【番外編更新予定】酔いどれおじさんは、若き騎士に求愛される

泉あけの

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第1章 酔いどれおじさんと青年

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 そして疑問が浮かんだ。

(どうして急にそんなことを?)

 レオナルドにとってロランは先ほど出会ったいわば他人だ。

「少しだけでもいいので考えてくれませんか」

 頭を悩ませていると念を入れるように付け加えられる。それにルカや孤児院に残してきた子ども達がいる手前、ロランは早くに結論を出さなければならなくなった。

「......とりあえず、お話しを聞くだけならいいですよ」
「わかりました。では後日ご連絡をさせていただきますね」

 ロランはレオナルドに孤児院の住所を伝えるとそっと握手をされた。律儀な人だとロランは思った。

「ルカを保護してくださり本当にありがとうございます。ほら、ルカもお礼を言って」
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして。でもこれからは勝手に外に出たらいけないよ? わかった?」
「うん。わかった」

 いまだにレオナルドの腕の中にいるルカは申し訳なさそうに謝罪をした。レオナルドはぽんとルカの頭を撫でた。
 
「では、またお会いしましょう」

 レオナルドはどこかの国の王子のように言い残して優雅に去っていった。

「ルーカー! どこいってたの! 心配した!」

 ロランとルカが孤児院へ帰ると子ども達が熱烈に出迎えた。

 ルカがいなくなってしまったと伝えにきたマティは人一倍心配していたようだ。

「ごめん、マティ」
「勝手にどっかいっちゃだめだよ。変な人にさらわれてもおかしくないんだから!」
「うん......」

 孤児院へ帰ってきたルーカスにもこってり叱られたルカはすっかり傷心していた。
 
 加えて仲の良いマティにまで言われてしまったため、かなり反省しているのがしょんぼりとした背中から伝わってくるようだった。

「みんなもごめんなさい」

 泣くことを我慢しながらルカが言うと、マティはルカをぎゅっと抱きしめた。

「本当だよ! 心配したの。だから無事でよかった!」
「うん、ありがとう」

 二人の周りに集まっていた子ども達も次々と無事でよかったと伝えていた。これにて騒動は無事閉幕した。
 
 ロランもやっと胸を撫で下ろすことができた。

......

「ロラン、ちょっといいかな」
「大丈夫ですよ」

 ルカが孤児院から脱走する事件が起こったその夜、部屋に戻ろうとしていたロランはルーカスに呼び止められた。
 
 ルーカスの自室で椅子に座るようにと促される。

 すでに用意されていたコーヒーをルーカスは差し出した。

「ありがとうございます」
「いいや。今日はルカの件で大変だっただろう。ご苦労さま」
「そんな。そもそも俺がもっとしっかり子ども達のことを見ていられれば起きなかった出来事です。そのせいでルカや他の子達にも怖い思いをさせてしまいました」

 暖かいカップを両手で包み込みながらロランは本音をこぼした。今日の騒動はルーカスの留守を任されていたロランが役目を果たすことができなかったことで起きた。

 マティが言っていたようにルカが孤児院から一人で出ていったことで何らかの事故や事件に巻き込まれていたかもしれない。
 
 今回は善良な人たちが助けてくれたからことなきを得ることができた。しかしそれはただの偶然に過ぎないのだ。
 
「君が君自身を責めてしまうのはわかるよ」
「本当にルカには悪いことをしてしまいました」

 今になって恐怖がやってきたのだろうか。カップを持つ手が震えていた。
 
「確かにそうかもしれない。でもそれで君だけを責めてしまうのは違うかな」
「違う?」
「子ども達はまだ幼い。好奇心に抗うことは難しいだろうね。でも君の目が不自由で、できないことが多いことをあの子達は知っているんだ。だからちゃんと考えなければいけなかった」
「......」

 子どもが冷静に状況を判断して決断を下すことは難しい。それは彼らの心体が成長過程にあるからだ。
 
 だが他者を思いやる心は持っている。好奇心を相手のために少しだけ抑えること。思いやりの正しい使い方を学ぶことが大切だ。
 
「ルカにとっても今回のことはいい経験になっただろう。私がルカを怒った時、彼はなんて言ったと思う?」
「......何でしょう。わかりません」

 孤児院の外に飛び出していって反省している、または外の世界でたった一人で怖かっただろうか。
 ロランには想像もつかなかった。

「ロランさんが探しに来てくれて嬉しかったけど、とっても悪いことをしたような気持ちになったと言っていたよ。ルカがそう話してくれたのは君と一緒に生活を送る中で、君にとってが大変だと言うことを知っていたからだ」
「ルカがそんなことを言っていたんですね」
「うん。だからあまり自分を責め過ぎないでくれよ。もちろん過失がなかったとは言えない。でも、人間は誰しも一人でやれることには限界があるんだから」

 ルーカスの言葉が胸に沁みた。

「はい。ありがとうございます、ルーカスさん」
「いいや、私は何もしていないよ。それにこの孤児院の誰かに危害を加えることは私が許さない。もしも危険な目に遭っていたとしたら......私は全力で助けに行くだろうからね」
 
 普段と変わらない声色でありながら、その奥に確かな熱があった。
 
 ルーカスは元軍人だったと孤児院に来る前にユーティスから聞いた。
 
 ロラン達が住んでいる場所は国の西部に位置する辺境領だ。国境付近に位置しているため戦争が起これば前戦地となりうる。だから元軍人がいたとしても何ら不思議ではない。
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