46 / 595
2.変化
46.初めて
しおりを挟む
目が覚めると、6時半頃にメッセージが届いていた。
『行きたい!!!土曜日でもいいかな?』
誘ってよかった。
カーテンを開けて、目一杯日光を浴びる。
安心感と喜びと、楽しみな気持ちで、心が躍る。
『大丈夫だよ』
返事をすると『夕方には帰らなきゃいけないんだけど…また午前中に集合でもいい?』
『うん、9時頃なら大丈夫だよ』
『わかった、楽しみにしてるね』
学校ではなかなか話せないけど、こうして休日だけでも2人きりの時間がつくれるのが嬉しい。
朝ご飯を食べて、学校に向かった。
永那ちゃんと佐藤さんが学校につくのは早い。
永那ちゃんが夜寝ていないから、きっと待ち合わせも早いのだろう。
私が学校につく時間には既に永那ちゃんは寝ている。
そう考えると、最初の海のデートのときも、この前の公園のデートも、相当無理をさせてしまっていたのかもしれないと思う。
体育祭のときもずっと起きていたし、彼女の体が心配になる。
今度2人になれたとき、ちゃんとお母さんのことを聞かなきゃ。
そう決意をしながら、寝ている永那ちゃんの髪を撫でている佐藤さんを見て、モヤっとする。
“私の穂”と永那ちゃんは言ってくれた。
でも、それなら、“私の永那ちゃん”でもある。
佐藤さんは、永那ちゃんの隣の席に座っている友達と話している。
当たり前のように永那ちゃんの机に座って、足を組んでいる。
机は座る物じゃないし、あんなにスカートを短くしていたら下着が見えてしまいそうだし、そういうところも注意したくなってしまう。
「ハァ」と大きくため息をつく。
教室を眺めると、何人かは期末テストに向けて勉強をしていた。
前までの私なら、彼ら彼女らと同じように勉強をしていただろう。
ついチラリと佐藤さんに目を遣って、机に突っ伏した。
またため息が溢れる。
朝“休日だけでも2人きりの時間がつくれるのが嬉しい”と思っていたのに、その気持ちが薄れていく。
どうして私が永那ちゃんのそばにいられないんだろう?
永那ちゃんにつけられた首筋の痕をさする。
我慢ならなくなって、立ち上がろうと足に力が入る。
でも、金曜日の二の舞いになって、永那ちゃんの睡眠時間を削ることになるのも嫌だと思い、力が抜ける。
結局、チャイムだけが私の味方で、佐藤さんと永那ちゃんを引き離してくれるのだった。
水曜日、窓際の自席で勉強をしていたら、ふいに視線を感じた。
顔を上げると、目の前に永那ちゃんが座っていた。
どういうことかわからず瞬きすると、椅子の背もたれに頬杖をつく永那ちゃん。
「穂、ノート貸して」
「え?」
手元にあるルーズリーフを見つめて、差し出そうとすると、止められる。
「私のためにまとめてくれたやつ。続きがほしいんだけど」
「…ああ。あれから、作ってないや。でも、すぐ作るね」
「迷惑じゃない?」
「全然。自分のためにもなるし」
「よかった。ありがと」
優しく微笑まれる。
外の空気が吸いたくて、窓を少し開けていた。窓のすき間から風が吹いて、私の髪がなびく。
なびいた髪のすき間から彼女の微笑みが見えて、胸がギュゥッと締め付けられた。
永那ちゃんの手が伸びてきて、耳に髪をかけてくれる。
「ありがとう」
「永那~」
幸せな時間を裂くように、佐藤さんがそばに来る。
「次の英語の宿題やってないんでしょ?早く写しちゃって」
佐藤さんと目が合う。
酷く冷たい視線に目をそらしそうになるけど、グッと堪えて見つめ返す。
佐藤さんが永那ちゃんに視線を戻して、ホッとする。
「おー、そうだった。…じゃあ、穂。待ってるね」
「うん」
佐藤さんが永那ちゃんの腕に絡む。
「期末終わったらどっかデートしよ?」
その言葉に胸がズキズキと痛む。
睨むように2人の後ろ姿を見た。
永那ちゃんは「えー、どうしよっかなー」と呑気に答えていて、私は下唇を噛んだ。
(ハッキリ断ってよ)
わがままな自分が顔を出す。
前の席の子がトイレから戻ってきて、席についた。
その子の背を睨むように見て、俯いた。
放課後、まとめたルーズリーフを、寝ている永那ちゃんの机に置いた。
彼女の髪を撫でたくなって、手を空中で彷徨わせ、結局触れることもしないで手をおろした。
掃除当番のクラスメイト達が、永那ちゃんの机を避けて掃除する。
足元を見ると、彼女の机の足がホコリを噛んでいた。
「ハァ」とため息をつくと、永那ちゃんが目を覚ました。
私はびっくりして、一歩引いた。
「穂?」
寝ぼけ眼で見つめられて、心臓が跳ねた。
ニコッと笑う彼女が愛しい。
「どうした?」
そう聞いて、彼女は机に乗っている紙に気づく。
「あ!…早いね。ありがとう」
彼女はパラパラと紙をめくって、鞄にしまう。
「ねえ、一緒に帰る?」
上目遣いにそう言われて、鼓動が速まる。
私が頷くと、彼女は椅子をひっくり返して机に乗せ、教室の端に寄せた。
最初に彼女と話したときと同じ。私の足元にはホコリが残った。
でも今日、私がそれを箒で掃くことはない。
ふいに手にぬくもりを感じる。
彼女の手が重なっていた。
教室には掃除をしているクラスメイトがいる。
恥ずかしくなって、一気に顔に熱をおびた。
でも嬉しくて、握り返す。
彼女が微笑んで、歩き出す。
