同級生がCEO―クールな彼は夢見るように愛に溺れたい(らしい)【番外編非公開中】

光月海愛(こうつきみあ)

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理想と現実2 (神城視点)

すれちがい

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 悪びれもなく三千花が謝る。
 困ったな、と他に部屋が空いてないかフロントへ確認するも、

「本日はシングルが埋まっておりまして……」

「仮眠室で寝るのと何ら変わらないから気にしないの! 意識し過ぎ」

 ホテル側から断られる先に、彼女に ″小さい男″ と烙印を押されてしまう。

「襲うなよ」「だーれが」

 笑い合ってるうちに気抜けして、俺達は仕事部屋に入るように躊躇いなくホテルの一室に入った。

 しかし、入った途端、三千花が急にしっとりとした表情になってこんな事を訊いてきた。

「もしかしてさ、啓の今の彼女ってあの鈴木さん?」

 冷蔵庫を開けようとした俺の手が止まる。

「何でそう思う?」

「噂になってた」

「俺が鈴木さんに弱味握られてる、だろ?」

「そう。でも違うよね」

「うん。でも、俺は彼女の前では弱くなる」

 呟くくらいの声で答えた。冷蔵庫を閉めると、不意に背中から抱きつかれた。

「何でそういう闘争心煽るような事言っちゃうかな」

 三千花が俺の背骨に自身の顔を押し付けている。

「煽られるなよ。もう関係ないんだから」

 三千花の腕を振り解こうとしたら、ぐりん! と身体を回されて今度は真正面から抱きしめられる。

「私が見たかったの、弱い啓を!」

 Sっ気のある彼女は、突如、俺をベッドまで押し倒した。やめろ、と言う前にキスをされ身体を押し付けられる。
 咄嗟に「違う」と思った。胸の感触も、髪の匂いも、俺が好きなモノじゃない。

「今、ヤッたらもう一緒に仕事出来なくなる」

 俺が三千花の身体をぐっと押しのけると、一瞬、淋しそうな目をしたものの、つまらなそうに鼻を鳴らして「甲斐性なし」と呟いた。



 それから、そう経たないうちに、長野くんからある報告を受ける。
 この前、我が社をバックアップすると約束したハイヤングの最高責任者の高長楽氏の事だ。
 彼は、上海とナイジェリアにある中国系の靠近 《かおじん》というVR会社にも一%という低金利で多額の融資をしているらしい。
 そして、大学時代の講師に依頼した調査結果も出た。
うちの副社長ログインで靠近の上海支社に登録されているIPアドレスに、機密性の高いファイルやパワーポイント、なんと重要なソースコードまで転送されていたらしい。
 ハッキングの事実もあり、副社長がスパイだという完全な証拠はまだ出てないが、倉林さんの報告だと、高長楽氏の専属秘書の王雨桐と彼が某ホテルで密会していた夜もあるのだそうだ。
 副社長は、わかりやすいハニートラップに引っかかったのだ。

 このままでは、創業してそう経たない会社なんてあっという間に乗っ取られてしまう。
 こんな相談を秘書になって間もない鈴木さんにはできないし、深刻な状況を悟られ心配かけたくない。
 それでも、彼女の顔を見たい。

 数日会っていないだけで、俺の心は乾ききっていた。
葛藤した挙げ句、秘書室に赴いた。

「倉林さん、鈴木さんは?」

「具合悪そうでしたので、横になるように勧めました」

 鈴木さんが体調崩してると聞いて仮眠室に寄ると、そこに長野くんもいて、なんと彼女が泣いていた。
 長野くんが触れていた彼女の腕を離す。それを見ただけで冷静な判断が飛ぶ。彼は何度も鈴木さんを誘っていた。

「気になる女が寝てたら悪さしようって気持ちになるだろ」

「神城くん、それは違う」

「じゃあ、何で鈴木さん泣いてる?」

 そして、なぜ貴女がそいつを庇うんだ。

「それは……」と、何か言いかけた鈴木さんを見て、もしかしたら、長野くんの事を好きなのかもしれないと思った。俺とあんな関係になったのは流されたからで、俺が上司だから断れなかっただけなのかも、と――。

「長野さんと話してるうちに気持ちが緩んだだけです。近頃ちょっと気が張ってたので」

 そりゃそうだ。俺みたいなつまらない男より、柔和で人懐っこい長野くんといた方が気が安らぐだろう。

「早いですが、本日はもう帰らせてください」

「分かった」

 俺はもう彼女の顔を見なかった。鈴木さんが会社を出たのを窓から見送り、メッセージを送った。

【今夜も帰れないから】

 本当は夕方からフリーだったが、極秘での調査が入った俺は、引き続き社に籠りっぱなしになる。
 その夜が、鈴木さんと過ごせる最後の夜だったとは知らずに、俺は、会社の乗っ取り防衛対策にただ奔走する日を過ごしていた。

 そして、一週間後。
 鈴木さんから「退職もしくは転属したい」と申し出があったのだ。







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