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1.恋愛初心者
26.彼女
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海は、楽しい思い出が詰まってる。
まだ小学生の頃、お母さんがまだまともだった頃、よくお姉ちゃんと3人で来た。
お母さんはずっと座っていたけど、私達のことをずっと微笑んで見てくれていた。
私達が笑うと、お母さんも笑って、お母さんが笑うと、私達も笑う。幸せだった。
父親は、物心つく頃からほとんど家に帰ってこない人だった。
帰ってきても酒臭くて、変に絡んでくるのが鬱陶しかった。それでも、少しは嬉しかったかもしれない。
でも夜になると、お母さんの「やめて」と言う声が聞こえてくる。「うるせー!」と怒鳴り声が響いて、叩く音がする。
聞きたくなくて、お姉ちゃんと2人で耳を塞いだ。
翌朝、大抵お母さんの体のどこかしらに傷ができていた。私が傷を撫でると、お母さんは泣きながら私を抱きしめた。
ふとそんなことを思い出したら、彼女が私の手を強く握った。
それがなんだか嬉しくて、強く握り返した。
彼女がクレープを初めて食べると言うから、記念に奢った。
「いいよいいよ!」と大袈裟に手を振って遠慮するから「せっかくの記念日だから奢らせて」と適当に言って頷かせる。
…適当に言ったけど、考えてみればあながち間違いじゃない。初デート記念日だ。
彼女が美味しそうにクレープを頬張る。その姿に癒やされる。
彼女の口端(頬に限りなく近い)にクリームが、ちょこんとついている。
指で拭ってあげたら、彼女に真似されて、トキメキが過ぎる。(語彙力も崩壊)
ああ、好きだなあ。好きだなあ。この人が本当に好きだなあ。
“空井さん”なんて、なんだか距離があるようで嫌だ。
もっと近づきたい。もっと。もっと。
だから名前で呼び合いたいと言ったら、彼女に「永那ちゃん」と言われた。
その新鮮な呼び方に、また下腹部が疼く。…やめろ!私はそんな下品じゃない!…はず。
学校で見せる真面目な顔、クラスメイトに厳しく接してしまって後悔する顔、お茶目にいたずらする顔、私がいたずらし返すとポッと赤くなる顔、こうして楽しそうに笑ってくれる顔…彼女のどの姿も愛しくて、もっと知りたくて、抱きしめたくなる。
彼女は、私をどう思ってるんだろう?
少なくとも“どうでもいい”とは思っていないよね?
確認すると、頷いてくれる。
ただそれだけで嬉しくて、舞い上がりそうになる。
水平線に日が沈んでいく。もうすぐ夜が始まる。
まだ終わってほしくない。
穂といたい。穂と、ずっと。
本当はもっと仲良くなってから言うつもりだったけど、このままじゃ熱が引きそうにないから、意を決して告白した。
私の勘違いじゃないといいけど…彼女が嬉しそうに笑ってくれた。
私は、舞い上がっていいのか?
私は、自惚れてもいいのか?
脈なしなら、こんなふうに笑わないよね?
きっと脈なしなら、すぐに謝られたり、困った顔をされたりするはずだ。特に彼女の場合は、そういう反応をするところが優に想像できる。
もう一歩踏み込んでみることにした。
顔を近づけると、彼女がギュッと目を瞑る。
…ああ、予想外の反応。胸の高鳴りが、下腹部の疼きが、全身でこの人を奪いたいと主張する。
キスしてもいいんだろうか?
この反応は、そういう反応に見える。
…いや、でも。万が一違ったら、私は取り返しのつかないことをすることになる。
グッと思い止まって、彼女の耳元に口を近づける。
そして、抱きしめた。
彼女が抱きしめ返してくれるから、そのぬくもりに溺れたくなる。
ああ、好きだ。好きだ。
まだ小学生の頃、お母さんがまだまともだった頃、よくお姉ちゃんと3人で来た。
お母さんはずっと座っていたけど、私達のことをずっと微笑んで見てくれていた。
私達が笑うと、お母さんも笑って、お母さんが笑うと、私達も笑う。幸せだった。
父親は、物心つく頃からほとんど家に帰ってこない人だった。
帰ってきても酒臭くて、変に絡んでくるのが鬱陶しかった。それでも、少しは嬉しかったかもしれない。
でも夜になると、お母さんの「やめて」と言う声が聞こえてくる。「うるせー!」と怒鳴り声が響いて、叩く音がする。
聞きたくなくて、お姉ちゃんと2人で耳を塞いだ。
翌朝、大抵お母さんの体のどこかしらに傷ができていた。私が傷を撫でると、お母さんは泣きながら私を抱きしめた。
ふとそんなことを思い出したら、彼女が私の手を強く握った。
それがなんだか嬉しくて、強く握り返した。
彼女がクレープを初めて食べると言うから、記念に奢った。
「いいよいいよ!」と大袈裟に手を振って遠慮するから「せっかくの記念日だから奢らせて」と適当に言って頷かせる。
…適当に言ったけど、考えてみればあながち間違いじゃない。初デート記念日だ。
彼女が美味しそうにクレープを頬張る。その姿に癒やされる。
彼女の口端(頬に限りなく近い)にクリームが、ちょこんとついている。
指で拭ってあげたら、彼女に真似されて、トキメキが過ぎる。(語彙力も崩壊)
ああ、好きだなあ。好きだなあ。この人が本当に好きだなあ。
“空井さん”なんて、なんだか距離があるようで嫌だ。
もっと近づきたい。もっと。もっと。
だから名前で呼び合いたいと言ったら、彼女に「永那ちゃん」と言われた。
その新鮮な呼び方に、また下腹部が疼く。…やめろ!私はそんな下品じゃない!…はず。
学校で見せる真面目な顔、クラスメイトに厳しく接してしまって後悔する顔、お茶目にいたずらする顔、私がいたずらし返すとポッと赤くなる顔、こうして楽しそうに笑ってくれる顔…彼女のどの姿も愛しくて、もっと知りたくて、抱きしめたくなる。
彼女は、私をどう思ってるんだろう?
少なくとも“どうでもいい”とは思っていないよね?
確認すると、頷いてくれる。
ただそれだけで嬉しくて、舞い上がりそうになる。
水平線に日が沈んでいく。もうすぐ夜が始まる。
まだ終わってほしくない。
穂といたい。穂と、ずっと。
本当はもっと仲良くなってから言うつもりだったけど、このままじゃ熱が引きそうにないから、意を決して告白した。
私の勘違いじゃないといいけど…彼女が嬉しそうに笑ってくれた。
私は、舞い上がっていいのか?
私は、自惚れてもいいのか?
脈なしなら、こんなふうに笑わないよね?
きっと脈なしなら、すぐに謝られたり、困った顔をされたりするはずだ。特に彼女の場合は、そういう反応をするところが優に想像できる。
もう一歩踏み込んでみることにした。
顔を近づけると、彼女がギュッと目を瞑る。
…ああ、予想外の反応。胸の高鳴りが、下腹部の疼きが、全身でこの人を奪いたいと主張する。
キスしてもいいんだろうか?
この反応は、そういう反応に見える。
…いや、でも。万が一違ったら、私は取り返しのつかないことをすることになる。
グッと思い止まって、彼女の耳元に口を近づける。
そして、抱きしめた。
彼女が抱きしめ返してくれるから、そのぬくもりに溺れたくなる。
ああ、好きだ。好きだ。
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