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夢ならさめないで
新しい仕事Ⅱ
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✜
土曜日のランチタイムはてんてこ舞い。
オーガニックブームなうえ、野菜の収穫体験も出来るとあって、親子連れや観光客がひっきりなしに来店する。
おまけにスイーツが可愛いと評判で若い女子も多いし、デートに使うカップルもいる。外で待つお客様がいるほどだ。
「なつみちゃん、ガレット用の赤かぶ並べたらホールに回って! 冬美ちゃんがテンパってる!」
オーナーの三川さんが、厨房から私に指示を出す。
「わかりました」
ホールは冬美の他に二十代の女の子がいるが、まだ新人で上手く立ち回れない。(私も新人の類なのだが既にベテラン扱い)
近頃メニューを増やしたことで新人がオーダー間違いをすることが多々にあった。
「私が頼んだパスタランチ、トマトソースじゃなくてクリームソースなんだけど!」
「す、すみません、作り直します」
「この混雑した時に間違えるとかどんだけ迷惑なの。もっとさばけるようになってからホール出なさいね」
中年女性に嫌味を言われる新人、それを側で聞いていた冬美が鬼の顔になる。
「ちょっ、一言多いんじゃな……」
「冬美さーん、3番テーブルオーダーお願いします!」
仕事場では姉をさん付けで呼び、ヤンキー気質があらわになる前にその場から離れさせる。
……やれやれ。
相変わらず血の気多いんだから。
「二時を過ぎると、少し落ち着きますね」
「遅くなったけどこれ食べて」
厨房で皿洗いに回った私に、三川さんがガレットの残りを差し出した。
ガレットとはそば粉で作った生地のクレープで、無塩せきの生ハムやアボガド他新鮮野菜が具になっている美味な料理だ。
「頂きます」
ゆっくり休憩も取れないから、こういう巻いて食べる系はありがたい。頬張って炭酸水で流し込む。
……美味い。
ソースはワインチョコで甘くて大人の味。これ、お客さんとしてゆっくり食べたいわ。
「なつみちゃんが来てから、冬美ちゃんが喧嘩腰になるの減って助かったよ」
三川さんが帽子の下から優しげな目元をのぞかせる。
帽子を取ったら坊主で若く見えるが、恐らく冬美と同じくらいの年齢。バツイチでおおらかで優しい人。
「思ったこと直ぐに口に出しますからね。口開いたら注視しとかないと」
「入ったばっかの頃は、客だけじゃなくて料理人とも揉めてたんもんなー」
「良くクビにしなかったですね」
「俺、シングル・マザーには優しいのよ。独り身の大変さ分かるから。まぁ、うちはもう子供中学生だけど」
「うわ、いいですね」
手がかからなくて。
いや、むしろかかるのか?
「うん、でも子供は小さい時がやっぱり可愛いよ。なつみちゃんとこ生まれて間もないでしょ? そのくらいの時間にタイムスリップしたいもん、俺」
「………そうですか」
やっぱり、男の人も赤ちゃんが可愛いと思うのか。その時期に子供に会わせないとか、私は鬼だろうか………。
ここでも、チクッと胸が痛む。
「三川さーん、外国人のお客様が料理の説明求めてます」
そこへ、ホールの女の子からオーナーが呼ばれる。
「また外国人かぁ。今度はどこ?」
「イギリスだそうです」
「なつみちゃん、また頼っていい?」
オーナーが片手を上げて頼んできた。
「はい、分かる範囲お手伝いします」
外国の観光客も増えてきて、度々こうやって通訳の役割をする。
これもやり甲斐があり、ハードでも続けられる理由の一つだ。
土曜日のランチタイムはてんてこ舞い。
オーガニックブームなうえ、野菜の収穫体験も出来るとあって、親子連れや観光客がひっきりなしに来店する。
おまけにスイーツが可愛いと評判で若い女子も多いし、デートに使うカップルもいる。外で待つお客様がいるほどだ。
「なつみちゃん、ガレット用の赤かぶ並べたらホールに回って! 冬美ちゃんがテンパってる!」
オーナーの三川さんが、厨房から私に指示を出す。
「わかりました」
ホールは冬美の他に二十代の女の子がいるが、まだ新人で上手く立ち回れない。(私も新人の類なのだが既にベテラン扱い)
近頃メニューを増やしたことで新人がオーダー間違いをすることが多々にあった。
「私が頼んだパスタランチ、トマトソースじゃなくてクリームソースなんだけど!」
「す、すみません、作り直します」
「この混雑した時に間違えるとかどんだけ迷惑なの。もっとさばけるようになってからホール出なさいね」
中年女性に嫌味を言われる新人、それを側で聞いていた冬美が鬼の顔になる。
「ちょっ、一言多いんじゃな……」
「冬美さーん、3番テーブルオーダーお願いします!」
仕事場では姉をさん付けで呼び、ヤンキー気質があらわになる前にその場から離れさせる。
……やれやれ。
相変わらず血の気多いんだから。
「二時を過ぎると、少し落ち着きますね」
「遅くなったけどこれ食べて」
厨房で皿洗いに回った私に、三川さんがガレットの残りを差し出した。
ガレットとはそば粉で作った生地のクレープで、無塩せきの生ハムやアボガド他新鮮野菜が具になっている美味な料理だ。
「頂きます」
ゆっくり休憩も取れないから、こういう巻いて食べる系はありがたい。頬張って炭酸水で流し込む。
……美味い。
ソースはワインチョコで甘くて大人の味。これ、お客さんとしてゆっくり食べたいわ。
「なつみちゃんが来てから、冬美ちゃんが喧嘩腰になるの減って助かったよ」
三川さんが帽子の下から優しげな目元をのぞかせる。
帽子を取ったら坊主で若く見えるが、恐らく冬美と同じくらいの年齢。バツイチでおおらかで優しい人。
「思ったこと直ぐに口に出しますからね。口開いたら注視しとかないと」
「入ったばっかの頃は、客だけじゃなくて料理人とも揉めてたんもんなー」
「良くクビにしなかったですね」
「俺、シングル・マザーには優しいのよ。独り身の大変さ分かるから。まぁ、うちはもう子供中学生だけど」
「うわ、いいですね」
手がかからなくて。
いや、むしろかかるのか?
「うん、でも子供は小さい時がやっぱり可愛いよ。なつみちゃんとこ生まれて間もないでしょ? そのくらいの時間にタイムスリップしたいもん、俺」
「………そうですか」
やっぱり、男の人も赤ちゃんが可愛いと思うのか。その時期に子供に会わせないとか、私は鬼だろうか………。
ここでも、チクッと胸が痛む。
「三川さーん、外国人のお客様が料理の説明求めてます」
そこへ、ホールの女の子からオーナーが呼ばれる。
「また外国人かぁ。今度はどこ?」
「イギリスだそうです」
「なつみちゃん、また頼っていい?」
オーナーが片手を上げて頼んできた。
「はい、分かる範囲お手伝いします」
外国の観光客も増えてきて、度々こうやって通訳の役割をする。
これもやり甲斐があり、ハードでも続けられる理由の一つだ。
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