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1.恋愛初心者
35.靄
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「きっと両角先輩も、先輩のそういうところを好きになったんじゃないですか?」
「そういうところ?」
どういうところ?
頭の中が大混乱だ。
「…少なくとも、先輩が相手の方を好きな理由がショボかろうがくだらなかろうが、相手が先輩を好いてくれているならそれでいいじゃないですか」
「そ、そうなのかな?…私じゃなくて、他の人のほうがちゃんと永那ちゃんを好きなら、その人のほうが相応しいんじゃないかって」
「先輩」
彼女の顔が近づく。
「それは、全員に対して失礼です」
思わぬ言葉に唖然とする。
失礼?私が?
「先輩は選ばれたんです。他の人がどれだけその人を想っていようが、関係ありません。どんなに想っていても、それが相手の望む形じゃなかったら、届かないんです。届かないのは、先輩のせいでも、その相手の方のせいでもないんです。ただ、ただ…届かなかったという現実がそこにあるだけで…」
金井さんはどんどん顔を俯かせていって、両手を握りしめていた。
「やっぱり私、先輩が嫌いです」
「え!?」
なんで!?私ってそんなに失礼な考え方をしていたのかな。
後輩に嫌われるなんて…まあ、原因は思い浮かばないわけではないけれど。
あげればキリがない。私はスイッチが入るとつい口調が厳しくなって、怖がられるのだから。
そう原因を考えていて、ふと彼女を見ると、彼女は微笑んでいた。
悲しげな微笑み。
ゴクリと唾を飲む。
「先輩」
「はい」
彼女は深呼吸する。
「ちゃんと、両角先輩と幸せになってください」
綺麗な笑顔を浮かべていた。
そこにもう悲しみは滲んでいなくて、心からそう言われているようで、心がふわふわと浮いてしまいそうな気分になる。
「はい」
「ガールズトークは随分と盛り上がっているみたいですね」
日住君は器用に3皿手に持って、その上には焼きおにぎりとお肉が乗せられている。
「そろそろお邪魔してもよろしいですか?」
ニコッと爽やかな笑顔を向けられて、金井さんも微笑む。
「タイミングがよろしいことで」
「おお!それはよかった」
日住君は大袈裟に喜んでみせる。
私と金井さんにお皿をわたしてくれる。
私が真ん中になるように座って、ご飯を食べ始める。
「ところで先輩、その恋人とはどこまで進んだんですか?」
私は思わず口に入っていたものを吹き出しそうになる。
もうこの話終わったんじゃないの!?
「そうだ。先輩、恋の悩みがあったんでしたね」
日住君が苦笑しながら、思い出すように宙を見る。
「いいなあ、ちょっと俺も参加したかったのに」
「日住君はダメ」
「え~、なんでー」
金井さんが日住君を好きと知ると、途端に2人の会話が微笑ましく感じる。
「それで、先輩。私が悩み相談に乗ってあげたんですから、どこまで進展したか白状してください」
「逆に俺、こっちの話のほうが聞きづらいんだけど」
金井さんは優雅に焼きおにぎりを頬張る。
「ま、まだ付き合って1週間ちょっとだよ?…そ、そんな…べつに…特に…」
目を彷徨わせていると、金井さんが私と日住君を交互に見た。
「っていうか日住君、先輩に恋人いるの、知ってたの?」
「えっ!?ああ、うん…前にね」
日住君がチラリと私を見て、答えても大丈夫か確認してくる。
私が頷くと、ホッとした顔になる。
「じゃあ、誰かも?」
金井さんの目が細くなる。
これ、タイミング的にも、やっぱりちょっと睨んでるよね?
日住君が頷くと「なーんだ」と、金井さんは少しつまらなさそうに言った。
「そういうところ?」
どういうところ?
頭の中が大混乱だ。
「…少なくとも、先輩が相手の方を好きな理由がショボかろうがくだらなかろうが、相手が先輩を好いてくれているならそれでいいじゃないですか」
「そ、そうなのかな?…私じゃなくて、他の人のほうがちゃんと永那ちゃんを好きなら、その人のほうが相応しいんじゃないかって」
「先輩」
彼女の顔が近づく。
「それは、全員に対して失礼です」
思わぬ言葉に唖然とする。
失礼?私が?
「先輩は選ばれたんです。他の人がどれだけその人を想っていようが、関係ありません。どんなに想っていても、それが相手の望む形じゃなかったら、届かないんです。届かないのは、先輩のせいでも、その相手の方のせいでもないんです。ただ、ただ…届かなかったという現実がそこにあるだけで…」
金井さんはどんどん顔を俯かせていって、両手を握りしめていた。
「やっぱり私、先輩が嫌いです」
「え!?」
なんで!?私ってそんなに失礼な考え方をしていたのかな。
後輩に嫌われるなんて…まあ、原因は思い浮かばないわけではないけれど。
あげればキリがない。私はスイッチが入るとつい口調が厳しくなって、怖がられるのだから。
そう原因を考えていて、ふと彼女を見ると、彼女は微笑んでいた。
悲しげな微笑み。
ゴクリと唾を飲む。
「先輩」
「はい」
彼女は深呼吸する。
「ちゃんと、両角先輩と幸せになってください」
綺麗な笑顔を浮かべていた。
そこにもう悲しみは滲んでいなくて、心からそう言われているようで、心がふわふわと浮いてしまいそうな気分になる。
「はい」
「ガールズトークは随分と盛り上がっているみたいですね」
日住君は器用に3皿手に持って、その上には焼きおにぎりとお肉が乗せられている。
「そろそろお邪魔してもよろしいですか?」
ニコッと爽やかな笑顔を向けられて、金井さんも微笑む。
「タイミングがよろしいことで」
「おお!それはよかった」
日住君は大袈裟に喜んでみせる。
私と金井さんにお皿をわたしてくれる。
私が真ん中になるように座って、ご飯を食べ始める。
「ところで先輩、その恋人とはどこまで進んだんですか?」
私は思わず口に入っていたものを吹き出しそうになる。
もうこの話終わったんじゃないの!?
「そうだ。先輩、恋の悩みがあったんでしたね」
日住君が苦笑しながら、思い出すように宙を見る。
「いいなあ、ちょっと俺も参加したかったのに」
「日住君はダメ」
「え~、なんでー」
金井さんが日住君を好きと知ると、途端に2人の会話が微笑ましく感じる。
「それで、先輩。私が悩み相談に乗ってあげたんですから、どこまで進展したか白状してください」
「逆に俺、こっちの話のほうが聞きづらいんだけど」
金井さんは優雅に焼きおにぎりを頬張る。
「ま、まだ付き合って1週間ちょっとだよ?…そ、そんな…べつに…特に…」
目を彷徨わせていると、金井さんが私と日住君を交互に見た。
「っていうか日住君、先輩に恋人いるの、知ってたの?」
「えっ!?ああ、うん…前にね」
日住君がチラリと私を見て、答えても大丈夫か確認してくる。
私が頷くと、ホッとした顔になる。
「じゃあ、誰かも?」
金井さんの目が細くなる。
これ、タイミング的にも、やっぱりちょっと睨んでるよね?
日住君が頷くと「なーんだ」と、金井さんは少しつまらなさそうに言った。
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