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1.恋愛初心者
9.好きってなに?
電車に揺られる帰り道は、2人とも疲れきっていて寝てしまった。
気づけば私は彼女の肩を借りていて、彼女は私の頭に頭を重ねていた。
起きた瞬間は、もう降りる駅だと慌てて何も思わなかったけど、改札を通る時には少し気恥ずかしさを感じた。
永那ちゃんは、マンションの前まで送ってくれた。
「また月曜ね」
外灯に照らされた彼女の笑顔は、なんだか少し濃艶に見えた。
ふわふわした気持ちのまま、玄関を開ける。
「ただいまー!」
私が言うと、誉が走って寄ってくる。
「おかえり!楽しかった?」
目をキラキラさせながら聞いてくるから、少しだけ気持ちが現実に引き戻される。
「楽しかったんだ~!楽しかったんだね、姉ちゃん!ニヤニヤしちゃってるもん」
ぷくく…と猫背になって笑う誉の頭をチョップする。
「いって!なんだよー!」
「いちいちお姉ちゃんをからかわないの」
サンダルを脱いで、フンと顔をそらして誉の横を通り過ぎていく。
「ねえ、彼氏?本当は彼氏?」
私の口元の辺りまで身長が伸びた誉が、ひょこっと背後から顔を出す。
「え!お姉ちゃん、彼氏できたの!?」
リビングから顔を出すお母さん。
「違うよ、友達。誉が勝手に言ってるだけ」
「えー、でも姉ちゃんがこんなお洒落して行くなんて初めてだよ?」
誉がそう言って、お母さんが私の服装をまじまじと見る。
「確かに」
顎に手を当て、頷いている。
「いや、本当に…相手、女の子だよ!」
そう自分で大声を出して、胸がズキリと痛む。
女の子じゃダメなの?…恋人って“彼氏”じゃなきゃ、ダメなの?
「なんだー、つまんねー」
誉は床に転がって、漫画を読み始める。
「いやあ!でも!!穂、かわいい~!やっぱりお母さんの選んだ服、よく似合うわあ」
頬に手を当て、お母さんは蕩けそうな笑みを浮かべる。
「ん?姉ちゃん、なんか買ったの?」
「服…友達が選んでくれたの」
袋を開けて、服を取り出す。
薄いベージュの丸襟のシャツ。丸襟の端の部分にはレースがあしらわれている。シャツはアクセントにくるみボタンが施されている。半袖の袖部分がクシュッとしていて可愛い。セットで、足首丈のスカートも買った。
誉はすぐに興味が失せたようで、また漫画に視線を戻した。
「わあ、可愛いじゃない」
お母さんが微笑む。
「穂は服にほとんど興味ないもんねえ。良いお友達ができて良かったね」
そう言って、夕飯を机に並べてくれる。
「誉、食器くらい並べなさい」
私が言うと、誉はわざとらしく「ハァ」とため息をついて立ち上がる。
人の振り見てなんとやら…。誉が私のため息を真似している。この癖は本当に良くないな。なんて思ったのに、私は誉のため息を聞いて自分でも「ハァ」とため息をついてしまった。
首をぶんぶん振って「手洗ってくる」と告げた。
荷物を部屋に置いて、洗面台に立つ。
鏡に映った自分の顔を見る。
目に入るのが嫌で、瞼よりも上で切り揃えられた前髪。美容院が苦手で、いつも自分で切っている。だから髪が長いのも、単純に放置しているだけ。
幸いくせ毛じゃないから、そんなに手入れをしなくてもなんとかなっている。
運動部でもないし、休日も家にこもってることが多いから日焼けする機会もない。
彼女は、そんな私なんかを好きだと言ってくれた。
お洒落でもなんでもない、同級生と楽しくコミュニケーションを取ることもままならない…そんな私を。
ボッと頭から湯気が出そうな勢いで、顔が熱くなる。
(なんで?なんであの両角さんが、私を?意味わかんない。もしかして騙されてる?他にもっと可愛い子いるし、両角さんが仲良くしてる子たちの方がよっぽど一緒にいて楽しいんじゃ…)
バシャバシャと勢い良く水で顔を洗う。
タオルで拭いて、もう一度自分の顔を見る。
「永那…ちゃん」
彼女の優しい笑顔、照れた姿、消えてしまいそうな横顔…今日見た彼女を思い出して、胸がギュゥッと締めつけられた。
「姉ちゃーん、まだー?」
