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2. No penny, No pardon.
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スクールバッグを開け、茶封筒を教科書同士の隙間に押し込む。
マリアさんに二千円でネイルポリッシュを売った時も、母が百万円で私を追い出した時も、そして今も。地獄の沙汰も金次第。手っ取り早く資金を貯めるには売春が一番いい。
私はもらったお金で化粧品を買い揃へメイクを覚えた。スマートフォンは高くて買えなかったから、しばらくは自転車を漕いでネットカフェがある町まで行き、そこで情報収集することにした。やがて未成年でも登録できるマッチングサイトの存在を知り、学生であることを伏せ、興味を示した男性へ総当たりでアプローチをかけた。私の武器は記憶力。相手の好みや趣味を記憶し、また会いたいと思えるような女性を演じてみせた。馬鹿みたいだけど、これが天職なのだと思えてきた。
受験勉強はそこそこに、地元の公立高校へ入学した。偏差値は中の上で、ほとんどの生徒が大学へ進学する。卒業後は就職する気でいたが、元担任教師の勧めもあり受験することにした。進路に関して父は「行きたければ好きにしろ」と放任され、新しい母親からは「いいんじゃない? 嗣乃ちゃん頭いいからね」と知ったようなことを言われた。そんな経済的余裕、ないくせに。
何にしても親には頼れない。大学へ入学するには、授業料を全額免除してもらえる特待生制度を狙うのみ。
最悪な家庭環境とは反面、高校生活は結構楽かった。本来の自分を上手く隠すことにも慣れ、周りの環境のおかげで勉強も捗った。人生で最も普通の女の子でいられたと言える貴重な期間。
後に親友となる佐環との出会いもこの時だった。彼女はかつての同級生、マリアさんのようだった。美しくて頭が良くて、家庭環境に恵まれている。そして、彼女の周りには多くの友人がいた。ただ一つ、マリアさんとの大きな違いは、彼女との友情は金で繋がったものではないということ。
「古味山さん、人数足りないからバレーボールチームに入ってくれない?」
佐環と初めて話したのは、毎年校内で行われているクラス対抗球技大会でのチームの振り分けについてだった。運営と実行は体育委員である佐環の役割だ。昼休みに図書館で本を読んでいた私に、彼女はプリントを見せて「みんなバスケがいいみたいで……」と困ったような表情をして声をかけてきた。プリントに書かれている「バスケ」と「バレー」の二つの欄を見比べると、確かに「バレー」の方の空白が目立っていた。さらに、「バスケ」にあった数名の名前が丸で囲まれ「バレー」へ矢印を引かれている。私は迷うことなく返答した。
「うん、バレーでいいよ」
「ホントに? ありがとう、助かったよ!」
「いいって。私、運動が大の苦手だから役に立たないと思うけど」
「大丈夫、誰も気にしないよ」
「そうかな……。うちのクラスって負けず嫌いっていうか、熱い人が多いような」
「あぁ、言われてみれば。文化部の人たちほとんどいないもんね。古味山さんは何か部活入っていたっけ?」
「ううん、どこにも入っていないよ」
「そっか……。あの、もしよかったら今度一緒にバレーの練習やらない? 嫌なら断ってくれて大丈夫! 少しでも楽しめた方がいいかなってだけで」
マリアさんに二千円でネイルポリッシュを売った時も、母が百万円で私を追い出した時も、そして今も。地獄の沙汰も金次第。手っ取り早く資金を貯めるには売春が一番いい。
私はもらったお金で化粧品を買い揃へメイクを覚えた。スマートフォンは高くて買えなかったから、しばらくは自転車を漕いでネットカフェがある町まで行き、そこで情報収集することにした。やがて未成年でも登録できるマッチングサイトの存在を知り、学生であることを伏せ、興味を示した男性へ総当たりでアプローチをかけた。私の武器は記憶力。相手の好みや趣味を記憶し、また会いたいと思えるような女性を演じてみせた。馬鹿みたいだけど、これが天職なのだと思えてきた。
受験勉強はそこそこに、地元の公立高校へ入学した。偏差値は中の上で、ほとんどの生徒が大学へ進学する。卒業後は就職する気でいたが、元担任教師の勧めもあり受験することにした。進路に関して父は「行きたければ好きにしろ」と放任され、新しい母親からは「いいんじゃない? 嗣乃ちゃん頭いいからね」と知ったようなことを言われた。そんな経済的余裕、ないくせに。
何にしても親には頼れない。大学へ入学するには、授業料を全額免除してもらえる特待生制度を狙うのみ。
最悪な家庭環境とは反面、高校生活は結構楽かった。本来の自分を上手く隠すことにも慣れ、周りの環境のおかげで勉強も捗った。人生で最も普通の女の子でいられたと言える貴重な期間。
後に親友となる佐環との出会いもこの時だった。彼女はかつての同級生、マリアさんのようだった。美しくて頭が良くて、家庭環境に恵まれている。そして、彼女の周りには多くの友人がいた。ただ一つ、マリアさんとの大きな違いは、彼女との友情は金で繋がったものではないということ。
「古味山さん、人数足りないからバレーボールチームに入ってくれない?」
佐環と初めて話したのは、毎年校内で行われているクラス対抗球技大会でのチームの振り分けについてだった。運営と実行は体育委員である佐環の役割だ。昼休みに図書館で本を読んでいた私に、彼女はプリントを見せて「みんなバスケがいいみたいで……」と困ったような表情をして声をかけてきた。プリントに書かれている「バスケ」と「バレー」の二つの欄を見比べると、確かに「バレー」の方の空白が目立っていた。さらに、「バスケ」にあった数名の名前が丸で囲まれ「バレー」へ矢印を引かれている。私は迷うことなく返答した。
「うん、バレーでいいよ」
「ホントに? ありがとう、助かったよ!」
「いいって。私、運動が大の苦手だから役に立たないと思うけど」
「大丈夫、誰も気にしないよ」
「そうかな……。うちのクラスって負けず嫌いっていうか、熱い人が多いような」
「あぁ、言われてみれば。文化部の人たちほとんどいないもんね。古味山さんは何か部活入っていたっけ?」
「ううん、どこにも入っていないよ」
「そっか……。あの、もしよかったら今度一緒にバレーの練習やらない? 嫌なら断ってくれて大丈夫! 少しでも楽しめた方がいいかなってだけで」
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