Rabbit-foot

Suzuki_Aphro

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2. No penny, No pardon.

9

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 会計ボタンを押し、ラムネ一本分を除いた合計金額を現金で精算。スーパーを出て駐輪場まで来た。初めて周りの状況を確認する。誰も私を追ってこない。

 成功したんだ。

 今感じているのは、マリアさんとネイルポリッシュを取引した時に似ているただならぬ高揚感。手が震えていたせいで、自転車の鍵を解除するのに手間取った。店員が気づいたとしても、駐車場を出て全力で逃げれば完全にやり過ごせる。早く、早くここから出ないと。

 自転車を後ろへ引き、跨ってペダルを漕ぎ出そうとした瞬間、突然腕を掴まれた。

「ひゃっ! な、何ですか?」

 振り向いた先にいたのは、シワだらけのスーツを着た背の高い中年男性だった。彼は私にだけ聞こえるような小さな声で言う。

「暴れない方が君のためだ」

 怒るでも笑うでもなく、無表情で私の顔を見ている。益々怖くなり必死で手を振りほどこうとするも、ガッツリと掴まれたままビクともしない。そして、またも小さな声で最悪の事態を口にした。

「君、何したか分かってる?」

「え……? あ……えっと……」

 まさか、念入りに確認したはずなのに、目撃者がいたなんて。私は池から顔を出してエサを求める鯉みたいに口をパクパクさせた。一気に追い詰められてしまった。服装からして店員や警備員ではない。もし私服警官だったらもう終わりだ。だけど、悪運は味方をしてくれた。

「見逃してあげる」

「……は?」

「だから、見逃してあげる。その代わり……。言わなくても分かるよね? 君って僕のタイプなんだ」

 初めて男性の表情がにこやかになった。この人は何を言っているんだ。この状況を楽しんでいるのか。

「今、見逃すって……」

「あぁ、言ったよ」

 潔い返事は逆に私を安心させた。この人の言っていることは本心だ。欲求を満たせればいいだけなんだ。

「……本当に約束してくれますか?」

「約束するよ」

 男性は掴んでいた手をそっと外す。

 体を差し出すくらい、なんてことない。先輩に犯された時のように、私だったら耐えられる自覚はあったから、怖いとか恥ずかしいなどといった感情は湧いてこなかった。黙って頷き、大人しく男性の指示に従うことにした。

 場所は男性の部屋だった。既婚者だが単身赴任中で実質一人暮らし状態らしく、衣類は乱雑な状態で床に積まれ、ビールの缶は片付けないまま流しに放置されていた。台所とリビングの間に扉がないせいで、どこにいてもアルコール臭がついてきた。

「緊張しなくていいからね」

 ベッドに座らされ、手慣れた手つきで触れ始めた。あの時と違って、力ずくでもなく愛でるわけでもなく、だけどしっかり避妊はして行為はあっけなく終わった。予想通り嫌悪感はなかった。

「はい、これ」

 別れ際、男性はテーブルの引き出しから茶封筒を取り出し、渡してきた。

「え? これって……」

 中身を確認する。そこには万札が数枚入っていた。

「口止め料……ですか?」

「それもあるけど、まぁ、お礼かな。楽しませてもらったからね」

 万引きを脅しに使えばいいのに、わざわざお金を払うなんて。流石に怖くなり拒否したいという気持ちはありつつ、封筒を返す素振りすらできなかった。バイトする余裕がなく欲しいものもあったため誘惑に負けてしまった。それに、彼にとってこれは日常的なことで、事前に用意していたものだと考えれば、素直に受け取っても罰は当たらないはずだ。

「じゃぁ、遠慮なく……」
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