『行きたい!!!土曜日でもいいかな?』
誘ってよかった。
カーテンを開けて、目一杯日光を浴びる。
安心感と喜びと、楽しみな気持ちで、心が躍る。
『大丈夫だよ』
返事をすると『夕方には帰らなきゃいけないんだけど…また午前中に集合でもいい?』
『うん、9時頃なら大丈夫だよ』
『わかった、楽しみにしてるね』
学校ではなかなか話せないけど、こうして休日だけでも2人きりの時間がつくれるのが嬉しい。
朝ご飯を食べて、学校に向かった。
永那ちゃんと佐藤さんが学校につくのは早い。
永那ちゃんが夜寝ていないから、きっと待ち合わせも早いのだろう。
私が学校につく時間には既に永那ちゃんは寝ている。
そう考えると、最初の海のデートのときも、この前の公園のデートも、相当無理をさせてしまっていたのかもしれないと思う。
体育祭のときもずっと起きていたし、彼女の体が心配になる。
今度2人になれたとき、ちゃんとお母さんのことを聞かなきゃ。
そう決意をしながら、寝ている永那ちゃんの髪を撫でている佐藤さんを見て、モヤっとする。
“私の穂”と永那ちゃんは言ってくれた。
でも、それなら、“私の永那ちゃん”でもある。
佐藤さんは、永那ちゃんの隣の席に座っている友達と話している。
当たり前のように永那ちゃんの机に座って、足を組んでいる。
机は座る物じゃないし、あんなにスカートを短くしていたら下着が見えてしまいそうだし、そういうところも注意したくなってしまう。
「ハァ」と大きくため息をつく。
教室を眺めると、何人かは期末テストに向けて勉強をしていた。
前までの私なら、彼ら彼女らと同じように勉強をしていただろう。
ついチラリと佐藤さんに目を遣って、机に突っ伏した。
またため息が溢れる。
朝“休日だけでも2人きりの時間がつくれるのが嬉しい”と思っていたのに、その気持ちが薄れていく。
どうして私が永那ちゃんのそばにいられないんだろう?
永那ちゃんにつけられた首筋の痕をさする。
我慢ならなくなって、立ち上がろうと足に力が入る。
でも、金曜日の二の舞いになって、永那ちゃんの睡眠時間を削ることになるのも嫌だと思い、力が抜ける。
結局、チャイムだけが私の味方で、佐藤さんと永那ちゃんを引き離してくれるのだった。
水曜日、窓際の自席で勉強をしていたら、ふいに視線を感じた。
顔を上げると、目の前に永那ちゃんが座っていた。
どういうことかわからず瞬きすると、椅子の背もたれに頬杖をつく永那ちゃん。
「穂、ノート貸して」
「え?」
手元にあるルーズリーフを見つめて、差し出そうとすると、止められる。
「私のためにまとめてくれたやつ。続きがほしいんだけど」
「…ああ。あれから、作ってないや。でも、すぐ作るね」
「迷惑じゃない?」
「全然。自分のためにもなるし」
「よかった。ありがと」
優しく微笑まれる。
外の空気が吸いたくて、窓を少し開けていた。窓のすき間から風が吹いて、私の髪がなびく。
なびいた髪のすき間から彼女の微笑みが見えて、胸がギュゥッと締め付けられた。
永那ちゃんの手が伸びてきて、耳に髪をかけてくれる。
「ありがとう」
「永那~」
幸せな時間を裂くように、佐藤さんがそばに来る。
「次の英語の宿題やってないんでしょ?早く写しちゃって」
佐藤さんと目が合う。
酷く冷たい視線に目をそらしそうになるけど、グッと堪えて見つめ返す。
佐藤さんが永那ちゃんに視線を戻して、ホッとする。
「おー、そうだった。…じゃあ、穂。待ってるね」
「うん」
佐藤さんが永那ちゃんの腕に絡む。
「期末終わったらどっかデートしよ?」
その言葉に胸がズキズキと痛む。
睨むように2人の後ろ姿を見た。
永那ちゃんは「えー、どうしよっかなー」と呑気に答えていて、私は下唇を噛んだ。
(ハッキリ断ってよ)
わがままな自分が顔を出す。
前の席の子がトイレから戻ってきて、席についた。
その子の背を睨むように見て、俯いた。
放課後、まとめたルーズリーフを、寝ている永那ちゃんの机に置いた。
彼女の髪を撫でたくなって、手を空中で彷徨わせ、結局触れることもしないで手をおろした。
掃除当番のクラスメイト達が、永那ちゃんの机を避けて掃除する。
足元を見ると、彼女の机の足がホコリを噛んでいた。
「ハァ」とため息をつくと、永那ちゃんが目を覚ました。
私はびっくりして、一歩引いた。
「穂?」
寝ぼけ眼で見つめられて、心臓が跳ねた。
ニコッと笑う彼女が愛しい。
「どうした?」
そう聞いて、彼女は机に乗っている紙に気づく。
「あ!…早いね。ありがとう」
彼女はパラパラと紙をめくって、鞄にしまう。
「ねえ、一緒に帰る?」
上目遣いにそう言われて、鼓動が速まる。
私が頷くと、彼女は椅子をひっくり返して机に乗せ、教室の端に寄せた。
最初に彼女と話したときと同じ。私の足元にはホコリが残った。
でも今日、私がそれを箒で掃くことはない。
ふいに手にぬくもりを感じる。
彼女の手が重なっていた。
教室には掃除をしているクラスメイトがいる。
恥ずかしくなって、一気に顔に熱をおびた。
でも嬉しくて、握り返す。
彼女が微笑んで、歩き出す。
42
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる