー」

 つまらなそうにスマホを仕舞い、お姉さんが、フッと真面目な顔をして言った。

「神城さんだっけ、あなた、なつみの彼氏なの?」

「………」

 言葉に詰まる。
 今までなら、気になる異性とは関係が進めば自然と恋人と呼べる間柄になっていたのに。
 鈴木さんの場合は、当人がその行為を覚えてないし、求めてるのはいつも俺で、鈴木さんは雰囲気に流されているだけのような気がする。

「彼氏、と言えるかどうか……」

 濁してアイスコーヒーを啜った。

「なにそれ。じゃあ今は何なの? セフレ?」

「……!」

 珈琲を噴き出しそうになり喉でむせた。

「そりゃそーよねぇ、あなたみたいにイケメン青年実業家があんなの本気で相手にするわけないわよねー」

「あんなのって……」

 まだ何も言ってないのに。こんなこと言う身内がいるから、鈴木さんは自己否定感が強いんじゃなかろうか。

「本気も何も、僕の片思いみたいなもんですから」

 グロスでテカテカしたストローを口から放し、お姉さんは目をパチクリとした。

「………マジ?」

「……多分。本当のところ、僕も彼女の気持ちが分からないんで」

 感情剥き出しで表情豊か。
 どことなく、俺の兄貴に似たタイプの鈴木さんのお姉さんに、何故か俺はポロリと本音を漏らした。

「罪な女ねえー。私なら玉の輿狙って嘘でも好き好き結婚して! って言いまくるわよ」

 そんな女も嫌なんだが。

「なつみが好きなら強引に婚姻届出しちゃいなさいよ。あの子だって内心焦ってると思うわよ。元彼には浮気されて結婚遠のいたしさ!」

「そういうふうには見えないですが」

「あの子、頑固でプライド高いところあるからね。一見、何考えてるかわかんないように感じるのよ」

「芯が強いのかもしれないですね」

 自己肯定は低いが、独自の価値観を持った女性だと思う。
 なぜ得意な英語を活かした仕事に就いていなかったんだろう。それとも単に海外旅行が目的だったのか。 

「なつみさんは、子供の頃は何を目指してたんですか?」

「よく知らないのよねぇ、私も自分のことでいっぱいいっぱいだったし。でもあの子の部屋には洋楽とか洋画の円盤、英語まんまの小説とかいっぱいあったから通訳にでもなりたかったんじゃない?」

 お姉さんが残りのジュースを勢いよく吸い上げる。

「じゃあ専門の学校に行かれてたんです?」

「行ってないでしょう。塾にすら通ってないのに」

「……そう、なんですか?」

 驚いた。
 じゃあ完全な独学なのか。
 それなら、夢を叶えるのは厳しかったのではないか。
 遠慮って、ある意味、親孝行とその逆の紙一重だ。

「そうなの。へんなとこに気ぃ遣うから、あの子損ばっかりしてんの!」

 お姉さんの言い方に、ちゃんと愛情を感じる。口は悪いがそれなりに心配してるんだろう。

「冬美!」

 そこへ、鈴木さんがやって来て軽い言い合いになり、二人は去って行った。その時のお姉さんのイタズラな顔が忘れられない。
 ―――何か、企んでいる?

 その日のうちに、お姉さんがアパートを出て行ったのだと、同居を始めてから彼女に聞いた。
 ああやって、鈴木さんが怒るような事を言ったり、お金を持ち出したのもお姉さんの策だったのではないかと、今になって思う。


 
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