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第3章 再び、辺境領へ
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扉が開けられ、とうとう摘み出されるロラン。ここまで酔っ払いの演技が上手いのは天性の才能だ。
「高貴な方とはリエト辺境伯のことでしょうか?」
酔いが覚めてしまいそうなほど冷たい声の主はレオナルドである。
「誰だ、貴様は!?」
「そこに引きずられている方の知り合いとでも言いましょうか。それと、今日はあなた方に会いたいという方をお連れしましたよ」
「はあ?」
「俺だよ」
「モリス!」
モリスは辺境領の商人だ。顔が広く、この地域の商人たちとはほとんど顔見知りである。
それゆえに多くの情報が入り、失踪事件をいち早く感知したのだ。
事情を知らない商人の男は嬉しそうにモリスに話しかけた。
「お前、生きていたのか! 顔を見なくなったっからてっきり……」
「俺を勝手に殺すな。ところでお前、こんなところで何をしている」
「いいところの貴族と取引をしているんだ」
「それは、リエト辺境伯のことか?」
「さすがモリス。耳がはやい。そうだよ、何ならお前も取引に参加するか?」
言質はとった。モリスはレオナルドに目配せをした。
「するわけねえだろ」
その言葉を合図にして、モリス、レオナルド、そしてモリスの部下たちが一斉に建物の中に入っていった。
そして手際よく取引に関連するものを押収した。
「あんたがリエト辺境伯家の人間か?」
「……お前のような平民に教えることなどない」
「ふん、まあいい。お前たちの罪はすでに国王の前で暴かれている。大人しく裁かれるのを待つんだな」
「そんな戯言信じるとでも思うのか? はったりだろう」
「ブルーナ侯爵家と言えばわかるか。あんたのところのご当主さまとバチバチだろうからな。大人しく観念しろ」
モリスに言われても半信半疑の表情だった辺境伯家の使者はレオナルドに家紋の入った印を見せられて顔を青くした。
「ああ……」
「逃げられると思うなよ。あんたには聞きたいことがたくさんある」
「うるさい、うるさいっ! この平民ごときが」
“吹き飛べ”
使者といえど貴族の端くれである彼は、最後の足掻きに詠唱を使った。
“防御”
しかしそれは封じ込められてしまった。
「ふう、もしもの時のために侯爵さまが協力者を連れて行けと指示をくださってよかったです。ありがとうございます、協力者さん」
「……いえ」
「それでは撤収するといたしましょう。いいですか、モリスさん?」
「ああ、行くか。警備隊に引き渡す前に、たっぷりと借りは返させてもらう。覚悟するんだな」
モリスたちに確保された使者はもはや抵抗しなかった。
「あの、モリスさん一体これは」
「これは、じゃねえ。お前たちは騙されてたんだよ。商人ならそれくらいわかれ。馬鹿が」
あっけに取られている商人たちをモリスはボカリと殴っていった。そしてビシッとリエト辺境伯家の使者を指差した。
「お前たちはこいつに商品もろとも隣国に売り飛ばされようとしていたんだよ」
「え、そうなのか!?」
「まったく、どうしてここまで危機感がないんだ?」
呆れるモリスといまだに状況を把握しきれていない商人たち。
システリア王国の識字率はいまだ高くはない。それは国民の学力にも直結している。
知識を得る機会がない人間は、社会的立場が低くなることが多い。
今回の事件はそれを露骨に示したものだった。
無知は時に罪を呼び寄せるとはよく言ったものである。彼らは意識なく戦争の準備に加担させられていたのだ。
「行くぞ」
使者はそれ相応の罰が下されるだろう。だが商人たちはどうだろうか。
それを知る術がロランにはない。おそらくライオネルやレオナルドも知らせるつもりはないだろう。
どこまでいっても、平民と貴族という関係は変わらない。感情だけではどうすることもできないことが世の中にはたくさんある。
「おい、ロラン」
「なんだ」
邪魔にならないように扉付近で待機していたロランにモリスが声をかけた。
「礼を言う。正直、お前の提案がなければこんな結末は迎えられなかった。あのままだったら俺はたぶん、今空の上だった」
「いいって、礼は侯爵さまに伝えてくれ。この結果を導いたのは彼の方の采配のおかげだ」
「そうかよ。……あと、これを返す」
ポケットの中からハンカチを取り出してあるものを取り出した。それはロランが王宮の面会室でモリスに渡したプラチナのネックレスだった。
「もうこれは必要ねえからな」
「いいのか」
「ああ」
信用してもらうための材料として差し出したものだ。まさか帰ってくるとは思わなかった。大切に受け取りそっと胸に当てた。
「ありがとう。これは本当に大事なものだったんだ」
それを最後にモリスたちは準備していた馬車に乗り込んで行った。
その最後にレオナルドがいた。
「ロランさんはこの後どうしますか?」
「私も皆さんと一緒に行くつもりでした」
「そうですか。では行きましょう」
レオナルドについて行こうとしたが、くんっと袖を引っ張られた。
「協力者さん?」
「……」
ロランは立ち止まった。その様子を見ていたレオナルドは仕方ないと首を横に振った。
「協力者さんは行きたくないみたいですね。申し訳ありませんが彼についていてあげてください」