「ハァ」とため息をついて、タオルを洗濯機に投げ入れた。
気づけば私は彼女の肩を借りていて、彼女は私の頭に頭を重ねていた。
起きた瞬間は、もう降りる駅だと慌てて何も思わなかったけど、改札を通る時には少し気恥ずかしさを感じた。
永那ちゃんは、マンションの前まで送ってくれた。
「また月曜ね」
外灯に照らされた彼女の笑顔は、なんだか少し濃艶に見えた。
ふわふわした気持ちのまま、玄関を開ける。
「ただいまー!」
私が言うと、誉が走って寄ってくる。
「おかえり!楽しかった?」
目をキラキラさせながら聞いてくるから、少しだけ気持ちが現実に引き戻される。
「楽しかったんだ~!楽しかったんだね、姉ちゃん!ニヤニヤしちゃってるもん」
ぷくく…と猫背になって笑う誉の頭をチョップする。
「いって!なんだよー!」
「いちいちお姉ちゃんをからかわないの」
サンダルを脱いで、フンと顔をそらして誉の横を通り過ぎていく。
「ねえ、彼氏?本当は彼氏?」
私の口元の辺りまで身長が伸びた誉が、ひょこっと背後から顔を出す。
「え!お姉ちゃん、彼氏できたの!?」
リビングから顔を出すお母さん。
「違うよ、友達。誉が勝手に言ってるだけ」
「えー、でも姉ちゃんがこんなお洒落して行くなんて初めてだよ?」
誉がそう言って、お母さんが私の服装をまじまじと見る。
「確かに」
顎に手を当て、頷いている。
「いや、本当に…相手、女の子だよ!」
そう自分で大声を出して、胸がズキリと痛む。
女の子じゃダメなの?…恋人って“彼氏”じゃなきゃ、ダメなの?
「なんだー、つまんねー」
誉は床に転がって、漫画を読み始める。
「いやあ!でも!!穂、かわいい~!やっぱりお母さんの選んだ服、よく似合うわあ」
頬に手を当て、お母さんは蕩けそうな笑みを浮かべる。
「ん?姉ちゃん、なんか買ったの?」
「服…友達が選んでくれたの」
袋を開けて、服を取り出す。
薄いベージュの丸襟のシャツ。丸襟の端の部分にはレースがあしらわれている。シャツはアクセントにくるみボタンが施されている。半袖の袖部分がクシュッとしていて可愛い。セットで、足首丈のスカートも買った。
誉はすぐに興味が失せたようで、また漫画に視線を戻した。
「わあ、可愛いじゃない」
お母さんが微笑む。
「穂は服にほとんど興味ないもんねえ。良いお友達ができて良かったね」
そう言って、夕飯を机に並べてくれる。
「誉、食器くらい並べなさい」
私が言うと、誉はわざとらしく「ハァ」とため息をついて立ち上がる。
人の振り見てなんとやら…。誉が私のため息を真似している。この癖は本当に良くないな。なんて思ったのに、私は誉のため息を聞いて自分でも「ハァ」とため息をついてしまった。
首をぶんぶん振って「手洗ってくる」と告げた。
荷物を部屋に置いて、洗面台に立つ。
鏡に映った自分の顔を見る。
目に入るのが嫌で、瞼よりも上で切り揃えられた前髪。美容院が苦手で、いつも自分で切っている。だから髪が長いのも、単純に放置しているだけ。
幸いくせ毛じゃないから、そんなに手入れをしなくてもなんとかなっている。
運動部でもないし、休日も家にこもってることが多いから日焼けする機会もない。
彼女は、そんな私なんかを好きだと言ってくれた。
お洒落でもなんでもない、同級生と楽しくコミュニケーションを取ることもままならない…そんな私を。
ボッと頭から湯気が出そうな勢いで、顔が熱くなる。
(なんで?なんであの両角さんが、私を?意味わかんない。もしかして騙されてる?他にもっと可愛い子いるし、両角さんが仲良くしてる子たちの方がよっぽど一緒にいて楽しいんじゃ…)
バシャバシャと勢い良く水で顔を洗う。
タオルで拭いて、もう一度自分の顔を見る。
「永那…ちゃん」
彼女の優しい笑顔、照れた姿、消えてしまいそうな横顔…今日見た彼女を思い出して、胸がギュゥッと締めつけられた。
「姉ちゃーん、まだー?」
「ハァ」とため息をついて、タオルを洗濯機に投げ入れた。
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