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2. No penny, No pardon.
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「私はいいけど、手柳さんは大丈夫なの? バレー部って毎日練習してるでしょ?」
「う、うん……。というか、言ったっけ? 私がバレー部に入っていること」
「なんとなく分かるよ。雰囲気とか、髪型とかでね」
私は短くカットされた佐環の髪を指差して言った。
「なるほど。それもそうだね」
彼女は笑いながら片手で頭を触った。この学校のバレー部員は全員、前髪は眉毛の上、後ろ髪は襟にかからない程度で切られた髪型をしている。
「私、帰宅部でいつでも空いているから、学校に来た時にでも声かけてよ。まだスマートフォンとか持っていないからさ」
「オッケー! じゃあまた声かけるから。バレーやろうね、約束だよ」
「うん。約束」
私たちは指切りの代わりに掌を合わせた。私の手はとっくに汚れていて、佐環の手に触れてしまえば彼女を染めてしまいそうだった。だけどその手は、神秘のベールで守られているように美しくて温かかった。
佐環との特訓のかげで、球技大会は充実したものになった。それだけではなく、彼女の影響で私はバレーボールに興味を持ち始めた。ちょうど私たちの高校で練習試合を行うと聞き、練習試合を観に行きたいと言うと「いいけど、弱いからつまらないと思う」と苦笑いされた。それでも他のことをしているより断然よかった。
初めて試合を観た時、ただただ圧倒された。佐環はまだ一年生でありながら、バレー歴が長く部員も少なかったためレギュラーで出場していた。彼女の身長は平均より少し高いくらい。チーム全体でも身長で劣る相手に粘り強さで対抗する姿は、とてもカッコよかった。何より、闘志を燃やす表情の中にバレーを心から楽んでいる気持ちがこちらに伝染してくるようで、私の視線はコートから離れられなかった。
窓から差し込んだ白い光がコートに注がれる。青春を絵にかいたような光景。だけど、憧れはしなかった。憧れたものになれなかった時虚しいし、私はもう覚えてしまったから。純粋に努力してもどうせ叶わないこと。大抵のものは金で買うことが出来るということを。
◇
「ちなみにさ、君は誰がネズミだと疑ってるの?」
ベッドに寝転がったまま彼が訊いてきた。
一瞬ネズミが何のことなのか分からなかったが、そう言えば、伊吹の告発ブログで裏切り者のことをネズミと書いていたと思い出す。私は乾かしたての髪をくしでとかしながら言う。
「……興味ないって言ってなかった?」
「マリアちゃんが炎上していることに関してはって意味。パパ活していたところで文句言ってる人の人生に関係ないのに。あ、君がネズミでも俺は構わないよ。ただ、理由が気になっちゃって」
「それが誰なのか知らない。強いて言うなら、一人だけ怪しいと思ってる人物はいる」
「へぇー」
体を私の方へ向ける。話の続きが待ちきれないと言うような目つきだった。
「自分は本当のことを言っていると主張しているけど、彼が正直者なら私は裏切り者ってことになる」
「彼って?」
「久目颯」
「どうしてそう思うの? 何か恨みでもある?」
「なんとなく。ただ、私や伊吹のことを裏切りものにしようと必死になっているところが逆に怪しく見えるから、かな」
「なるほどね。そんで、その久目くんってどんな人?」
途切れない質問に私はため息をつく。私を家に呼んだ理由の半分はこのためだったのか。
「……そんなに知りたいなら話すよ。私たちの出会いからP市死亡ひき逃げ事件に至るまで」
「う、うん……。というか、言ったっけ? 私がバレー部に入っていること」
「なんとなく分かるよ。雰囲気とか、髪型とかでね」
私は短くカットされた佐環の髪を指差して言った。
「なるほど。それもそうだね」
彼女は笑いながら片手で頭を触った。この学校のバレー部員は全員、前髪は眉毛の上、後ろ髪は襟にかからない程度で切られた髪型をしている。
「私、帰宅部でいつでも空いているから、学校に来た時にでも声かけてよ。まだスマートフォンとか持っていないからさ」
「オッケー! じゃあまた声かけるから。バレーやろうね、約束だよ」
「うん。約束」
私たちは指切りの代わりに掌を合わせた。私の手はとっくに汚れていて、佐環の手に触れてしまえば彼女を染めてしまいそうだった。だけどその手は、神秘のベールで守られているように美しくて温かかった。
佐環との特訓のかげで、球技大会は充実したものになった。それだけではなく、彼女の影響で私はバレーボールに興味を持ち始めた。ちょうど私たちの高校で練習試合を行うと聞き、練習試合を観に行きたいと言うと「いいけど、弱いからつまらないと思う」と苦笑いされた。それでも他のことをしているより断然よかった。
初めて試合を観た時、ただただ圧倒された。佐環はまだ一年生でありながら、バレー歴が長く部員も少なかったためレギュラーで出場していた。彼女の身長は平均より少し高いくらい。チーム全体でも身長で劣る相手に粘り強さで対抗する姿は、とてもカッコよかった。何より、闘志を燃やす表情の中にバレーを心から楽んでいる気持ちがこちらに伝染してくるようで、私の視線はコートから離れられなかった。
窓から差し込んだ白い光がコートに注がれる。青春を絵にかいたような光景。だけど、憧れはしなかった。憧れたものになれなかった時虚しいし、私はもう覚えてしまったから。純粋に努力してもどうせ叶わないこと。大抵のものは金で買うことが出来るということを。
◇
「ちなみにさ、君は誰がネズミだと疑ってるの?」
ベッドに寝転がったまま彼が訊いてきた。
一瞬ネズミが何のことなのか分からなかったが、そう言えば、伊吹の告発ブログで裏切り者のことをネズミと書いていたと思い出す。私は乾かしたての髪をくしでとかしながら言う。
「……興味ないって言ってなかった?」
「マリアちゃんが炎上していることに関してはって意味。パパ活していたところで文句言ってる人の人生に関係ないのに。あ、君がネズミでも俺は構わないよ。ただ、理由が気になっちゃって」
「それが誰なのか知らない。強いて言うなら、一人だけ怪しいと思ってる人物はいる」
「へぇー」
体を私の方へ向ける。話の続きが待ちきれないと言うような目つきだった。
「自分は本当のことを言っていると主張しているけど、彼が正直者なら私は裏切り者ってことになる」
「彼って?」
「久目颯」
「どうしてそう思うの? 何か恨みでもある?」
「なんとなく。ただ、私や伊吹のことを裏切りものにしようと必死になっているところが逆に怪しく見えるから、かな」
「なるほどね。そんで、その久目くんってどんな人?」
途切れない質問に私はため息をつく。私を家に呼んだ理由の半分はこのためだったのか。
「……そんなに知りたいなら話すよ。私たちの出会いからP市死亡ひき逃げ事件に至るまで」
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