8 / 595
1.恋愛初心者
8.好きってなに?
食事を済ませて、ブラブラとお店を見て回った。同級生と服を見るなんてこともしたことがなかったから、両角さんが「これ、空井さんに似合うね」と服を当ててくれるのが嬉しかった。
私には、お小遣いを使う機会がほとんどない。だから今日は貯めてきたお小遣いを、少し多めに持ってきていた。
似合うと言ってくれた服を買うと決めたら、彼女がすごく喜んでくれた。
一通り店を見終えて、クレープ屋に寄った。
人生で初めてのクレープだった。
そう伝えたら、両角さんは盛大に驚いて、奢ってくれた。
「ハハハッ。空井さん、口にクリームついてるよ」
指で拭ってくれる。
「ご、ごめん」
なんだか恋人同士がすることみたいで、恥ずかしい。
チラリと彼女を見ると、彼女の口端にもチョコがついている。だから私も真似して、指で拭ってあげた。
「両角さんだって、チョコついてる」
すると彼女の耳が真っ赤に染まり、目をそらされてしまった。
無言でパクパクと勢い良くクレープを食べて、紙で口元を拭く。
両角さんがクレープを食べ終えてしまったから、私も急がなければ…と思い、一生懸命クレープを口に運んだ。
「空井さん」
「何?」
口元を手で押さえて、まだ食べ終わりそうにないクレープを頬張る。
「私さ、空井さんともっと仲良くなりたい」
目をそらされてから、一度もこちらを見ない両角さん。
「だから…空井さんじゃなくて、穂って呼んじゃダメかな?」
急に名前を呼ばれて鼓動が速くなる。滅多に呼ばれることのない名前。
お母さんくらいしか呼ばない。そのお母さんも、誉と3人で話すときは「お姉ちゃん」と呼ぶから、数は少ない。
「私のことも、名前で呼んでほしい」
「永那…ちゃん?」
パッと勢い良くこちらを見た彼女は、頬を赤く染めている。
フフッと笑って「ちゃん付けなんて、いつぶりだろう?」と口元をさする。
「ああ。クレープ食べるの、急がなくていいよ。ごめんね、急がせちゃって」
その言葉に頷いて、ホッと一息つく。
「それで…さ、穂って呼んでもいい?」
「う、うん。お母さん以外にあんまり呼ばれないから、なんか新鮮」
「そっか。じゃあ私って、けっこう特別…かな?」
自信なさげに、彼女は目を彷徨わせている。
「そう…だね」
「穂」
彼女は安心したような、落ち着いた表情で笑みを浮かべている。
弧を描いて肩から落ちかかっている髪を耳にかけてくれる。
恥ずかしくて、クレープを口に運ぶ。
「穂、また2人で遊ぼうね」
「うん、楽しみ」
宙を見ながら、クレープを噛みしめる。
「可愛い」小さく呟いたのが、彼女の本心をそのまま表しているようで、全身が火照った。
「今海に戻ったらさ、夕日が見られるかもよ」
私がクレープを食べ終えたのを見て、永那ちゃんはまた私の手を握った。
外に出ると、空がオレンジ色に染まっていた。
私達は小走りで海に向かって、日が沈む前に砂浜に座った。
ゆっくりと太陽が海に沈んでいく。
その様子を私達は無言で眺めた。
「今日、楽しかったな」
夕方と夜の境。まだ水平線の辺りはオレンジ色だけど、見上げると星が瞬いていた。
「私も、楽しかった」
私達は顔を見合わせて笑った。
ふいに彼女が真剣な顔になる。
「穂。私、穂が好きだよ」
ゴクリと唾を飲む。
「いつも一生懸命なところ、ちゃんと相手に自分の意見を伝えられるところ、ちょっと不器用なところ、意外とお茶目なところ。白い肌も、長い綺麗な黒髪も、そのつぶらな瞳も…好き。友達の好きじゃなくて」
彼女は握っていた手の指を絡ませて、私に向き合った。
ドクドクと私の鼓動が速くなる。
「穂も私のこと、好きになってくれたら嬉しい。でも、そんなすぐに好きになってもらいたいとも思ってない。私達、話すようになってまだ数日しか経ってないし。…でも、いつか、私と同じように、穂も私を好きになってくれたら嬉しいなって思う」
「うん」
その告白があまりに真っ直ぐで、照れもするけれど、嬉しさのほうが込み上げて来る。
「そろそろ帰ろうか」
あっという間に水平線のオレンジ色はなくなって、夜の始まりが告げられる。
永那ちゃんはポンポンとお尻を叩いて、砂を落とした。
私が立ち上がると、私の服も払ってくれる。
そっと彼女の顔が近づく。
ギュッと目を瞑ると、彼女の香りがふわりと漂う。
「正直言えば、穂の“いたずらしちゃいますよ”にめっちゃときめいたってのもある」
彼女の息が耳にかかる。くすぐったくて、もっと強く目を瞑った。
「そ、そんなに…?」
「うん!…なんか、ゾクゾクした」
うぅ…と、自分のしたことを思い出して、思わず口を尖らせる。
彼女は私の背に腕を回して抱きしめた。
「2人で、もっと楽しいこと、たくさんしたいなあ」
湿った風が吹く。2人の髪がなびいて、顔にかかって笑い合う。
私も…。私も、永那ちゃんと2人でいっぱい楽しいことがしたい。
彼女の背に腕を回して、抱きしめ合う。
ドキドキして、でも楽しくて、幸せな1日はあっという間に過ぎた。こんな風に思えたのはいつぶりだろう?
私には、お小遣いを使う機会がほとんどない。だから今日は貯めてきたお小遣いを、少し多めに持ってきていた。
似合うと言ってくれた服を買うと決めたら、彼女がすごく喜んでくれた。
一通り店を見終えて、クレープ屋に寄った。
人生で初めてのクレープだった。
そう伝えたら、両角さんは盛大に驚いて、奢ってくれた。
「ハハハッ。空井さん、口にクリームついてるよ」
指で拭ってくれる。
「ご、ごめん」
なんだか恋人同士がすることみたいで、恥ずかしい。
チラリと彼女を見ると、彼女の口端にもチョコがついている。だから私も真似して、指で拭ってあげた。
「両角さんだって、チョコついてる」
すると彼女の耳が真っ赤に染まり、目をそらされてしまった。
無言でパクパクと勢い良くクレープを食べて、紙で口元を拭く。
両角さんがクレープを食べ終えてしまったから、私も急がなければ…と思い、一生懸命クレープを口に運んだ。
「空井さん」
「何?」
口元を手で押さえて、まだ食べ終わりそうにないクレープを頬張る。
「私さ、空井さんともっと仲良くなりたい」
目をそらされてから、一度もこちらを見ない両角さん。
「だから…空井さんじゃなくて、穂って呼んじゃダメかな?」
急に名前を呼ばれて鼓動が速くなる。滅多に呼ばれることのない名前。
お母さんくらいしか呼ばない。そのお母さんも、誉と3人で話すときは「お姉ちゃん」と呼ぶから、数は少ない。
「私のことも、名前で呼んでほしい」
「永那…ちゃん?」
パッと勢い良くこちらを見た彼女は、頬を赤く染めている。
フフッと笑って「ちゃん付けなんて、いつぶりだろう?」と口元をさする。
「ああ。クレープ食べるの、急がなくていいよ。ごめんね、急がせちゃって」
その言葉に頷いて、ホッと一息つく。
「それで…さ、穂って呼んでもいい?」
「う、うん。お母さん以外にあんまり呼ばれないから、なんか新鮮」
「そっか。じゃあ私って、けっこう特別…かな?」
自信なさげに、彼女は目を彷徨わせている。
「そう…だね」
「穂」
彼女は安心したような、落ち着いた表情で笑みを浮かべている。
弧を描いて肩から落ちかかっている髪を耳にかけてくれる。
恥ずかしくて、クレープを口に運ぶ。
「穂、また2人で遊ぼうね」
「うん、楽しみ」
宙を見ながら、クレープを噛みしめる。
「可愛い」小さく呟いたのが、彼女の本心をそのまま表しているようで、全身が火照った。
「今海に戻ったらさ、夕日が見られるかもよ」
私がクレープを食べ終えたのを見て、永那ちゃんはまた私の手を握った。
外に出ると、空がオレンジ色に染まっていた。
私達は小走りで海に向かって、日が沈む前に砂浜に座った。
ゆっくりと太陽が海に沈んでいく。
その様子を私達は無言で眺めた。
「今日、楽しかったな」
夕方と夜の境。まだ水平線の辺りはオレンジ色だけど、見上げると星が瞬いていた。
「私も、楽しかった」
私達は顔を見合わせて笑った。
ふいに彼女が真剣な顔になる。
「穂。私、穂が好きだよ」
ゴクリと唾を飲む。
「いつも一生懸命なところ、ちゃんと相手に自分の意見を伝えられるところ、ちょっと不器用なところ、意外とお茶目なところ。白い肌も、長い綺麗な黒髪も、そのつぶらな瞳も…好き。友達の好きじゃなくて」
彼女は握っていた手の指を絡ませて、私に向き合った。
ドクドクと私の鼓動が速くなる。
「穂も私のこと、好きになってくれたら嬉しい。でも、そんなすぐに好きになってもらいたいとも思ってない。私達、話すようになってまだ数日しか経ってないし。…でも、いつか、私と同じように、穂も私を好きになってくれたら嬉しいなって思う」
「うん」
その告白があまりに真っ直ぐで、照れもするけれど、嬉しさのほうが込み上げて来る。
「そろそろ帰ろうか」
あっという間に水平線のオレンジ色はなくなって、夜の始まりが告げられる。
永那ちゃんはポンポンとお尻を叩いて、砂を落とした。
私が立ち上がると、私の服も払ってくれる。
そっと彼女の顔が近づく。
ギュッと目を瞑ると、彼女の香りがふわりと漂う。
「正直言えば、穂の“いたずらしちゃいますよ”にめっちゃときめいたってのもある」
彼女の息が耳にかかる。くすぐったくて、もっと強く目を瞑った。
「そ、そんなに…?」
「うん!…なんか、ゾクゾクした」
うぅ…と、自分のしたことを思い出して、思わず口を尖らせる。
彼女は私の背に腕を回して抱きしめた。
「2人で、もっと楽しいこと、たくさんしたいなあ」
湿った風が吹く。2人の髪がなびいて、顔にかかって笑い合う。
私も…。私も、永那ちゃんと2人でいっぱい楽しいことがしたい。
彼女の背に腕を回して、抱きしめ合う。
ドキドキして、でも楽しくて、幸せな1日はあっという間に過ぎた。こんな風に思えたのはいつぶりだろう?
あなたにおすすめの小説
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
✽全28話完結
✽辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
✽他誌にも掲載中です。
✽2026.4/11 エブリスタ用に使用している表紙に変更しました。
→表紙はイラストをGrok タイトルをChatGPTでAI生成しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。