同級生がCEO―クールな彼は夢見るように愛に溺れたい(らしい)【番外編非公開中】

光月海愛(こうつきみあ)

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決意 

就職と離職

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 ✲

 就職活動は思いの外というか、案の定うまくいかなかった。
 何とか面接までこぎ着けても、まず、真っ先に懸念されるのが、まだ小さい胡桃のことだ。


「三ヶ月の乳児がいるの?」

「はい」

「ご主人いらっしゃらないんですか?」

「……はい」
 
「保育園はお決まりなんですか?」

「いいえ。時期的に申し込み間に合わなくて。民間の託児所を探してます」

「まだお母さんの免疫残ってるけど、これからよその子供から色んな感染症を貰うことになるわよ」

 女性の面接官もあくまで雇用側の人間として難色を示した。

 わかってる。
 そんなのは育児書で何回も読んだ。子供は予防接種以外では他人から感染することで免疫が付くのだということも。それでも急遽のときは、実母を頼れると言っても、


「同じ三十歳の方を雇用するなら、お子さんが小学生とか、逆にいらっしゃらないとかの方が安心してお仕事任せられるんです。事務員さんにはやはり一日中事務所をお任せするので」

「……そうですか」

 私はほぼ事務職しかしたことない。
 大手企業の事務職は、人気職であるために、スキルや若さを求められて書類選考すら通らない。
 かと言って、個人経営や中小企業の一営業所に一人の事務員体制では、私のようなシングル・マザーは懸念される。

 もう、こんなのばっかり。

「それと………」

 面接官が私の履歴書を見て眉をひそめた。

「スマート・グッドさんには秘書で入られたんですよね? 短期で辞められたのは何故ですか?」

 履歴書に嘘は書けないし、正直に話す。

「妊娠がわかって、入院を余儀なくされたからです」

 半分本当だが、本当はそうじゃない。
 スパイをスパイしようとして、脅迫されたなんて恐ろしい事は口が裂けても言えないし、どうしても不安感や躊躇が顔に出るらしい。

「わかりました。お忙しいところ来て頂いてありがとうございました。採用させて頂く場合は三日以内に連絡差し上げますので」

 ″訳アリの女″という白い視線に晒されつつ、私はお辞儀をして部屋を出た。

 おまけに、問題は乳児やシングルということだけでは無かった。

 私は正式な手続きを経てスマート・グッドを退職していない。
 すなわち、離職票が手元にないのだ。
 なので失業保険の申請もできていなかったし、たとえ採用が決まったとしても転職先にそれを提出する必要がある。
 一年も連絡していないのだから、退職させられているとは思うが、一度スマート・グッドに確認をしないといけない。
 前職に連絡を取ることがこんなにも憂鬱なんて。

 スマート・グッドは乗っ取りを避けられた。
 CEOは神城くんのままだ。
 もう、接触しても平気、だよね?

 ホームページの代表の電話番号をクリックしようとしては、息が止まりそうになり、指を引っ込める。

 この躊躇いは、命の危険云々ではなく、やはり社会人としての常識から生まれているのだ。

「………どうか、知ってる人が電話取りませんように」

 道中で独り言ち、えいっと番号をクリック。

「お電話ありがとうございます。スマート・グッド総合課の岩﨑です」

 良かった。
 総合窓口だった。

「お忙しいところ恐れ入ります、実は……――」

 およそ一年前に手続きを経ずに急遽退職したこと、改めて転職に向け離職票が欲しいのだと話した。

「お調べしますので少々お待ちください」

 保留中のクラッシック音楽が眠気を誘う。
 公園のベンチに腰を降ろし、一年前のクレームの嵐の時、顧客はこんな呑気な気持ちで待ってはいなかったのだろうな、などと思い耽った。

「大変お待たせ致しました」

 数分後、岩崎というオペレーターは、とても丁寧な口調でこう回答した。

「鈴木なつみさんは現在、休職扱いとなっておりまして、離職票は発行されないとのことです」


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