Rabbit-foot

Suzuki_Aphro

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2. No penny, No pardon.

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  ◇

 大学一年目の時、最初に知り合ったのは伊吹だった。きっかけは同じ演劇サークルに入ったこと。第一印象は、普通。どこにでもいそうな平凡な顔立ちとスタイル。特徴と言えば、常にTシャツに黒のジーパンを着てくるところ。最初は挨拶を交わした程度でそこまで親しくなかった。距離を縮めることになったのは、一緒にミュージカルを観に行ってからだった。

 ――ごめん、嗣乃。まだ熱が下がらなくて行けそうにない……。チケット代払うから、本当にごめんね!

 ――大丈夫、大丈夫! 気にしないでよ。

 佐環からのメッセージに気づいて肩を落とした。午後から佐環と一緒にミュージカルを観る予定だったのに、楽しみがなくなってしまった。

 彼女とは偶然、一緒の大学へ進学した。二人で約束した訳じゃない。私がQ大学を受けたのは、キャンパスが都心にあって、特待生試験に最も合格しやすそうだったから。試験は無事合格。目に優しい木々や改築したての講堂、近くにはオシャレなカフェがある、理想の場所だった。そのおかげで子どもの頃に願っていた夢は半分くらい実現した。佐環の方は、第一志望に落ちてしまったため、第二志望であるこの大学へ進学することにしたと悔しさを滲ませていた。彼女には申し訳なかったけど、同じ大学に来てくれたことを嬉しく思ってしまった。高校時代、彼女はバレーで忙しくて遊ぶ暇なんてなかったから、大学に入ったらたくさん思い出を作りたい。

 大学の図書館を出ると、雲一つない空から少し冷えた北風がすごい勢いで吹いてきた。やっと冬が来る。Q市は雪なんて滅多に降らない温暖な地域だけれど、冬にしては暖かい日が続いていた。スカートなんて履いてくるんじゃなかった。膝丈のスカートではさすがに寒い。

 急に暇になった午後をどう過ごそうかと考えた。勉強はもう飽きたし、バイトもしていない。今のところする必要がない。パパ活は順調に進んでいるから。

 一旦食堂へ向かう。都会で生活していくには想像以上に値段がかかる。食費を抑えるには大学の食堂を利用するのが一番だった。構内にいる人たちはまばらだった。混みすぎず騒がしすぎずでちょうどいい。気づけば午後二時になろうとしていた。

 メニューを見上げどれにしようか迷っていると「あの、もしかして古味山こみやまさん?」と誰かに呼ばれ、振り返る。

「やっぱり古味山さんだ。俺のこと覚えてる?」

「覚えてるよ! 確か名前は……耳塚くん」

「よかった、覚えていてくれて。あ、名字じゃなくて伊吹って呼んでよ。同期でしょ?」

 その日も例に漏れず、Tシャツに黒のジーパン。白地のシャツには"to be or not to be"という字が筆記体でプリントされていた。

「それにしても、偶然だね。こんな所で会うなんて。もしかして伊吹もご飯まだだった? よかったら一緒に食べようよ」

「いいの? じゃあご一緒しようかな」

 伊吹とは学部が違うためサークル活動以外では滅多に会わない。これも何かの縁。ついでに彼をミュージカルに誘おうと思った。それに、彼がオッケーしてくれれば約束を断る理由が作れる。
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