君の行く末

常森 楽

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いつか、君を傷つけてしまうんじゃないかと ずっと私は震えてる。
君はそのことにも気づかずに、日だまりみたいな笑顔で 私をあたためようとするんだ。

実結は、うなるようにモゴモゴと何かを言う。
口元に耳を近づけると「まぶしい」と言ってるようだった。

「実結、起きて」


さくらが実結をサークルの集まりに連れてきたとき、すぐに思い出せなかったのは、話したことが1回しかなかったから。

正確には、顔に見覚えはあったけど、名前が何で どこで出会ったのかを思い出せなかった。

高校で、体育祭の準備を他クラスと合同でしているときだった。
別のクラスだった実結と一緒に、倉庫から道具を持ってくるように言われて、探していた。

「体育祭、好き?」
何か話題を、と思って 名前も知らない彼女に質問した。

「あんまり、かな」
少し気まずそうに答える彼女は、学校ではあまり目立たない人だった。
きっと仕事を押し付けられたんだろう。

「だよね、私もあんま好きじゃない。暑いしね」
私が笑うと、彼女も笑ってくれる。

「その上、応援団まですることになってさー……大声出すのとか好きじゃないんだよなあ。嫌だなあ」
愚痴をするのは、誰かと仲良くなるには手っ取り早い方法だ。

重い愚痴にならないように、軽めに話したつもりだった。
でも、彼女は少し深刻そうに何かを考え込んだ。

ちなみに「体育祭が好き」と答えられていたら、それにも合わせる予定だった。
暑いのと走るのが嫌いな私だけど、パン食い競争はタダでパンが貰えるから好きだし、涼しいところでやる分には スポーツは好きだから、なんとでも言える。

「宝城さんがいると、きっとみんな元気になるんだよ。だから、応援団を頼まれたんじゃないかな」

予想外の回答に、驚く。
普通なら「それは災難だったね」みたいな返事がきて、私も相手に「お互い体育祭委員になるなんて災難だったね」と言う流れだと思っていたから。

「そうかな?都合の良いように使われてるだけだったりして……」
今までこんな風に、自分のマイナスな考えを誰かに話したことはなかった。
床にしゃがんでる彼女が、上目遣いに私を見る。

「私は、宝城さんの声、好きだよ」
「え?」
「都合の良いように使われてるかどうかはわからないけど……私は、好きだよ」

「そっか……ありがとう」
素直に嬉しかった。
「声が好き」なんて言われたのは初めてで、不思議と、心底嫌だった応援団も「やるか」という気持ちになる。

「なんか、やる気でてきた!」
止めていた手を動かす。

「宝城、東雲、まだか?」
先生が体育倉庫を覗き込む。
ちょうど道具が見つかったときだった。

それから、準備する種目の担当が別々になったから、話すことはなかった。
クラスも違って 会うこともほとんどなかったし、次第にそのときの記憶は薄れていった。


「実結」
耳元で囁くと、彼女はパチリと目を開けた。

「シャワー浴びよ」
数回まばたきをして、勢いよく体を起こす。

「寝ちゃってたーーー、ごめんね」
すごく申し訳なさそうに謝るから、可笑しくなった。

「大丈夫だよ。イくと疲れるしね」
わざと思い出させるように言うと、顔を真っ赤にしてポカポカ叩いてくる。

「シャワー浴びよ」
彼女の両手を掴んで、顔を近づけた。
目を大きく開いて、ただでさえ赤く染めていた顔が、照れて火が噴きそうなくらいだ。

「い、一緒に入るの?」
「嫌だ?」
「嫌っていうか、恥ずかしい……から」
「じゃあいいね。一緒に入ろ」

少し強引に彼女を引っ張っていく。

「脱がせてあげようか?」
背後から抱きしめた。

「自分でできるよー!」
慌てて私から距離をとる。

私から服を脱がないと、彼女は永遠に脱がないだろう。
私はマイペースに、服を脱いでいく。
彼女は恥ずかしそうにその様子を見て、いそいそと服を脱ぎ始めた。
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