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第2章 冒険記

Chapter30 ヴァルハラートの憂鬱

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 朝になった。
ルディースが目を覚ますと眠っているアークトゥルスが見えた。
「ふふ…やはりアークトゥルスの治癒能力は凄いな」
ルディースは起き上がりその寝顔を見て笑う。
不思議と痛みも無く身体が軽く心が晴れていた。

「ん?ルディース…身体は大丈夫か?」
アークトゥルスは目が覚めてルディースを心配する。

「ああ、すっかり良くなったよ。お陰で眠い」
ルディースは言い微笑む。

「…そうか。良かった」
アークトゥルスはホッとして微笑む。

そして起き上がりベッドから出る。
ルディースも後に続く。

ルディースがローブを脱ぐとアークトゥルスはドキっとして顔が熱くなり思わず見をそらす。
(ルディースは元から綺麗だったが…急に艶っぽさが増して…駄目だ!余り見ると押し倒したくなる)

「?」
ルディースは首を傾げローブを着る。

部屋から出るとセオドアが待っていた。
三人は階段を降りるとヴァルハラート以外皆は座っていた。

「あれ?ハラートは?」
ルディースはエルセンに聞く。

「あ、おはよ~ルディース。もうそろそろ起きてくんじゃねぇ?」
エルセンがそう言うとヴァルハラートは、あくびをしながらやってくる。

「…おはよ」
ヴァルハラートはルディースの肩をポンと叩いて下に降りる。

「?」
ルディースはヴァルハラートが暗い顔をしているので首を傾げる。

ヴァルハラートは椅子に座って肘をつくと昨日の夜の事を思い出す。

ヴァルハラートはいち早くルディースが危険な事に気づき瞬間移動しようとした。
急にジークリフトに肩を掴まれた。

『ジーク?…何故お前が止める?…ルディースが犯されてもいいのか?』
ヴァルハラートは意外な人物に止められ少し混乱する。

『…絶対に手を出すな。それしか言えぬ』
ジークリフトは冷静に言う。

『はぁ?何を訳わからない事を言っているんだ?お前はルディースが可愛く無いのか?』
ヴァルハラートは頭に手を掛けながら言う。

『…可愛く無い訳無かろう!』
そう言うジークリフトは悔しそうに拳を握る。

『じゃあ何故?』
ヴァルハラートは更に問い詰める。

『…今は言えぬ。もう一度言う!静観しろ!分かったな!』
ジークリフトはそう言いスッと瞬間移動する。
(ジークも何かあるなら言ってくれたっていいだろう?あの光景をずっと見せつけられる身にもなれよ!)
ヴァルハラートはムスッとする。

「…ラート?ハラート?」
ルディースはそう言いヴァルハラートの顔に近づく。

「ん?ああ…ちと考え込んでた。何だ?お前顔が近いぞ!」
ヴァルハラートはそう言いルディースをグイッと遠ざける。

「はいはーい。食事出来たから、こっちに座ってね~」
エルセンは料理をテーブルに置いていく。

「アース!あんたは床に座って!貴方は何にもしてないのだから!」
アリムレスはアースを床に座らす。

『ギュッギュッ』
隣に居たディレンがとても嫌がる。

食事が置かれ皆席に着く。

「これからどうするんだ?」
ヴァルハラートはルディースに言う。

「エレンディースから黒水晶ディラクトを引き離したい。…丁度〝黒水晶ディラクトを取り戻して欲しい〟って依頼もあるしアークトゥルスと共に行動しようと思う」
ルディースはそう言い白身魚のソテーを食べる。

「分かった。俺はお前の保護者だからな勿論付いて行くぞ」
ヴァルハラートはルディースに言いローストビーフとレタスのサンドイッチを食べる。

「私も主人に今の現状を見せる様に言われているので共に同行しよう」
ヴェルニクスも言いラザニアを食べる。

「私もルディースに付いて行く!これは私の使命です!」
アリムレスはそう言いクロックムッシュを食べる。

「あの…私も付いて行って宜しいでしょうか?武器もちゃんと持って来ます!」
セナンディアスは手を組みルディースに聞く。

「ああ、心強いよ」
ルディースはセナンディアスに微笑む。

「あの…ロンドさん…俺」
エルセンは下を向きながらロンドに言う。

「行きたいんだろう?行きなさい」
ロンドは優しくエルセンに言う。

「うん!」
エルセンは顔を上げニコと笑ってトカゲの丸焼きをほうばる。

「そうだエルセン、ルディース、ヴァルハラートに私からの報酬がある!食べ終わったら渡すね。ちょっと用意してくるよ」
ロンドはそう言い奥の部屋に行く。

皆が食べ終わり片付ける。

ロンドは箱を抱えて持ってきて一人一人に置いていく。

三人はそれぞれ箱を開ける。

「これはサークレット…」
ルディースは言い付けてみる。

「様々な形に変わるサークレットだよ。付属で色んな能力が付けられるよ」
ロンドは笑顔で言う。

「そんな高価な物ありがとうございます」
嬉しそうにルディースは言う。

「すげぇ豪華なネックレス。俺好みだ」
ヴァルハラートは上機嫌にネックレスを付ける。

「水を纏うネックレスだ。自動的に水の守りが発動する」
ロンドは説明する。

「効果も俺好み」
ヴァルハラートは笑って言う。

「この瓶は?」
エルセンは黒い液体の入った瓶を持って言う。

「それはねアリオンという国で言う〝醤油〟という大豆で作った調味料だよ。丁度商人が来ててね二万Gだったかな?」
ロンドはそう言うとアリムレスが急に立つ。

「2まっ…それは…二百…あっ何でもありません」
アリムレスは言いかけて止めた。

報酬にケチをつけるのは悪いと思ったのだ。

「わぁい!ありがとう!そんな凄い調味料何に使おうかな」
エルセンは無邪気に喜ぶ。

ロンドもその姿を見て微笑む。

(二百Gなんだな…)
聞こえていたルディース、ヴァルハラート、アークトゥルス、セオドア、ヴェルニクスは思った。
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