「え? ちょっとデューラ卿どう言うことか説明してください」
「説明は協力者さんが教えてくれるでしょう。ほら、いいかげん腹を括ってください」
レオナルドは協力者の肩をぽんぽんと叩いて、そのまま馬車に乗り込んだ。
「高貴な方とはリエト辺境伯のことでしょうか?」
酔いが覚めてしまいそうなほど冷たい声の主はレオナルドである。
「誰だ、貴様は!?」
「そこに引きずられている方の知り合いとでも言いましょうか。それと、今日はあなた方に会いたいという方をお連れしましたよ」
「はあ?」
「俺だよ」
「モリス!」
モリスは辺境領の商人だ。顔が広く、この地域の商人たちとはほとんど顔見知りである。
それゆえに多くの情報が入り、失踪事件をいち早く感知したのだ。
事情を知らない商人の男は嬉しそうにモリスに話しかけた。
「お前、生きていたのか! 顔を見なくなったっからてっきり……」
「俺を勝手に殺すな。ところでお前、こんなところで何をしている」
「いいところの貴族と取引をしているんだ」
「それは、リエト辺境伯のことか?」
「さすがモリス。耳がはやい。そうだよ、何ならお前も取引に参加するか?」
言質はとった。モリスはレオナルドに目配せをした。
「するわけねえだろ」
その言葉を合図にして、モリス、レオナルド、そしてモリスの部下たちが一斉に建物の中に入っていった。
そして手際よく取引に関連するものを押収した。
「あんたがリエト辺境伯家の人間か?」
「……お前のような平民に教えることなどない」
「ふん、まあいい。お前たちの罪はすでに国王の前で暴かれている。大人しく裁かれるのを待つんだな」
「そんな戯言信じるとでも思うのか? はったりだろう」
「ブルーナ侯爵家と言えばわかるか。あんたのところのご当主さまとバチバチだろうからな。大人しく観念しろ」
モリスに言われても半信半疑の表情だった辺境伯家の使者はレオナルドに家紋の入った印を見せられて顔を青くした。
「ああ……」
「逃げられると思うなよ。あんたには聞きたいことがたくさんある」
「うるさい、うるさいっ! この平民ごときが」
“吹き飛べ”
使者といえど貴族の端くれである彼は、最後の足掻きに詠唱を使った。
“防御”
しかしそれは封じ込められてしまった。
「ふう、もしもの時のために侯爵さまが協力者を連れて行けと指示をくださってよかったです。ありがとうございます、協力者さん」
「……いえ」
「それでは撤収するといたしましょう。いいですか、モリスさん?」
「ああ、行くか。警備隊に引き渡す前に、たっぷりと借りは返させてもらう。覚悟するんだな」
モリスたちに確保された使者はもはや抵抗しなかった。
「あの、モリスさん一体これは」
「これは、じゃねえ。お前たちは騙されてたんだよ。商人ならそれくらいわかれ。馬鹿が」
あっけに取られている商人たちをモリスはボカリと殴っていった。そしてビシッとリエト辺境伯家の使者を指差した。
「お前たちはこいつに商品もろとも隣国に売り飛ばされようとしていたんだよ」
「え、そうなのか!?」
「まったく、どうしてここまで危機感がないんだ?」
呆れるモリスといまだに状況を把握しきれていない商人たち。
システリア王国の識字率はいまだ高くはない。それは国民の学力にも直結している。
知識を得る機会がない人間は、社会的立場が低くなることが多い。
今回の事件はそれを露骨に示したものだった。
無知は時に罪を呼び寄せるとはよく言ったものである。彼らは意識なく戦争の準備に加担させられていたのだ。
「行くぞ」
使者はそれ相応の罰が下されるだろう。だが商人たちはどうだろうか。
それを知る術がロランにはない。おそらくライオネルやレオナルドも知らせるつもりはないだろう。
どこまでいっても、平民と貴族という関係は変わらない。感情だけではどうすることもできないことが世の中にはたくさんある。
「おい、ロラン」
「なんだ」
邪魔にならないように扉付近で待機していたロランにモリスが声をかけた。
「礼を言う。正直、お前の提案がなければこんな結末は迎えられなかった。あのままだったら俺はたぶん、今空の上だった」
「いいって、礼は侯爵さまに伝えてくれ。この結果を導いたのは彼の方の采配のおかげだ」
「そうかよ。……あと、これを返す」
ポケットの中からハンカチを取り出してあるものを取り出した。それはロランが王宮の面会室でモリスに渡したプラチナのネックレスだった。
「もうこれは必要ねえからな」
「いいのか」
「ああ」
信用してもらうための材料として差し出したものだ。まさか帰ってくるとは思わなかった。大切に受け取りそっと胸に当てた。
「ありがとう。これは本当に大事なものだったんだ」
それを最後にモリスたちは準備していた馬車に乗り込んで行った。
その最後にレオナルドがいた。
「ロランさんはこの後どうしますか?」
「私も皆さんと一緒に行くつもりでした」
「そうですか。では行きましょう」
レオナルドについて行こうとしたが、くんっと袖を引っ張られた。
「協力者さん?」
「……」
ロランは立ち止まった。その様子を見ていたレオナルドは仕方ないと首を横に振った。
「協力者さんは行きたくないみたいですね。申し訳ありませんが彼についていてあげてください」
「え? ちょっとデューラ卿どう言うことか説明してください」
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